2スト500cc時代のレジェンドライダーも登場‼ 「MotoGP™22」

掲載日/2022年4月28日
取材協力/Koch Media
写真/伊井覚 取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
まさかここまで、MotoGPレーサー気分に浸れるとは……。世界中で絶大な支持を集めているゲーム、イタリアのマイルストーン社が手がけた「MotoGP™22」が発売された。本シリーズを初めて体感した筆者は、そのとてつもないレベルの再現度と迫力と奥深い構成に、ただひたすら圧倒されることになった。

一戦たりとも見逃せない!
MotoGP 2022年シーズンが白熱しているワケ

2022年のMotoGPは、近年稀に見る……と言いたくなるほど、面白いことになっている。まずは最高峰のMotoGPクラスの事情を記すと、開幕前はヤマハ/ドゥカティファクトリーのエース、2021年の覇者であるファビオ・クアルタラロと、2021年後半に圧倒的な強さを発揮したフランチェスコ・バニャイアが、チャンピオンの有力候補と見られていた。とはいえ実際にシーズンが始まると、2人はまさかの大苦戦。

クアルタラロは第5戦でようやく初勝利を挙げたものの、最高速とグリップがいまひとつと言われているYZR-M1の戦闘力を考えると、タイトル防衛は容易ではないだろう。いずれにしても2022年のMotoGPクラスは、誰が勝っても不思議ではない、混沌とした状況なのだ。

なお2022年序盤の勝者は、第1/4戦:エネア・バスティアーニ(ドゥカティ)、第2戦:ミゲル・オリベイラ(KTM)、第3戦:アレイシ・エスパルガロ(アプリリア)で、2021年終盤の第17/18戦ではフランチェスコ・バニャイア(ドゥカティ)が連勝を飾っている。日本勢が6戦連続で表彰台の頂点を逃したのは、おそらく、フィル・リードとジャコモ・アゴスチーニを擁するMVアグスタが圧倒的な強さを誇った、1973年以来のことである。

MotoGP以上の大接戦が毎回楽しめる、Moto2とMoto3で注目するべきは、小椋藍や佐々木歩夢を筆頭とする、若きジャパニーズライダーの活躍。すでに表彰台争いの常連となりつつある彼らの走りに、胸が熱くならない日本人はいないだろう。もちろん、MotoGP参戦5年目を迎えて、今年が正念場と言われている中上貴晶にも、多くの日本人が初表彰台、初優勝を期待しているはずだ。

さて、とりあえず現実の話をしてみたが、そういった事情を把握している人が「MotoGP™22」をプレイしたら、ドハマリするに違いない。何と言ってもこのゲームは、普段は応援しているレーシングライダーの立場になって、百戦錬磨のライバルたちと抜きつ抜かれつを楽しみながら、世界各国のサーキットを転戦できるのだから。

ちなみに現在の僕は小椋藍選手になって、2022年シーズンのMoto2クラスを転戦中である。当初はあまりにヘタすぎて、何だか本人に申し訳ない気持ちになったものの、ゲームを始めて約2週間が経過した今は、徐々に本物の小椋藍選手に近づいている……ような気がしている。

操れ、戦える120名のライダーたち

2020年の第2戦スペインGPにて大クラッシュ、続く第3戦での無理が祟り長期の休養に入っていたMotoGP V6王者、マルク・マルケスも2021年に復活。もちろん今シーズンもレプソル・ホンダから参戦しているため、今作に登場する。

2021年からMoto2クラスに参戦する小椋藍に注目! 2022年は6-6-3-2と第4戦まで好成績をキープ。ランキング2位につけている逸材だ。現在21歳という若さも今後の成長を大いに期待させる。さらにMoto3クラスには佐々木歩夢や鈴木竜生ら、若き日本人ライダー5名が登録されている。

グランプリモードではMotoGP、Moto2、Moto3の他に、4st800cc、4st990cc、2st500ccクラスが登録されており、そこでは加藤大治郎やノリックこと阿部典史、中野真矢といった日本人ライダーから、マイケル・ドゥーハン、ワイン・ガードナー、エディ・ローソンなど伝説のライダーを操ることができる。年代によって違うバレンティーノ・ロッシの髪型にも注目だ。

伝説の2009年シーズンも
ストーリーモードで収録!!

冒頭で述べたように、2022年のMotoGPはムチャクチャ面白いのだけれど、僕を含めたレース好きは心のどこかに、ロッシロス……を抱えているはず。四半世紀以上に渡って我々を魅力し、2021年にMotoGPから引退した伝説のライダー、バレンティーノ・ロッシがサーキットを疾走する姿は、今年はもう見ることができないのだから。

そんなレース好きを気遣ってくれたのだろう、「MotoGP™22」には、ロッシが9度目にして最後のチャンピオンを獲得した、2009年シーズンの追体験モードを設定している。しかもプロローグとして、2008年以前のロッシの活躍も動画で収録。これはもう、ロッシ好き、MotoGPマニアにとってはたまらない設定で、個人的には“さすがマイルストーン‼”と、声を大にして言いたい気分だ。

以下に2009年の概要を説明しておくと、当時のロッシの愛機はヤマハYZR-M1で、同じマシンを駆る若き日のホルヘ・ロレンソ、2007年にドゥカティ初のMotoGP王者を獲得したケーシー・ストーナー、この年から名実ともにホンダのエースに昇格したダニ・ペドロサと、序盤は四つ巴のバトルを展開。とはいえ、シーズン中盤にランキングトップに浮上したロッシは、後半は安定した走りを続け、最終的には17戦中6勝を挙げて王座を獲得した。

あのシーズンをレーシングライダー目線で追体験できるなんて、やっぱりロッシ好きとMotoGPマニアにとってはたまらない設定である。そして伝説のライダーの偉大さを再認識した僕は、来年以降のこのゲームでもロッシを語るうえで欠かせないシーズン、NSR500で初の最高峰クラス王者となった2001年、RC211VでMotoGP初年度を制した2002年、ヤマハに電撃移籍してチャンピオンを獲得した2004年のいずれかが、追体験モードして設定されることを期待しているのだった。

2021年で引退を表明した生きる伝説、バレンティーノ・ロッシ。しかしもちろん、ロッシなしではMotoGPは語れない。今作にはロッシだけでなくケーシー・ストーナー、ホルヘ・ロレンソ、ダニ・ペドロサらがチャンピオンを賭けて好勝負を繰り広げた2009年のシーズンを追体験できるモードが収録されている。

2009年シーズンの追体験モードではステージごとに課題が与えられ、それらをクリアしていくことでシーズンを通して熱いバトルを体験することができる。最初はもちろん開幕戦カタールGPのLosailサーキットだ。ストーナーを操ってロッシを抑え、トップチェッカーを決めれば、ステージクリア。

2009年シーズンをより楽しめるように、「プロローグ」として2008年までのロッシのストーリーを映像で振り返ることができる。当時からのMotoGPファンならば、この映像を見ているだけでも、涙が出てしまうだろう。

映像だけでなく驚くほど、リアル

映像がリアルなのは、今時のゲームなら当たり前。この「MotoGP™22」の本当のリアルさは別のところにある。例えば雨の日のタイヤのグリップの違いや、ゼブラに乗り上げた時の衝撃、スリップストリームに入ればタイヤやブレーキの温度に影響があるし、レースが進むとタイヤが偏摩耗を起こす。さらにサーキットの途中にあるブリッヂの下を通過するとエンジン音が反響して聞こえるところまで、ものすごくリアル。

マシンの排気量によって操作性が変わるのも、本物と同じ。さらにこのゲームではサスペンションのセッティングやタイヤのコンパウンド、キャスター角、スイングアームの長さ、ギア比、トラクションコントロールの介入レベルなど、様々な調整を行うことができる。もちろん実際のレースでは、これらのセッティングは適当に決めることはできず、テストを重ねて決定していく必要がある。

そう、なんとこのゲーム、一つのレースをするのにウィークエンドを丸々体験することが可能なのだ。フリー走行や公式練習でセッティングを出し、予選でポールポジションを狙い、決勝レースで優勝を目指す。そんなリアルなMotoGPの週末を丸ごと楽しむことができてしまう。もちろん、時間がない人や、気軽に決勝レースだけを楽しみたい人のために、それらの手順を省略することも可能になっている。

グランプリレースを開始すると、決勝レースだけでなく練習走行や公式予選も含め、ウィークエンドを丸ごと楽しむことができる。レース前のパドックの様子なども詳細に描かれており、緊張感が高まる。

マシンのセッティングは本物さながら。例えばサスペンションではプリロード、オイル量、スプリングレート、リバウンドとコンプレッションダンパーのアジャストなどが設定でき、走りに影響する。タイヤやブレーキなども同様にセッティングが可能だ。

レースの一周目は集団の中で走ることになる。クラッシュに巻き込まれ泣くように気をつけて走らなくてはいけないところも、とてもリアル。

さらにライダーを俯瞰する目線の他に、ヘルメットの内側から本物のライダーになりきった目線でプレイすることもできる。さらに臨場感が増し、気分は完全にMotoGPレーサーだ。

2022年シーズンで使用される世界中のサーキットと、2009年に使用された、20以上のサーキットを走ることができる。筆者もKTMの試乗会で走ったことがあるポルトガルのALGARVE国際サーキットも登場している。

オリジナルライダーを育てていくキャリアモード

自らのライディングスキルとともにライダーを育成し、MotoGPチャンピオンを目指すことができるキャリアモードも搭載されている。このモードでは自分のチームを作ってレースで賞金を獲得し、エンジンやフレームを開発していくといったチームマネジメントも楽しむことができてしまうのだ。

キャリアモードではオリジナルのライダーを作成し、育てていくことができる。自分のチームを作ってスタッフを選び、マシンを作り上げて勝利を目指したり、既存のオフィシャルチームに所属してグランプリを戦うことも可能だ。名前だけでなく、顔、体型、年齢、国籍などを選ぶことができる。

ライディングギアのカスタムモードではヘルメットからレーシングスーツ、グローブ、ブーツ、ゼッケンなどを選択、もしくはオリジナルデザインが可能だ。ヘルメットだけでも日本でもお馴染みのSHOEI、Araiの他、agv、Airoh、BELL、HJC、KYT、LS2など豊富なラインナップが揃っている。

なんとライディングスタイルも変更できる、膝擦りだけでなく、肘擦りスタイルが登録されているのに注目。ブレーキング時に足を出す、出さない、スタートの時の足は両足か片足か、ブレーキレバーにかける指の本数まで指定できるのは驚愕のこだわりと言えるだろう。

ゲームに慣れていなくても大丈夫!
充実のチュートリアル

こういったレースゲームに慣れていない人でも、ゲームに収録されているチュートリアルモードをプレイすれば、基本操作はマスターすることができるだろう。上級セッションではエンジンマッピングやエンジンブレーキの強弱、アンチウィリー、トラクションコントロールといった機能の調整やタイヤマネジメントまで教わることができる。

レース画面ではこのようにレコードライン(速く走るのに理想的な走行ライン)を表示することができるため、実際にサーキットを走ったことがない人でも簡単に感覚を養うことができる。逆に言えば、このゲームが上達すれば、実際にサーキットに行っても上達が早くなることは間違いないだろう。

操作が複雑で難しい、という人のために難易度の調整が可能だ。ブレーキ操作やシフトチェンジをオートにしたり、操作を簡素化できる。さらに今作では話題のRHD(ライドハイトデバイス)をマニュアル操作することが可能になっている。2023年にはルール改正により禁止になってしまう機構なので、ゲームでも今作限りの楽しみとなることだろう。

MotoGP™22

発売日:2022年4月28日(木)
機種:
・ダウンロード版:PlayStation4、PlayStation5、Xbox One、Xbox Series X|S、Nintendo Switch、Steam、Nintendo Switch
・パッケージ版:PlayStation4、PlayStation5のみ
価格:PlayStation4、PlayStation5版、Xbox One版、Xbox Series X|S版/8,778円
CERO:A
初回特典:
・パッケージ版「VIPマルチプライヤーパック」(獲得できる評判ポイントが2倍に)「スペシャルスーツ」※初回版限定特典
・ダウンロード版「VIPマルチプライヤーパック」※発売前日までに予約した方が対象

INFORMATION

Koch Media
1994年にオーストリア・ホーフェンとドイツ・ミュンヘンに設立。パッケージソフトやゲームの販売会社としてスタート。2002年には、パブリッシングレーベルDeep Silverを設立して事業を拡大し、その年以降、ヨーロッパおよびアメリカにも事業を広げ、2007年にはヨーロッパで映画事業を開始。2020年10月に日本法人を設立。『シェンムーIII』や『Maneater』といったタイトルを手掛けている。