日本は世界に誇る4大バイクメーカーを有する国ということもあり、やはり国産ブランド志向も強い。その一方で牙城を崩そうとする黒船ブランドも多く、アメリカや欧州のバイクメーカーもこぞって日本のバイクマーケットに参入している。そのような中、今注目されているバイクブランドがある。それはタイ王国の『GPX』だ。
そもそもタイは世界有数のバイクマーケット大国としても知られており、日常の移動手段として老若男女問わずバイクを使用している。日本メーカーも古くから現地工場を設け生産を行ってきたこともあり日本のバイク業界とも関わりの深い国でもある。GPXはそのような土壌であるタイで生まれたバイクブランドであり、日本でも8年ほど前から輸入販売が開始されている。認知度はまだまだ高いとは言い難いが、着実にユーザーを増やしており、現在では年間約700台もの台数が販売されている。
GPXの魅力はなんといっても国産ブランドとは一線を画するデザイン性と、手を出しやすい価格帯でありながらしっかりとした質感を持っているというコストパフォーマンスだ。購入したユーザーは高い満足度を評価している。ただ、やはり海外ブランドと聞くと、故障やアフターサービスなどの心配をする人も多いと思う。そこで今回は、『GPXジャパン』の代表を務める月木康人さんと、GPX専売店であり日本で最もGPXの車両を販売している『GPX千葉(モトショップ クロニクル)』代表の山口雅史さんに、GPXが生み出すバイクのことや、実際にオーナーになる際の注意点などの話を伺うことにした。
GPXの輸入販売元であるGPXジャパンの月木代表と、GPX千葉の山口代表にまずは、GPXとはどのような企業であるのかを訊ねることから始めた。
「GPXは2007年に設立したタイのバイクメーカーです。元々はATVの開発製造などを行っていたのですが、現在では125、200、250などの小型バイクを手掛けており、タイ国内ではシェアナンバーワンを誇るブランドにまで成長しました。海外展開は日本の他に、香港、マレーシア、カンボジア、バングラディッシュなどで販売されています。日本においては8年前にホッパー125の輸入販売を開始し、4年前にGPXジャパンを設立、現在はフルカウルスポーツモデルのデーモンGR200Rと、ネオクラシックモデルのレジェンドシリーズを中心に展開しています。」(GPXジャパン月木代表)
「元々モトショップ クロニクルでは様々なメーカーのバイクを取り扱っていたのですが、GPXジャパンができてディーラーを募集しているということを聞き、せっかくならば専売店としてチャレンジしてみようと考えてGPX千葉を立ち上げました。バイクそのものがカッコイイですし、作りも良いので将来的に伸びてゆくブランドだと直感したのです。数多く取り扱っていますが大きなトラブルが出たことはありませんし、3年間もしくは走行3万キロという長い保証制度や、独自のロードサービスもあるので、ユーザーには安心してお乗りいただいています。“ヒトとは違う個性的なバイク”として支持をされており、女性オーナーが多いのも特徴だと思います」(GPX千葉山口代表)
通勤通学をはじめとした日常の移動手段としてだけでなく、ロングツーリングやカスタマイズなど、バイクライフには様々なスタイルがある。GPXではバイク遊びの幅を広げることはできるのか、そしてメンテナンス時のパーツ供給体制などはどうなっているのか。
「GPXを求められるユーザーは様々で、免許を取って初めてのバイクとして選んでいただける方も多いですし、ある程度ご自分のバイクライフやスタイルをイメージできている方も多いように思います。例えばネオクラシック系のレジェンドシリーズでは、サドルバッグなどを自分で装着したり、デーモンGR200Rではライトカスタムを楽しむ方などもいらっしゃいます。カスタムパーツは国内ではまだ少ないのですが、原産国であるタイのマーケットでは多数のカスタムパーツが販売されていますし、それらを個人輸入し活用しているユーザーも多いです。皆さん一般的なバイクと同じかそれ以上に楽しまれていると思いますよ。
それと消耗部品をはじめとしたメンテナンスパーツですが、しっかりとした管理体制で用意させていただいているので安心して乗っていただけると思います。ただ現在コロナ禍の影響により、コンテナと船便不足により入荷が遅れておりますので、通常より納期が多めに掛かります。しかし日本国内で在庫している分には即納が可能です。ガンガン使うタイの土地柄なのかもしれないですが、頑丈に作られているので耐久性は高いですね。メカニカル面も難しいことはないので、一般的な整備ができるバイクショップであればメンテナンスも行えますし、購入に関しても最寄りのバイクショップを通じてGPX販売ディーラーやGPXジャパンへご連絡いただけるとスムーズです」(GPXジャパン月木代表)
月木さんと山口さんは、そろってGPXファンの輪をより一層広げてゆきたいと話してくれた。GR200Rのレンタル車両を使ったワンメイクレースイベントを開催しているほか、GPX千葉ではGPX俱楽部というコミュニティも立ち上げられている。私は仕事柄様々なバイクに触れるのだが、その中でGPXは他のどれとも異なる位置づけにいると思う。国産ブランド的なしっかりとした製造、さらにはデザイン性の高さ、そして手が届く価格帯。エントリー層を広げることにとても有益なモデルラインナップであるし、エキスパートやセカンドバイクなどとしても良いだろう。
これからさらに多くのGPXをストリートで見かけるようになることは確実。その波にいち早く乗るには、いまがチャンスなのかもしれない。