約100年の伝統を持つボクサーエンジンの魅力を伝えたい、BMWモトラッド福島

掲載日/2021年11月11日
取材協力/BMW Motorrad 福島
写真、取材、文/伊井覚
構成/バイクブロス・マガジンズ
BMWはスポーツ、ツアラー、ヘリテイジ(クラシック)、アドベンチャー、ロードスター(ネイキッド)、アーバン(スクーター)と1メーカーにして多彩なラインナップを誇っている。実はこれだけ選択肢が多い海外メーカーは、他にない。福島県唯一のBMW正規ディーラーであるBMWモトラッド福島は今年でBMWディーラーとして13年目を迎えた。「BMWのスペシャリストを目指したい」と語るのは代表の安齋理氏。その熱いBMW愛を語ってくれた。

約100年間続いた伝統の基本構造

BMWは1916年、ドイツで創業。当初は航空機のエンジンのみを製作する会社だったが、1923年に初の二輪車モデルとなるR32を発表した。1924年から1926年までの3年間で約3000台が生産され、世界で現存が確認されている車体は全部で14台のみ。なんと、その内の1台がこのBMWモトラッド福島に実存する。

現在でもBMWの一部の車両で使われている水平対向エンジン、そしてシャフトドライブ。その機構はこの初号機から約100年間、変わらず受け継がれてきたのだ。空冷2気筒、486cc、最高出力は8.5PS/3200rpm。現在使われているものよりもだいぶ小さいが、紛れもなく水平対向の「ボクサーツイン」エンジンだ。チェーンもベルトもなく、シャフトを使ってエンジンの動力をタイヤに伝える機構。現在でもこの基本設計は採用され続けられている。メーターはアナログの速度計とオドメーターのみ。

「この車両はすべての部品が出荷時のオリジナル状態で、試作車の1923年モデルと共通部品が多々あるため、量産車の極めて初期に生産されたことが確認できます」と安齋氏。

次にこちらは1939年に発売されたR51RS。BMWが市販レーサーとして販売したGPマシンで、全部で10台ほどしか生産されていないという。なお、こちらのボクサーツインにはスーパーチャージャーが搭載されている。レース用車両のため、ヘッドライトはなく、ゼッケンプレートを装着。


そして1954年のRS54。こちらも市販GPマシンで、DOHCボクサーツインを搭載している。この車両の生産台数は20台(サイドカーを含むと24台)。BMWモトラッド福島ではこれら3台の歴史的モデルを保存・展示している。

安齋氏は「BMWのスペシャリストを目指したいと思い、ずっとやってきました。そのためには現行モデルを販売するだけでなく、古いバイクを率先して直して、知識を深めることが大切だと考えています。そんなことをしているうちに、こういうバイクに興味が出てきてしまって、すると出物の話が回ってくるようになるんです。

ボクサーエンジンはBMWにしかありません。そしてBMWが初めて発売したバイクはすでにボクサーエンジンだったんです。性能的には今のS1000 RRとかに搭載されている並列4気筒には及びませんが、それでも頑張って伝統を守り続けているんです。ディーラーっていうのはバイクを売って、直すだけじゃなくて、そのメーカーの良さをお客様にお伝えできなければいけません。僕は自然豊かなこの福島の地で、BMWのバイクに乗る喜びをお客様と分かち合いたいと思っています」と語る。

国産メーカーにも負けない
多種多様なラインナップ

まず最初に紹介するのは先に紹介した歴史的モデルの後継機とも言えるR nineTシリーズだ。ジャンルとしては「ヘリテイジ」に分類されており、バリエーションも豊富。流行りのネオクラシックということもあり、人気シリーズとなっている。写真はR nineT Scrambler。

さて、BMWと言えば新しい1801ccのボクサーツインエンジンを搭載した新型モデルR18シリーズだ。大型のフロントフェアリングとウインドスクリーンを装着したR18 B。R18シリーズはBMWのラインナップの中ではR nine Tシリーズと同じ「ヘリテイジ」に分類されているが、日本人の感覚的に言えばやはり「アメリカン」となる。この先、このエンジンが搭載されたニューモデルの登場も期待されている。

そしてコアなファンを多く持つGSシリーズ、つまり「アドベンチャー」だ。こちらはR 1250 GS Adventure - Edition 40 Years GS。そう、GSシリーズは2020年に40周年の節目を迎えた。初代GSことR 80 G/Sが発売されたのは1980年。そしてその翌年にBMW JAPANが設立され、日本でのBMWの歴史が正式に始まったのだ。

そして「スポーツ」にはS1000 RR。全日本選手権にも出場可能な妥協なしの本格的なサーキットマシンだ。

「ツアラー」としてはR1250 RTやK1600シリーズがラインナップされている。

さらに「スクーター」や「ネイキッド」も充実していて、隙はない。BMWモトラッド福島では試乗車も豊富に用意されているので、ぜひ体感してみて欲しい。

もちろん新車販売だけでなく、BMW認定中古車も取り扱いしている。じっくりと予算に合うモデルを検討できる。

工場にはバイクのレストアや不足しているパーツを自作するのに使う旋盤や溶接機、工作機械がある。「こういうのはやろうと思えばどこでもやれるんですよね。ただ商売にならないから、みんなやらないだけ。うちは仕事度外視で好きだからやってるんです」と安齋氏。

アパレルやライディングギアの展示販売も充実。

2階の休憩スペースには懐かしのスペースインベーダーゲームが! 当然、お金を入れればプレイできる状態とのこと。

店外に設けられた喫煙スペースもおしゃれにくつろげるように作られている。

INFORMATION

所在地/福島県福島市黒岩中島30
電話/024-544-0488
営業/10:00〜18:30
定休/月曜日、第1・3火曜日