MVアグスタ75周年を飾るSUPERVELOCE 800は、ブランドイメージを体現した新時代を予感させるものだった

掲載日/2020年11月17日
取材協力/MV AGUSTA JAPAN
写真/井上演 取材、文/伊井覚
構成/バイクブロス・マガジンズ
2019年2月、MVアグスタがロードレース世界選手権への復帰を発表した。今の若いライダーにこそあまり知られていないが、MVアグスタは1948年から1976年までにロードレース世界選手権で270回の優勝と37個ものタイトルを獲得しており、60年代はMVアグスタ黄金時代と言ってもいい。そんな伝説的なメーカー、MVアグスタが2020年に発売したSUPERVELOCE 800は、MVアグスタのレーシングマインドを受け継ぎつつも、街乗りからツーリングまで使い勝手がよく、さらに末恐ろしいまでに美しいモーターサイクルだったのだ。

レースを愛したドメニコ・アグスタ伯爵が
一代で築いた栄光の道

MVアグスタは日本と同じく敗戦国となったイタリアで、航空機を製造することを禁止されたジョバンニ・アグスタ航空会社の子会社として1945年に誕生した。代表はジョバンニの長男、ドメニコ・アグスタ。MVは「メカニカ・ヴェルゲラ」の略で、ヴェルゲラは会社があった場所の地名である。1971年にドメニコが亡くなるまで、オートバイとレースに情熱を傾け続け、数々の伝説を打ち立てた。残念ながらドメニコの死後、1977年にMVアグスタはオートバイ事業から撤退。1997年に再興するまでその名は歴史の影に隠されることになる。

1962年から1965年まで500ccクラスで4連覇を成し遂げたエースライダーのマイク・ヘイルウッドはバレンティーノ・ロッシやマルク・マルケスと並ぶ3クラス制覇を達成し、MotoGP殿堂入りを果たしているし、1966年、ホンダに移籍したヘイルウッドからエースの座を引き継いだジャコモ・アゴスチーニも7年連続で500ccのチャンピオンを獲得。さらに350ccでも1968年から7年間チャンピオンを獲り続け、あのマン島TTレースでは10回もの優勝を果たしている。

アゴスチーニのV7を支えた
三気筒(Tre cilindri)エンジン

現在のオートバイ用エンジンは単気筒、2気筒、4気筒がメインで、3気筒はちょっと影が薄い。現行車で採用されている車種もトライアンフや、ヤマハの一部車種などに限られている。しかし、2気筒のトルクフルな低回転と、4気筒の気持ちよく回る高回転という、良いとこどりとも言えるこの3気筒というエンジンが、レースで大活躍していた時代があったのだ。

それが、1966年から1972年まで7年連続でロードレース世界選手権の最高峰500ccクラスを制した、ジャコモ・アゴスチーニが乗るMVアグスタの3気筒レーサーだ。もちろん現在のMVアグスタのラインナップには3気筒エンジンを搭載するマシンが多いし、2019年からMotoGPに参戦しているMVアグスタのマシンにも3気筒エンジンが搭載されているのだ。

2020年、そんなMVアグスタの3気筒エンジン搭載のニューモデルが、満を辞して日本に上陸を開始した。SUPERVELOCE 800である。「VELOCE」を日本語に訳すと「速い・迅速な」といった意味になる。もちろん798cc水冷3気筒エンジンは最高出力148PS、最大トルク88Nmを誇るハイパワーには違いないのだが、元になったF3 800や他メーカーのスーパースポーツに比べれば、だいぶフレンドリーなエンジン特性と、ライディングポジションになるように設計されている。

こちらは2019年のEICMAに展示されていたSUPERVELOCE 800 Serie Oroのプロトタイプ。

2018年にEICMA(ミラノショー)で展示されていたプロトタイプおよび、2020年3月に世界限定300台で発売されたSUPERVELOCE 800 Serie Oroはマフラーが右2本、左1本出しだったが、市販モデルでは右3本出しに収束されていて、より洗練されたスタイルに。特徴の一つであるトレリスフレームとアルミキャストホイールは輝く金色に塗装された。スイングアームには片持ち式が採用されており、ナンバープレートの装着にも無骨なリアフェンダーを必要としない。

満たされる所有感と
日常の足になりうるほどのフレンドリーさ

実際、今の日本で1000ccのスーパースポーツを購入したとしても、使用用途は限られるだろう。いや、もちろん我慢すれば使うことはできるのだが、ツーリングでもパワーを持て余し、スロットルを少しでも開けることができるところはほんのわずかな高速道路だけ。ハンドルは低く、ステップは高く後方に設置されており、絶えず求められる前傾姿勢に腰が悲鳴をあげる。常にしっかりニーグリップをしていないと、腕で体重を支え続けなければならず、腕も疲れるし肩も凝る。これを毎日の通勤に使おうものなら、渋滞でひどい目に遭うのは火を見るよりも明らかだ。

しかし、SUPERVELOCE 800ならどうだろう。3気筒エンジンのおかげで低回転でのトルクがあり、街中をゆっくり走っていても疲労やストレスは溜まりづらく、エンジンの鼓動を楽しむ余裕すら生まれる。もちろん軽くスロットルを捻ればスムーズに高回転まで回り、スポーツバイクならではの加速感や運動性能も十二分に楽しめる。

ご覧の通りライディングポジションも非常に万人向けと言える。実際に跨ってみると、そのレーシーなスタイルからは想像できないほど前傾姿勢を強要されることはなく、驚くほどリラックスしたフォームで乗ることができる。これならば通勤にもツーリングにも、もちろんサーキットにも、どんな用途にも幅広く使いことができるはずだ。

2020年、創立75周年を迎えたMVアグスタのCEOティムール・サルダロフ氏はMVアグスタのブランドイメージを「パフォーマンス&ライフスタイル」だと言う。その言葉の通り、MVアグスタはただ絶対性能を追求するのではなく、多くの人に親しんでもらえるバイク作りを目指している。このSUPERVELOCE 800はまさにそのブランドイメージを体現したバイクに仕上がっているのだ。そして何よりも、この美しいバイクはMVアグスタなのだという満足感。MVアグスタの歴史を知り、レースでの伝説を知れば、きっとこのSUPERVELOCE 800はあなたのかけがえのない相棒になってくれるはずだ。

MV AGUSTAでは2020年12月25日(金)まで、SUPERVELOCE 800の予約キャンペーンを開催中。この期間内に全国のMV AGUSTAディーラーでSUPERVELOCE 800を予約すると、予約特典としてストリートリーガル2 in 1サイレンサーがもらえる!

MV AGUSTAのSUPERVEROCE 800を動画でチェック!

INFORMATION

住所/静岡県袋井市西同笠387
電話/0538-23-0861
営業/10:00-17:00
定休/日、月、祝