取材協力/株式会社キタコ 取材・文/佐川 健太郎 写真/山家 健一
掲載日/2013年12月18日


ブレーキパッドは言うまでもなく、ブレーキ性能に大きな影響を与える重要な消耗パーツである。ただし、強く効けばいい、と言うものでもない。絶対制動力だけでなく初期タッチやコントロール性、耐熱性など、パッドによって様々な特性がある。バイクや走り方、好みによって、自分に合ったパッドを選ぶべきだ。ブレーキパッドで世界シェアトップクラスのブランド『SBS』で検証してみたい。

FEATURE

世界シェアトップクラスを誇る
高性能ブレーキパッドブランド

『SBS』はデンマークに本社を置くブレーキパッドの老舗メーカーである。販売シェアでも世界トップクラスを誇り、モーターサイクル用オリジナル製品の開発をはじめ、2輪や4輪メーカーへのOEM供給を行うなど幅広いユーザー層に選ばれている。また、レース活動へも積極的に参加し、2011スーパーバイク世界選手権では、ドゥカティのセミファクトリーチーム『TEAM Althea Racing』をサポート。カルロス・チェカによるチャンピオン獲得にも大きく貢献した。

レース等を通じて培われた技術やノウハウが、市販の製品開発にもフィードバックされているのが特徴であり、SBSの高性能パッドを支える屋台骨にもなっている。そして、日本においては2輪のスペシャルパーツの開発・販売で知られる『キタコ』が発売元となり、テクニカルサポートも担当している。

FEATURE

車種適合パッドを検索する

用途に応じて幅広いラインナップ

SBSではストリート用、オフロード用、レース用など、目的・用途に応じて幅広いラインナップを用意している。モデル毎に年式を問わず適合機種が多いことも、老舗トップブランドならではのメリットだ。ここでは代表的な3つのモデルについて特徴を紹介したい。※表示は消費税込販売価格です(2013年12月現在)


  • ストリートセラミック
    HF/LF/Eシリーズ

    価格:2,940~4,620円

    扱いやすさと耐久性を両立させたストリート用。街乗りライダーに最適で、ドライおよびウェット性能をバランスよく高めつつ、コストパフォーマンスを追及。ブルーラベルが目印。HFシリーズはフロント・リア用、LFシリーズはリア専用、Eシリーズはミニバイク用となっている。

  • オフロードシンター
    SIシリーズ

    価格:4,830円~

    オフロード走行に最適なシンタードパッド。街乗りや林道ツーリングなどでのファンライド、野山を駆けるトレッキングから本格的なエンデューロレースまで幅広く対応。ドライ&ウェット性能を高次元で両立させている。グリーンラベルが目印。フロント・リア用。

  • レーシングシンター
    RSシリーズ

    価格:6,300~7,140円

    スプリントレース専用の高性能タイプ。初期制動における優れたレスポンスと高温時の安定性を実現。抜群のドライ制動力と耐フェード性、コントロール性を誇る“勝つ”ためのパッド。パープルラベルが目印。フロント専用品(リアには使用不可)。

SBSのココがポイント!
操作性と耐久性の高さ

ブレーキパッドによって効き方のフィーリングには差があるものだ。レバーを握りこんだ途端、ガツンと効くタイプのブレーキ。こうした冷間時の初期制動力に優れるタイプの場合、目先の効き味は鮮明なため、いかにも「高性能パッドに交換した感じ」にはなるが、一方ではトルク感度(レバーの握りこみ反応感度)がいまひとつの場合も多い。握りこみ量と制動力が比例しないとコントロールしづらくなり、特にパニックブレーキ等では大きなリスクを負うことになりかねないのだ。

その点で、SBSブレーキパッドの場合、握れば握りこんだ分だけ制動力を発揮するフラットな特性のため、ライダーの感覚になじみ易く、 握りこみ量に応じて安定した性能を引き出すことができる。 また、ライニング素材の最適化により耐摩耗性に優れることもSBSの特徴。ストリートからレースにいたるすべての局面で大きなアドバンテージとなるはずだ。ロングライフであるが故に交換頻度を減らすことができ、結果的にサイフにも優しいブレーキパッドとも言える。

 

SBSはあえて派手なパフォーマンスを演出することはないが、長く使うほどライダーにとって優しく、頼れる性能を体感できるはず。乗り手が意のままに操れるコントロール性と耐久性によって、ビギナーからエキスパート、プロレーサーまで世界中の多くのライダーの支持を集めているのがその証だ。ストリート、オフロード、レース等、用途に応じた多彩なバリエーションも魅力である。

IMPRESSION

しっかり効いて
コントロールもしやすい

今回はSBSの実力を検証するため、普段から乗っている自分の愛車であるホンダCB1300SFに取り付けてみた。チョイスしたのは、ストリートエクセルシンターHS/LSシリーズで、ストリート走行とスポーツ走行に適した、スポーツ専用タイプだ。自分は普段の街乗りからツーリング、そしてたまにサーキット走行なども行うため、幅広く使えていざというときしっかり効いてくれるパッドが理想だ。

取り付けは簡単。ブレーキキャリパーのパッドを固定しているピンを外して、パッドを抜き取ったら、キャリパーボルトを緩めてキャリパーを一度取り外し、ブレーキクリーナーなどでキャリパー周辺に付着したダストなどを洗い流す。その後、新品のパッドを取り付けて逆の手順で組み立てるだけだ。このとき、パッドの座金の裏側に薄くパッドグリースを塗布すれば鳴き防止になり、パッドの摩材の角をヤスリなどで少し面取りしておくと馴染みやすい。また、ブレーキフルードも長く使うと劣化するので、同時に交換しておくといい。パッド交換自体は難しいものではないが、ブレーキ関連は安全にかかわる重要なパーツなので、作業はできるだけプロのショップに任せたほうがいいだろう。

HS/LSシリーズの印象だが、まず握り応えと言うか、レバー操作に対するフィードバックがしっかり伝わってくるところがいい。標準装着のパッドと比べると、よりカッチリした初期タッチである。もしかしたら、バックプレートの厚みや材質なども関係しているのかもしれない。ただし「ガツッ」と一気に効くわけではなく、握りこみ量に応じて手応えを増しつつ、リニアに効力が高まっていくので扱いやすい。これはストリートで、特に冬場など路面コンディションが悪いときにも安心だ。

 

そのままショートサーキットに持ち込んで試してみたが、絶対制動力はもちろん標準パッド以上で、CBの巨体をよく止めてくれる。コーナー進入時にブレーキを残しながら倒しこんでいく場面でも、程よい引き摺り加減で速度と姿勢をコントロールしやすく、走行中に熱によるブレーキレバーの“入り”もほとんど感じることはなかった。本格的なロングコースではないので限界性能については何とも言えないが、少なくとも、趣味でサーキット走行をたしなむレベルであれば、まったく問題無くスポーティな走りを楽しめるはずだ。(佐川 健太郎)

BRAND INFORMATION

株式会社キタコ

1971年創業以来、バイク用スペシャルパーツの企画開発、製造、卸販売などを展開する老舗ブランド。スクーターやミニモト用の外装やマフラー、エンジン関連のカスタム&チューニングパーツなども幅広く手がける。ブレーキパッドの世界的メジャーブランドである『SBS』の日本総輸入販売元。

 

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