掲載日:2019年09月06日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
最近はなくなったが、1980年代はテレビでオートバイのCMが頻繁に流れていた。インパクトのあるキャッチやシーンも多く、30年を過ぎたいまでもいくつか記憶に残っている。その中でも特に印象的だったのが世界的なジャズマン「渡辺貞夫(ナベサダ)」が登場する、ヤマハ・タウニィ。
CMでは興味深そうにタウニィを眺めまくる工事ヘルメットのおじさんがいて、そこに買い物袋を抱えたナベサダが戻ってくる。買い物袋を前かごに入れると、おじさんが「いいな、これ」と声をかける。それに「いいでしょ、これ」と嬉しそうにナベサダが応える。「おたくのこれ?」「そう、僕の!」。「それじゃぁ!」と言って走り出すと、その後姿を向かって「いいな、あれ」とおじさんが呟く。どこにでもありそうな何気ないワンシーンなのだが、記憶に残っている。
ヤマハパッソルやパッソーラなど女性が気軽に乗れる原付バイクがブームになっていたこの時期。次なるターゲット30~35歳の男性として、ヤマハが開発したのがタウニィだった。
直線的なスポーティなデザイン。ゆとりの最高出力2.8馬力、オートマチック2段変速、シャフトドライブ、大型シート、16インチ×14インチの大きめのタイヤサイズ、ゆったりとしたライディングポジションなどなど、大人の男を満足させるデザインとメカニズムが満載。まさに男のためのソフトバイクだった。ナベサダ気分でタウニィを走らせる男たちが街中に溢れていたに違いない。