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子供の頃、バイクに乗っているお兄さんは私の憧れで、ヒーローで、750ccのバイクを見かけると本当に興奮したことを覚えています。

父親の車に乗っている時に、すれ違うバイクや追い越していくバイクに手を振るのが楽しみで、バイクのお兄さんをいつも探していました。

中でも、追い越して行く時に左手を上げて颯爽とスピードを上げていくライダーを見て、父親に、「大きくなったら僕もバイクに乗るんだ。」と言っていたのですが、その時の父親の言葉は今でも心に残っています。

「バイクに乗っても良いけど、あんな下手くそな乗り方をするんなら乗るな。」

私にとってカッコいいライダーは、父親にとってはタダの下手くそライダーだったのです。

こう言うと私の父親はバイク嫌いな偏屈オヤジと思われるかもしれませんが、若い頃からバイクに乗っていて、家に何台もあったのです。

所有していたバイクは、覚えているだけで、ラビット、陸王、ハーレー、カワサキの古いバイクと多岐にわたります。

そんなバイク好きの父親が何故ありがとうと手を振ってくれたライダーを下手くそ呼ばわりしたのか聞いてみると、

「上手いバイクは他の車にブレーキをかけさせない。あのバイクはカーブの手前で対向車が来ているのに追い越していっただろ？本当に上手いライダーは他の車に迷惑をかけないんだ。」

その頃はもちろん車を運転することができなかったので言っている意味が分からなかったのですが、実際バイクに乗り、車を運転し始めるとその言葉の意味がわかるようになりました。

後ろから迫ってくるバイクが来た時、先に行かせたライダーが手を上げて挨拶をしてきたのですが、実際私が思っているのは

「車間距離を詰めてきて煽ってくるような運転をしといてありがとうじゃねーよ。」

という感情です。

特に山道に行くとこういうライダーが非常に多いように感じないでしょうか？

なぜスピードをそこまで出す必要があるのか？もしかして自分が上手いとでも思っているのか？カーブの先に事故車がいたらどうするのか？

想像力がある人はそこまで無理をして攻める事はしないはずです。

テクニックはあるのかもしれませんが、アクシデントはテクニックでは回避できない場合も多くあります。

私の父親基準から言わせれば下手くそなライダーが非常に多いというのは否めないのではないでしょうか？

周囲の車にブレーキを踏ませておいて、我が物顔で走るというのは、反対から言うと、周囲の車がブレーキを踏んでくれなければ速く走れないという事です。

これって上手な運転ですか？

アクセル全開でかっ飛ばすのがカッコいいと思われているのかもしれませんが、実際には周囲の人は恐怖と迷惑を感じている場合のほうが多いはずです。

全体の交通に上手に調和できるライダーの方がスマートでは無いでしょうか？

そりゃ、私だってかっ飛ばしたい時もありますよ。

若い時は峠小僧で、膝に空き缶を付けて走っていたので、ある程度の自信はありますけど、それをいい大人がやっていたら周囲から頭悪いと思われておしまいです。

のんびり走るのが正しいとは言いませんが、もっと自分にも周囲にも余裕のあるライディングをしてもらいたいのです。


余談ですが、私の母親はバイクが大嫌いで、乗っている車の近くをバイクが走っていると嫌がるのですが、あるライダーをべた褒めしていました。

「あのバッタみたいな色のバイクは本当に綺麗に運転するね、ああいうバイクの後ろだったら安心して運転できるよ。あんたも大人になってバイクに乗りたいなら、あのバッタバイクの人みたいになりなさい。」



バイク嫌いの人にも受け入れられる様なそんなバイク乗りになりたいものです。