世界を目指すアジアのヤングライダー特集1:栗原佳祐選手「念願かなった海外でのレース参戦」
クシタニのブログ
クシタニでは、アジアロードレース選手権(ARRC)に参戦するライダーをサポートしています。
ARRCはアジア圏で開催されるレースシリーズです。1ラウンド2レース制で行われ、2018年はタイでの2戦をはじめ、
オーストラリア、日本、インド、インドネシアの5か国で全6戦12レースが開催。
2018年はスーパースポーツ600(SS600)クラス、アジアプロダクション250(AP250)クラス、
アンダーボーン150(UB150)クラスの3クラスで、各クラスともに市販車ベースのマシンで争われました。
ARRCはアジアのレースシリーズであるとともに、世界を目指すヤングライダーたちがしのぎを削るチャンピオンシップでもあります。
ここからMotoGPの登竜門的位置づけのレースであるCEVレプソルインターナショナル選手権(CEV)を経て、
MotoGP参戦を目指す若いライダーもいるのです。
たとえば、2018年シーズンCEV Moto2に参戦し、2019年シーズンからはロードレース世界選手権のMoto2クラスに
IDEMITSU Honda Team Asiaから参戦するインドネシア人ライダー、ディマス・エッキー・プラタマ選手も
CEV参戦以前にはARRCで活躍していました。プラタマ選手は、クシタニがサポートするライダーのひとりです。
クシタニはARRCに参戦するライダーをサポートすることで、世界を目指すヤングライダーたちを支援しているのです。
それでは、そんなARRC参戦ライダーをご紹介しましょう。
クシタニのレーシングスーツで、2018年シーズンのARRCスーパースポーツ600(SS600)クラスを獲った日本人ライダー、
A.P.Honda Racing Thailandの栗原佳祐選手です。
原選手は21歳。2013年から2017年まで全日本ロードレース選手権J-GP3クラスに参戦し、2016年には最高位ランキング2位を獲得しました。
2018年からは戦いの場をARRCに移し、A.P.Honda Racing ThailandからSS600に参戦。
初参戦となるARRC SS600で、第2戦オーストラリアラウンドのレース2で今季自己最高リザルトの4位入賞を果たし、
ポイントランキング12位でシーズンを終えました。
そんな栗原選手はどのようにしてレーシングライダーを目指すようになったのでしょうか。
まずはそのきっかけを聞きました。なお、この取材はARRC第6戦タイラウンド初日に行ったものです。
「僕は小さいころ、耳が聞こえづらかったんですが、小学3年生のときにその症状が悪化してしまったんです。
それで検査に行ったら耳の中に水が溜まる、いわゆる中耳炎でした。バイクに興味を持ち始めたのもこのころです。
レースに参戦したい気持ちもありましたが、耳を治してからじゃないと危ないということで、1年間治療に専念することになりました。
その1年の間はポケバイを買ってもらって、広めの駐車場などで乗っていたんです」
もともと、栗原選手がバイクに興味を持ったきっかけはお父さんの影響だったそうです。
栗原選手のお父さんは趣味でバイクに乗っており、若いころにはサーキットも走っていたのだそう。
「父がツーリングに行ったりしていて、たまに一緒に乗せてもらったりしました。
自転車より速いものというのを体感したことがなくて……。そこからは、気づいたら乗っていましたね」
ポケバイからミニバイク、そしてロードレースへとステップアップを踏んだ栗原選手。
職業としてレーサーを具体的に意識するようになったのは、全日本に昇格してからだったそうです。
ただ、そんななかでも栗原選手は、自身に課した約束事がありました。
「高校は最低限出たいと思っていて、それをクリアできないなら(レーサーを目指すのは)やめようと思っていました。
何かあったときのことも考えておかないといけませんし、うまくいったとしても引退することにはなりますから」
学業とレースを両立させて高校を卒業した栗原選手は、レースに集中。
19歳のときには全日本J-GP3でランキング2位を獲得しました。2017年にはハルク・プロからモリワキに移籍。
そして2018年にはARRCへの参戦を果たします。そこには栗原選手の「海外でレースをしたい」という思いがあったそうです。
「僕は常々、いずれは海外でレースをしたいと言っていました。そして今季、チャンスをもらいました。
ヨーロッパでは若いライダーが出てきています。年齢を重ねてから海外のレースに参戦しようと思っても、
速くても厳しいこともあります。海外に出られるうちに、チャンスがあれば出たいと思っていたんです」
そんな思いが実現した2018年は、栗原選手にとって苦戦したシーズンとなりました。
250ccマシンで参戦するJ-GP3で戦い続けてきた栗原選手は、600ccマシンでのレースは初めて。
しかも初めて経験する海外のレース。チームとのコミュニケーション面を含め、難しい部分も多かったと言います。
「思っていたよりも厳しいシーズンになってしまいました。
シーズン序盤は、(全日本のJ-GP3マシンからARRC SS600マシンの)乗り替えに苦労しましたね。
また、体力面で足りていない部分があることもわかりました」
フィジカル面の向上を図りつつ、少しずつステップアップしているという栗原選手。
前回インドネシアラウンドからは復調の兆しが見え、最終戦タイラウンドでは「気持ちよく走れています」と明るい表情を見せていました。
このインタビュー翌日、翌々日に行われたレース1では11位、レース2では6位フィニッシュを果たしています。
今後、目指すところについて聞くと、「あくまでもMotoGP」という答えが返ってきました。しかし、冷静にこうも語ります。
「ただ、自分の活躍できる場所を見つけていかなければいけないと思っています。ジョナサン・レイのように、
スーパーバイク世界選手権(SBK)で長く活躍しているライダーもいますよね。そういう活躍の仕方もひとつの選択だと思うんです。
チャンスがあって、(自分を)活かせると思えるなら、そういう場所に行きたいです」
2018年、ARRCに参戦し自身の目標であった「海外でのレース」を経験に加えた栗原選手。世界を目指す日本の若きライダーは、さらなる上昇を目指していくことになるのでしょう。
栗原佳祐(ARRC SS600/A.P.Honda Racing Thailand)
1997年12月13日生まれ。趣味は、夏はサーフィン、冬はスノーボードという、“オフ”でもアクティブなライダー。
<戦績>
2013年:全日本J-GP3 ランキング27位
2014年:全日本J-GP3 ランキング12位
2015年:全日本J-GP3 ランキング3位
2016年:全日本J-GP3 ランキング2位
2017年:全日本J-GP3 ランキング5位
2018年:ARRC SS600 ランキング12位
写真:A.P.Honda Racing Thailand