神戸ライダースクラブ
兵庫県/BMWモトラッド取扱店

神戸ライダースクラブ
取材協力/神戸ライダースクラブ  取材・文/香西 圭太  撮影/伊勢 悟
掲載日/2014年12月24日
生産中止からすでに20年ほど経過した2バルブの旧タイプボクサーだが、その完成度の高さと品質、そして安定したコーナリングや端整なスタイリングに魅せられたファンは今なお世界中に存在する。『神戸ライダースクラブ』は、その旧タイプボクサーのプロフェッショナルなのだ。

INTERVIEW

頂点のレースを通じて見えてきたボクサーの合理性に
プロフェッショナルライダーが惚れこんだ

1970~90年代の2バルブツイン、それもトップモデルのR100RSが新車と見まごうばかりの美しさで並んでいる。その多くが販売車両だ。この店の主は千石清一さん。タレントの島田紳助さんとともに『チーム・シンスケ』を結成し、鈴鹿8耐で活躍したレーシングライダーだ。

 

バブル期の1980年代末、ロードレースが華やかになっていた一方、努力と根性で8時間を攻める千石さんの姿はテレビでも放映され、多くの人に鈴鹿8耐の面白さを広めた。そんな千石さんにとってベストスポーツモデルがR100RS、中でも1986年に登場したモノサスペンションだ。旧来のツインサスペンションに比べてエンジンはマイルドだが車体は進化し、前後18インチの軽快なハンドリングが魅力だ。

 

「初めてBMWに乗ったのは1970年代中盤でした。昔はベテランが最後に乗る“あがりのバイク”というイメージでしたが、それは違います。本来のバイクのおもしろさ、楽しさを教えてくれる“始まりのバイク”です。きちんと整備したものは古くても壊れませんから」

 

すでにロードレースでめきめきと頭角を現していた千石さんは、低重心と縦置きクランクのフライホイールのジャイロ効果が生む吸いつくようなコーナリングに感銘を受けた。そしてBMWの実力はサーキットでも活かせるはず、と1983~84年には『ミントレーシング』からBMW R80改で鈴鹿8耐に参戦。コーナーではパワーに勝る4気筒マシンを追い回した。

 

「レースで分かったBMWの思想もたくさんあります。例えば左右で前後位置が違うステップのことなど」

 

鈴鹿の右コーナーでは常にオン・ザ・レールな一方、左の高速コーナーでは右に起き上がろうとする。それを抑えようとすると左側に軽くハングオンしていた。この姿勢に合わせてノーマルの左ステップが前進していたと気付いたのだ。サスペンションセッティングもサーキットでは効果がすぐに分かる。

 

「シャフトドライブは加速するとリアサスが伸びる方向に動く。これがフロントの接地感を増してくれる理由でもあります。だからチェーンドライブと同じつもりで、サーキットでリアを固くし過ぎると立ち上がりでリアサスが伸びきってリジッドになってしまいます。BMWのセッティングの基本ですね」

 

今では稀になった素性の良い車両を探し出し、なるべくオリジナルの状態を保ったまま、新車当時のパフォーマンスを得られるよう調子を整える。それは本来の“調律”という意味のチューニングだ。フォークオイルやタイヤ選びにも、“感じ”や“評判がいい”では選ばない。長い経験と理論から導かれた方程式を持っている。このあたりは千石さんが『神戸RSクラブ』のウェブで公開している。

 

オリジナルを大事にするから、ペイントや再メッキなどの処理はしない。だが車両の隅々まで磨きあげる。その美しさは、取材中にたまたま神戸ライダースクラブを訪れたビンテージBMW専門店『ボクサーショップ』の神宮司さんが「こんなにキレイなRSはまずないですね」と太鼓判を押すほど。そう言われた千石さんの嬉しそうな表情から、いかにバイクに愛情を込めて仕上げていることか、その想いが伝わってきた瞬間だった。

PICK UP

2バルブボクサー本来の性能を味わって欲しいから
ノンレストアのオリジナルで最高の状態の正規輸入車だけを扱う

神戸ライダースクラブの設立は1990年だが、阪神淡路大震災の影響などで一度は閉店し、3年前に「自分の好きな車種だけを扱いたい」と、2バルブの専門店として復活。拠点はショールームとガレージの2ヵ所。千石さんが1人ですべてをまかなっている。

 

“修理屋ではなくセッティング屋”と千石さん。足周りやキャブレターの小さな設定で走りは様変わりする。「鈍感と思われがちなビング製キャブレターも実はシビア。同調をきちんととれば振動もなくモーターのように回ります」と、販売車両は完璧なセッティングを済ませる。通販はせず、遠方のお客さんには信頼できるショップを紹介する。納めたバイクがずっと完調でオーナーを楽しませてくれること、それが第一なのだ。一生乗れる2バルブボクサーを探しているなら、是非訪ねるべきショップだ。

 

ファッション中心のショッピングセンターの中にある『ショールーム神戸』。まるで1980年代後半で時間が止まったかのような、好コンディションのR100RSが並ぶ。後期のモノサスが中心だったが、初期のツインサスRSもきわめて良好な状態で並ぶ。

「目的地に行く手段ではなく、旅の道中が楽しい最高の乗り物」と言うモノサスペンションのR100RSが並ぶ。日本全国から極めて程度の良い正規輸入車だけを厳選し、レストアなど化粧直しはせず、メカニカルな部分を徹底して整備した上で販売する。

『メンテナンスガレージ芦屋』にもストック車両が。左のブルーのR100RSは納車待ち。外装のエッジに保護テープを巻いた姿に千石さんの愛情がうかがえる。中央は希少なツインサスのR65。日本に正規輸入された新車当時の車両だ。

ノーマルのポテンシャルを引き出すカスタムも得意とする。こちらはツインサスのR100RTをベースにしたもの。レースを通じて数々の車両をセットアップし、レーサーに仕立ててきた千石さんならではの技術とセンスが光る。

千石さんの個人車両でもある1973年型のR90/6。スポークの1本まで磨き上げ、まるで新車のようだ。これもレストアではなく「レースでは汚いバイクが勝てるわけがないんです」という、千石さんが磨きながら長く乗ってきたもの。

千石さんがすべて1人で整備やセッティングを行うメンテナンスガレージ芦屋にて。島田紳助さんの小説で、後にTVドラマ化された『風よ、鈴鹿へ』で鈴鹿8耐に情熱を燃やす姿を見て、千石清一さんの名前を覚えている人は多いはず。

パワーを求めるなら高性能キャブレターに換装するのが一番。それもセッティングしてこそ本領を発揮できる。写真はミクニTMRだが、現在はケーヒンFCRを選ぶ。レスポンスの良さに加えて細かくセッティングできるのが最大のメリット。

本文中でも触れたように2バルブの左右で違うステップ位置は高速の左コーナーで足を踏ん張るため。ただ、それよりもリラックスしてコントロールしたいライダーのために、左ステップを後退させたベストP(ポジション)ステップも発売。モノサスRシリーズ用。

R100RSは“冬の王者”だという。エンジンの熱が上手にライダーを温めるのだ。真冬なら写真のようにインテーク3段目までとオイルクーラー脇をガムテープで塞ぐ。逆に夏はアンダーカウルを外す。カウルの脱着で気温に合わせるのだ。

10鈴鹿8耐には1978年の第1回から参戦。数多くのモデルで戦ってきた。当時は名ライダーが名メカニックであるのは当然で、特に千石さんはエンジンのチューニングや車体作りも自ら行ってきた。その経験が“バイクの調律”とも言うべき仕事に活かされている。

11『チーム・シンスケ』のライダーとして長く鈴鹿8耐の名物男だった千石さん。8耐のドラマチックな側面を広めた。これは1986年、最初にチームが出場した全日本選手権。この日が3月27日だったことから、以降の固定ゼッケンは27番になった。

12ショールーム神戸は六甲ライナーのアイランドセンター駅に直結した、KOBEファッションマートの2階にある広いスペース。2バルブボクサーを中心とした販売車両の他に、千石さんが乗ったレーサーやフォーミュラカーも展示してある。

13ショールームに並ぶ『チーム・シンスケ』時代の750ccレーサー。特定のバイクメーカーとの関係はなかったため、参戦年ごとにマシンのメーカーは異なる。写真左右はホンダV4、中央は参戦初年のヨシムラ・トルネードだ。

14千石さんは1992年から12年間、鈴鹿サーキットのFIM公認マーシャルライダーを務めた。マーシャル専用車は楕円ピストンのホンダNR750。M(=マーシャル)マークのSUZUKAカラーのツナギやヘルメットは、現在のガレージ芦屋の写真をよく見ると…。


SHOP INFORMATION

神戸ライダースクラブ

ショールーム神戸
住所/兵庫県神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート2F
定休/水曜・日曜・祝日

メンテナンスガレージ芦屋
住所/兵庫県芦屋市宮塚町9-5
定休/年中無休

TEL/078-857-8844
FAX/078-857-8843
営業/10:00-18:00
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