ホンダ TLR200/TL125(1983)

掲載日:2014年06月13日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA TLR200/TL125(1983)
最新モデルばかりではなく、現在は気軽に遊ぶためのちょっと古い
トライアル車の人気も高い。とりわけこの2台はその最右翼のバイクだ。

4ストのトラ車は永遠不滅

世界で最も高い場所をロケに使ったバイクカタログといえば、おそらくこれだと言える。バイクによる北極点・南極点到達だけではなく、チョモランマ挑戦時の世界最高高度記録(6005m)など3つの世界記録を持つ冒険家の風間深志氏がチョイスしたトライアルマシンが、このTLR200&TL125だった。

この2台のルーツは1973年にデビューし、第1次トライアルブームの牽引役として活躍したバイアルスTL125だ。4スト単気筒125ccならではの乗りやすさと抜群の低燃費、高い走破力を誇るなど、優れた実用性を持つバイク。同時に日本初の4スト・トライアルバイクとしても記念すべきモデルだった。

同車は後に数回の小変更を受けながら’81年にイーハトーブTL125として完成度を高めたが、’83年4月に実質的後継モデルとしてフルチェンジを受けたのが、今回ご紹介するTLR200とTL125だ。

特に、当時の第2次トライアルブームに対応するべく登場したTLR200はトライアル車でありながらも大ヒット。一時は250ccクラス部門でトップの販売台数を記録したほどだった。

’80~’83年にかけてをピークとした空前のバイクブームの影響もあるが、RTL360を駆るエディ・ルジャーンによる4ストマシン初のトライアル世界選手権制覇、そしてトライアル全日本選手権での山本昌也選手や開発に関わった服部聖輝選手の大活躍、日本で初開催されたスタジアムトライアルの華麗なアクションの影響も手伝って、トライアル人口が大幅に増大した時代だった。

TLR200に搭載されたエンジンは4ストエンデューロマシンXR200から流用したものだったが、125ccには真似のできないパワー&トルクと粘り強さ、そして125cc同等の車体の軽量コンパクト性を活かした、まさに多くの日本のライダーに今なおジャストサイズといえる排気量であった。

まずはそのフレーム。ダイヤモンド型採用によるフレームの重量は、50ccスポーツバイク並みの6.8kgと軽量なだけではなく、モトクロッサー以上に突起物を減らして動きやすさを計算した形状で先代のバイアルスTL125とは次元の異なる作り込みを得た。エンジン下部のロードクリアランスは300mmと十分な高さを確保しつつ、シート高は780mmと低い設定。

半球形燃焼室を持つエンジンは安定した点火を行うCDI点火を採用。フラットなパワー特性と6速を使うことでさらに幅広い実用性を確保。そのエンジン本体の徹底した薄肉軽量化はもちろんだが、岩などからの激しい衝撃を受ける左右クランクケースカバー下側の肉厚はアップさせつつ、5mm厚のアルミスキッドプレートを装備した安心の作り込み。ホンダのエンジン始動性はもともと定評があるが、同車ではキック連動デコンプ式を採用することで、足元の悪いところでの始動性を確保した。

セミエア式フロントフォークは、上下2本締めによる高剛性ジュラルミン鍛造ボトムブリッジで固定。ステムパイプは「冷しはめ製法」によって従来の締めつけボルトを省略して軽量化。しかもヘッドパイプをスラント設計してキャスター角を確保しながらハンドリング慣性マスの低減もした。62度のハンドル切れ角(ちなみに122ccの初代TL125は50度)とともに、あらゆるセクションでの走破力と公道走行での安定性を両立したのだ。

一方のリヤショックは、トライアルライディングに必要な初期作動性の優れた加圧ガス併用タイプ。転倒時に横からの衝撃でリヤショックがくの字に曲がるのを防ぐようにφ12.5mmの太いロッドとした。さらに、激しい走行に耐えるため、スプロケットの固定ボルトはラバーブッシュで保護。トライアル車に必須のドライブチェーン・テンショナーも標準装備していた。

前後のドラムブレーキも同様に、軽量小型化を進めながら効力をアップ。左右のレバーは木の枝などが引っかかりにくい逆ボールエンドタイプ。各部のパーツの肉抜きも徹底し、サイドスタンドはスイングアームに直付けしてライディングの邪魔をしない設定だった。タンク容量は6.5L。バイアルスTL125並みの低燃費性を継承しながら容量をアップしてロングランにも対応した。

トライアル競技で培ってきたノウハウを最大限に取り込みながら、ツーリング・トライアルなど一般での使用に最適な使いやすさを実現した作り込みへの姿勢こそ、4スト・トライアルのホンダ美学であった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

RTL360を駆った’82年トライアル世界選手権覇者、エディ・ルジャーンがエアターンでTLR200のポテンシャルをアピール。同じ’82年の全日本選手権チャンピオン・山本昌也もRS250Tでと、4スト・トライアルマシンの活躍の様子がカタログ掲載された。同年11月の日本GPではHRC220ccキットを組んだ服部聖輝が2位、翌年1月の多摩テック・スタジアムトライアルではノーマル車で4位。TLR200の高性能を実証

TL125の基本構造はTLR200と同じだが、こちらは5速のエンジンをシルバー塗装し、フレーム色もホイール色も銀。タンデム用のリヤステップとリヤキャリアを装備した。125には速度警告灯は付かない

基本構成はTLR200と同じままでHRCキットを組み込み、限界の250ccまで排気量アップした競技仕様のTLR250。乾燥重量88kgと超軽量。タンク容量は4L

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