カワサキ GPz400/GPz250(1983)

掲載日:2014年03月28日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI GPz400/GPz250(1983)
古くからカワサキはデザインで独自色を切り開いていた。
このGPz400/250は質感も含めて’80年代の先端をいくミドルバイクだった。

独自の流麗スタイル一徹

’80年代のカワサキと言えば、誰もがニンジャことGPZ900Rを最初に思い浮かべるだろう。それほどインパクトが強かったわけだが、その直前のカワサキ車の作り込みの素晴らしさも、忘れられない。

いわゆるGPz1100を筆頭とした750ターボ、GPz750、GPz400、GPz250の空冷スポーツ5兄弟がそれだ。高次元の動力ポテンシャルを各クラスで発揮したことだけではなく、ここまで全機種を統一して相似形としてまとめ上げたインテグレートデザインの例はない。遠くから見ると1100も750も400もわからないほどだ。

スズキGSX1100Sカタナも750、400、250とシリーズ化したが、長期間にわたるデザインの連続展開性を含めるとGPzシリーズは秀逸というほかない。

具体的には、Z400FXを代表とする角張ったデザインからサイドカバーがリヤカウルへとつながるようにインテグレートされたZ400GPへと進化し、そして’82年以降に認可されたカウルをセットしつつ、燃料タンクデザインをリファインしてカウルと統合したデザインへと変更して、’83年春にGPz400を発売。フロントのカウルのエッジからリヤカウル後端まで流れるような流麗なラインを導入して、このシリーズを完成させた。中型クラスという当時のメジャー市場にまずは打って出たのだから、実質的にはこのシリーズのデザイン的なリーダー格であったともいえる。

しかも次期モデルでは、よりすぐれた空力特性をカワサキはデザインへ取り込んだ。それがニンジャことGPZ900Rだったのだ。つまり、連綿とカワサキが築き上げてきたデザインの蓄積から絞り出されたスタイルが、名車GPZ900Rへとつながったのが他にないポイント。

そんな役割を果たしたGPz400はプロト型として以前に強烈な話題を集めた750ターボの発展型スタイルとも認識できた。いわゆる「ターボライン」あるいは「流線フォルム」さらには「なめくじライン」などともいわれたが、同クラスのライバル他車よりも存在感の強さと高い質感は見事で、400ccという排気量概念を超えて各部の作りがしっかりとしていた点も見逃せない。

技術面では’80年から’84年にかけて各社がこぞって導入したリンク式リヤサスとフロントにアンチノーズダイブ機構を持つテレスコピック式フォークを持ち、エンジンは空冷2バルブDOHC直列4気筒というオーソドックスな構成。左右非対称メーター、マイコン制御モニター、アルミ鍛造セパレートハンドル、アルミ製スイングアームなど装備面の充実も魅力的だった。

燃料タンクはやや長めでステップ位置はやや後退気味のライディングポジション。これも当時のカワサキらしく1100、750も似たような設定だった。ハンドリングは、前後18インチらしい落ち着きのある設定で、低速から高速域まで誰もが安心感を覚えるタイプだった。このエンジンは1989年に登場してビッグヒットを飛ばした名車ゼファー用のベースエンジンとなったもの。

GPz400は’83年11月にA1からA2へとマイナーチェンジして3馬力アップ。名前はGPz400Fへ。後にA3、A4となり’90年まで販売。’84年にはカウルを外したネイキッドモデルGPz400F-IIが登場。すでに’80年代半ばにはカウルのないバイクへのニーズが少なからずあったわけだ。

一方のGPz250は’79年に直線基調デザインで発売されたZ250FTの180度クランクのパラレルツインエンジンを27馬力から33馬力までパワーアップして搭載。駆動系はチェーン式からベルトドライブ式へ。GPzシリーズの末弟とはいえ、新しいチャレンジを忘れていない。このエンジンは250ccアメリカンのZ250LTDにも搭載されて扱いやすい特性を誇った。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

1979年にデビューし、ベストセラーとなったZ400FXのエンジンをさらに馬力アップして搭載したGPz400は、優れた直進安定性と柔軟なコーナリング性能を両立させていた。初期型はブラックメッキのマフラーサイドにカワサキのエンブレムをセット。’83年デビューのGPz400は同年11月にGPz400Fへと発展。タンクとサイドカバーのつなぎ目に4つのリベット風のデコレーションがある。プロト型だった750ターボから採用した、個性的デザインのひとつ

このクラスではレアな油圧式プリロードアジャスターを右サイドカバー内に設定。フロントサスは左右の内圧を均整化させるイコライズド式エアサス。フロントフォークにはアジャスタブル式のアンチダイブ機構をセットし、ブレーキパッドは当時のカワサキが積極的に導入していたメタルパッドを装備して雨でも安心の設定。タンク上に設定のマイコン制御モニターは他社よりも先進的な取り組み姿勢の表れだった

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