『ウェア屋さんのひとりごと』

【番外編】 雨の日は丁寧に

掲載日:2011年06月23日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

溝の少ないハイグリップタイヤのニーズが高かった頃、たくさんのお客様から「これ、雨の時ってどうなんですか?」と聞かれることがありました。個人的には溝の多いツーリングタイヤに比べると、限界は明らかに低くなるけど、自身の経験から「普通に乗れば普通に走れる」と思っていました。ただ “普通に” のレベルは人それぞれなので、お客様との話の中で臨機応変にお答えしていたことを思い出しました。今回はウェアのおはなしから脱線しますが、皆さんは雨の日、どんな事に気を付けながらライディングしていますか?

ドライコンディションのでも共通していることですが、とにかく全ての操作を丁寧に行うことが大切です。例えば、サーキットをとんでもない速度やバンク角でライディングしているレーシングライダーは、常に車体やタイヤの限界点を探りながら走行しているので(自分の限界も)、はた目にはダイナミックに見えても、実は非常に繊細な操作でオートバイをコントロールしています。一般道で限界を探る様なライディングをすることはありませんが、知っての通り雨の日は路面のグリップが極端に低下しますので、“突発的な操作” を行うことで瞬時に限界を超えて転倒…という事は珍しくありません。私はサーキット走行会などで先導を行う機会がよくありますが、ペースは決して速いと言えない方が転倒する原因のほとんどが、この “突発的な操作” によるものだと思っています。

それでは、どんなことを意識して操作すればイイのでしょうか?

まずアクセルですが、停車時にエンジンを始動して操作をしてみましょう。操作自体は手首をクイッと捻りますが、実際には “ワイヤーを引く” ことを想像しながら、このワイヤーを1ミリ単位、ビッグバイクであればワイヤーの張り具合(遊びの状態からピンと張るまで)によって回転の上昇に反映してくることを確認します。自分のオートバイがアクセル操作にどう反応するかを停車状態でキチンと把握し、あとは普段のライディングでも意識してください。特に交差点での左折は速度も落ちる分、アクセル操作がシビアになるので、ここで丁寧な操作が出来るようになれば色々なシーンで応用できるでしょう。今まで5ミリ単位で操作していたところを1ミリ単位、或いはそれ未満で普通に操作出来るようになれば、立ち上がりでスリップダウンやハイサイドといった悲惨な思いをする確率が格段に減少すると言ってイイでしょうね。

さ~て、大切なのはブレーキングですが、特に雨の日、止まることは非常に難しい課題ですね。みなさんはブレーキレバーって、どんな感じで握っていますか? 例えば強い力で瞬時に握り切ってしまうと、いくら「ウエットグリップに自身アリ」のタイヤでも簡単に限界を超えてロックしてしまい、“握りゴケ” という最悪な結果を招いてしまいます。咄嗟の事態で急ブレーキを掛けるケースはありますが、イメージとしては「ハッとしてパンッ」と握るのではなく、「ハッとしたけどスゥーッ」という感じで、コンマ数秒という短時間ですが、タイヤを路面にジワッと押しつけるようなブレーキングが出来れば、濡れた路面でもかなりの制動力が期待できます。これはドライ路面でも同じです。

あとは白線やマンホールは避けて通るなど、「基本中の基本」を押さえておけば、それだけでも濡れた路面に対する怖さや危険性は大きく軽減できると思います。とにかく “丁寧に” を体に染みこませることで「雨なんかヘッチャラやで!」って、言ってみたいですね。

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