『バイク乗りの勘所』

MADE IN JAPANのススメ

掲載日:2014年01月27日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

たまには自分のバイクの話をしよう。私の愛車は、1991年型ヤマハXJ900。中古で購入したのが2001年で、乗りはじめたのは2002年。もうかれこれ12年くらい、1台のマシンとつきあっている。とくに気に入って買ったわけではなく、気に入っていた先代XJ750Eを盗まれた腹いせに、上位機種を衝動買いしたというのが正直なところだが、以後12年間のつきあいの中で“これにしてよかった”と感じることは多い。その理由のひとつに“MADE IN JAPAN”だから…というのがある。

外車に魅力を感じないわけではない。いや、むしろ国産車よりも魅力的だと思うことは多い。しかし、自分で整備して乗ることを考えると、工業製品としての完成度の高さと、純正部品の価格の両面で、国産車以外の選択肢は私にはない。完成度については、公平に見て、外車が劣っているのではなく、国産車が高すぎるのだと思う。だがそれは、現状に満足せず、マシンだけでなく製造技術も含めた絶え間ない改善の成果であり、これこそ“MADE IN JAPAN”の誇りである。

完成度が高いのはいいけれど、薄味に過ぎやしないか…という意見もある。これには注意が必要だ。機械としての不具合を“味わい”などという言葉でごまかしている例が多いからだ。味の濃い・薄いと、料理の美味しい・不味いを混同してはいけない。薄味でも美味しい料理はいくらでもある。工業製品もまた然り。時間をかけ、長くつきあっていくうちに、薄味の中に旨味を見出し、造り手の妙技に舌鼓を打つといったことができるのは“MADE IN JAPAN”ならではの楽しみだ。

和食(日本人の伝統的な食文化)がユネスコ無形文化遺産に登録された。これと国産車の完成度の高さは、決して無関係ではないと思う。乱暴に言ってしまうと、和食も国産車も、それを造ったり味わったりするためには、繊細さが必要なのである。繊細な物造りは、和食で育った日本人の得意技…と言えるかもしれない。美味しい和食を味わうように国産車を楽しみ、美味しい和食を作るがごとく、腕によりをかけた“MADE IN JAPAN”を誇れる国産車の登場に期待したい。

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