旧車の祭典「テイスト・オブ・ツクバ」にゴトータケシがマッハで参戦!

掲載日:2021年12月10日 フォトTOPICS    

写真/磯部孝夫 取材・文/後藤 武

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テイスト・オブ・ツクバ(以下テイスト)といえば旧車の祭典だ。毎年5月、11月に開催されるこのレースでは70年代、80年代の名車が集まって激しい戦いを繰り広げる。参加台数、観客動員数共に日本最大のアマチュアレースと呼ばれているほどの盛り上がりようである。

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今回ライターのゴトーが参戦するのはD.B.A.R1。主として70年代の750ccまでのマシンで戦われるクラスだ。対象となるのはカワサキのZ650F(ザッパー)やRD400、GT750など。僕、ライターのゴトーのマシンはカワサキの750SS(通称マッハ)である。テイストは非常にレベルが高いレースとして有名だが、D.B.A.R1は参加台数が少ないこともあって比較的ノンビリしているし、参加者同士も和気あいあいとした雰囲気だ。

少し前まではZ.E.R.O3クラス(80年代のアルミフレームのマシン)と混走だった為にマシンの差が大きかったのだが、2020年からはD.O.B.A.R1、2クラスでのレースとなった為、同じ年式のマシン同士のバトルができるようになり、ライダー達はとても走りやすくなった。

マッハの仕様

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ゴトーの愛車、750SSは72年に発売されて、当時は量産車世界最速、最軽量の750だった。多くの伝説を生んだマシンである。だったらレースでもずいぶん速いんじゃないかと思われるかもしれないが、実はこれが色々と苦労する。空冷の2ストロークエンジンはシビアでセッティングを間違えたりするとピストンを溶かしてしまうし、ピストンバルブ(2ストロークの吸気方式)エンジンはピーキーなパワー特性で扱いにくい。おまけにマッハのミッションはワイドレシオの5速なので、ファイナル(前後のスプロケット)で細かく調整しても、すべてのコーナーに合わせることは不可能。パワーバンドに入らず、上手く立ち上がれないコーナーが必ず出てくる。

「半クラッチを使えば……」なんて言う人もいるのだけれど、小排気量ならともかく、ビッグ2ストの半クラは危険。失敗したら簡単にハイサイドをくらってしまうし、クラッチを酷使して滑り出したら、すぐにクラッチがダメになってしまうからレースそのものを諦めることになってしまう。色々と難しいのである。

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シリンダーのポートタイミングはノーマルのままだが、スリーブは井上ボーリングのICBMを使用。アルミスリーブにメッキを施したこのスリーブとボスナーの鍛造ピストンの組み合わせにしたところ、レースで酷使しても焼付きは発生しなくなった。腰上が壊れるのはセッティングに失敗してピストンが溶けた時だけである。アルミで放熱性にも優れる為、オーバーヒートもしにくいし、耐久性が高くて減らないので長い期間使っていてもピストンやリングだけ交換するだけなど良いことづくめ。マッハでレースを続けていられるのは、このシリンダーがあるからと言っても良いくらいだ。燃焼室も最新の2ストのデザインを元に井上ボーリングと共同で新しい形状を開発、採用したところ燃焼効率も向上してデトネーションも出にくくなった。

こうやって少しずつ改良を加えているのだが、まだ弱点は残っている。ミッションの強度が弱く(500SSのケースやミッションサイズが変わらない為、根本的にミッションが弱い)、レース中でも丁寧なシフトをしなければならない。また、振動が多い為に予想外のトラブルが出る。今回のレース前もエンジンマウントのボルトとチャンバーのステーが折れた。走行終了後は必ずボルト類の増し締めやクラックなどを細かく確認していくのだが、今回のレースではまさかと思っていた部分でトラブルが出ることになってしまったのである。

予選

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D.B.A.R1は日曜日朝一番の予選。前日に受付と車検が行われているので、済ませておくことができれば楽なのだが、仕事の関係などもあって当日朝に受付と車検となった。こうなると朝はバタバタと忙しい。ヘルパーやメカニック達に荷物とバイクをパドックに運んでもらい、車検に並ぶ。

無事に車検をパスしたらすぐに暖気場でウォームアップ。当日の気象条件でエンジンの調子を最終確認する。ここまでにトラブルが発生したら大騒ぎ。メンバー達と総出で予選までの短い時間で対策しなければならない。そのことが分かっているから、いつもメカを手伝ってくれているメンバーに加え、手が空いた友人達も様子を見に来てくれたりする。

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セッティングはその時の気圧、気温、湿度で変化する。同じ量の空気を吸い込んでも空気密度が異なるからだ。だから毎回走行前に気象条件を確認して、以前走っていた時のデータなども照らし合わせセッティングを決めることになる。

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暖気をしてみると若干濃いようで吹け上がりが重い感じがするが、前回のテイストでは絞りすぎてピストンを溶かしてしまっているので、大事を取ってこのまま走ることに。セッティングは絞っていくとパワーが出るようになっていくのだけれど、絞りすぎるとピストンを溶かしてしまったりするから加減が難しい。

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台数が多いクラスで決勝の成績を考えたら予選で少しでも前に出ておきたいところだが、D.B.A.R.1、2は台数が少ない為にそれほど無理をする必要もない。タワーの掲示板に出る自分の順位を見て、取り敢えず前列に並べそうだということを確認して早めに予選を終えることにした。予選は3番手である。

トラブルに襲われた決勝

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予選が終わったら一度シリンダーヘッドを開けてエンジンの状態を確認する。空冷のマッハは冷却水を抜く必要もないのでヘッドを外すのは簡単だし、ピストンヘッドのカーボンの付着度合いなどを見れば、プラグを見るより確実にエンジンの状態を知ることが出来る。

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3気筒共悪くない。エアの吸い込みや点火系のトラブルなどあると一気筒だけ状態が極端に変わったりするが、そういった異常も見られなかった。

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3変更したのは点火タイミングのみ。低中速で若干進めていたのを元に戻した。ゴトーのマッハには、ジールトロニックのデジタル点火システムが入っていて点火マップを自由に変えることが出来る。前回の走行で中速域の点火タイミングを進めていたのだが、それ以前の方が良かったので元に戻したのである。このこと自体は方向性として特に間違ってはいなかったのだが、決勝で混乱する原因となった。レース前に余計なことはするべきではなかったのである。

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決勝直前にエンジンが始動することを確認。グリッドについた。ウォームアップランが始まってクラッチをミートした瞬間、エンジンが止まりそうになった。あわててクラッチを握り、なんとかスタート。明らかにパワーがない。タイヤを温めながら何が起こったのか考える。予選から変えたのは点火タイミングしかない。マッピングを間違えたか、あるいはイグナイターがバグったか……マップの切り替えスイッチ(二つの点火マップを切り替えられる)をいじったりしながら様子を見ているうちにウォームアップランは2周目に突入。ピットインのタイミングを逸してしまった。

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プラグ? いや予選前に新品にしたばかりだ。そんなことを考えながらグリッドに並ぶ。そしてわけがわからないままスタート。復活してくれることを祈ったがやっぱりダメ。結局数周走ってリタイヤすることになった。

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パドックに戻ってきたら1番のマフラーが冷たい。ピックアップを確認して配線を辿ってみると……1番のギボシ端子が外れていた。「あー、これだ」とメカをやってくれている友人達とうなだれる。

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振動が多いマッハは、色々な部分が折れたり外れたりする。今回もギボシのメスが広がってユルユルになり、決勝でエンジンを始動した瞬間、端子が抜けてしまったのである。(数日前の練習でも振動でエンジンマウントボルトが折れ、チャンバーステーが割れた)。あまりに不甲斐ないトラブル。応援してくれていた人達もたくさんいるのに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

実は最近のテイストでは、決勝でトラブルが続いている。前回のレースではキャブレターセッティングを失敗して決勝中にピストンを溶かしてしまったし、昨年のレースではエンジン内部に異物が混入して壊してしまい、決勝を走ることが出来なかった。同じマシンを使ってレジェンドオブクラシックというイベントにも出場していて、こちらではほぼトラブルなく走っているのに、何故テイストでだけトラブルが出てしまうのか……

運といえばそれまでなのかもしれないが「テイストの決勝はトラブルが出る」というジンクスを弾き飛ばさなければならない。点火系のハーネスも新規製作に着手したところ。二度と同じ失敗は繰り返さない。次こそは決勝で多くの人に快調に走るマッハの勇姿をお見せしたいと思っている。

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ゴトーがD.B.A.R.1クラスに参加する時に色々とお手伝いしていただいている「XJ専門店ML三澤」の三澤さん。後藤とのバトルを楽しみにしていてくれたのだが、今回は一緒に絡むことが出来ないまま。次回こそお願いします。

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yssRC&アゲイン&BigIIIからCB500Fでエントリーしたのは伊藤大三選手。今回初出場のマシンながら見事なポール・トウ・ウイン。タイムは1分7秒台だが、マシンが煮詰まれば更にタイムアップしていくことだろう。

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FBRからZ650Fでエントリー。2位に入ったのは牛込保雄選手。予選中、最終コーナーで転倒した為、タンクカバーがない状態で撮影。前回優勝しているだけに次回の巻き返しに期待したいところ。

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モンスタークラスでの活躍で知られるBLUE THUNDERSからZ650Fでエントリーしたのは牛坂明神選手。このクラスに毎回欠かさず参加している。D.B.A.R.1をこよなく愛するライダーだ。

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憩いの場なないろ&タゴスからZ750FXでエントリーしたのは阿部誠選手。90年代からこのマシンでテイストに参加し続けている。「D.B.A.R.1,2クラスのライダーに増えてほしい」とのこと。

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今回GS425でD.B.A.R.2クラスにエントリーしたのは堀内英和選手。ホイールは貴重なヨシムラのスパウト。今回D.B.A.R.2は一台のみ。台数が増えて欲しいクラス。堀内選手は過去、GT750、Z650Fなど様々なマシンでD.B.A.R.1クラスに出場している。

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この日のメインイベントがハーキュリーズ。元ワークスライダーの加賀山選手、柳川選手も出場。オリジナルフレームカタナ、ZRX1200、H2Rの激しい戦いで観客は大興奮。

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