ACサンクチュアリー / Z1-R カスタム写真
ACサンクチュアリー / Z1-R カスタム写真

カワサキ Z1-R

掲載日:2010年12月20日 プロが造るカスタム    

各部の数値をデータ化するために試行錯誤を繰り返して昇華

カスタム作りには、時流に応じて変わっていくところと、あまり変わらないところがある。前者は使われるパーツや素材だったり、その時々の人気が反映されてくる部分。そして後者は、元のバイクの持つ基本的な性格やイメージだ。1972年の発表から既に40年近くが経ちながらも、今もカスタムでの人気最右翼であるカワサキZ1を例に取れば、Z1自体の持つ威厳やおおらかさを持ちながらハンドリングマシンであること、直4エンジンやDOHC4バルブの(当時としては)ハイメカなど、現在に至る日本製バイクの特徴を作り上げてしまったというような内容は先述の後者に属するもの。前者は、前後17インチ化や18インチ化、セパレートハンドルやバーハンドル、使用ブレーキパーツなどに如実に表れてきた。

 

そんな中で、前者の内容が後者に移行するというケースがある。Z系やニンジャ系カスタムにワイドホイールを履く、最新ネイキッドの足まわりをフィッティングするといった作業は、そのひとつだ。'90年代以降のカスタムシーンでかなりポピュラーになった後に、今では17インチコンプリートや18インチコンプリートという形で完成にかなり近いところまでにこぎ着けている。ただし、フロント19/リヤ18インチ(一部前後18インチ)だったZ系のホイール径を変えてしまうことは思いの外大変なことで、そういったパーツを装着するために本当に必要な作業を、本当にキッチリこなしているケースは意外に少ないものだ。

 

その「必要な作業」とは、ドライブチェーンとリヤタイヤ、あるいはフレームが干渉する部分のライン確保のための加工や、良好な走行性能を得るためのスイングアームの長さや角度の設定であったりする。異質なものを組み合わせて新しいものを作るのだから、いずれも現物に当たってセッティングしてきた者にしか分からないものばかりだ。

 

シルバーにペイントされたこの車両は、ACサンクチュアリー代表・中村さんの所有車だったと同時に、そうしたデータの源となってきた1台。中村さんはこのZ1-Rで徹底的なテストを行うことで、ストリートカスタムの実践的なノウハウを蓄積。もちろん、その間に各部の分解&組み立ては数限りなく行われた。またユーザーレベルでは行えない、スペシャルチューンへのトライも数多く行われており、その一例がエンジン外部に露出したオイルライン。これはノーマルのスタッドボルトのオイル穴をすべてキャンセルして、外部からの供給に変更したものだ。これによってオイルクーラーで冷却されたオイルは、クランクケースに戻る前にふたつのチャンバーを経由、直接シリンダーヘッドに供給されるようになった。もちろん、この構成はヘッドの冷却効果を上げるのが狙い。

 

じつは前回の当欄“ザ・グッドルッキンバイクWEB”で前回紹介したZ1R-IIはこのZ1-Rの前段階で、この2台を経てACサンクチュアリーは、前後17インチ化のノウハウを確立。この2台でのさまざま挑戦は、ストリートだけではなくサーキットでも頻繁に行われていった。そこで得たノウハウは、同店が独自に手がけるコンプリートマシン、RCM=リアル・コンプリート・マシンの次世代機に着実に受け継がれている。いわばこのZ1-Rは、RCMの実質001号としての実験車。これで行われたトライによって、“17インチZ”という時流に流されないジャンルが打ち立てられたと言える。

ランブルフィッシュ(ACサンクチュアリー) Z1-Rの詳細写真は次のページにて

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