DAISHIN RACING / RZ250 “RZ TRIPLE” カスタム写真
DAISHIN RACING / RZ250 “RZ TRIPLE” カスタム写真

ヤマハ RZ250 “RZ TRIPLE”

掲載日:2010年10月18日 プロが造るカスタム    

極めて高度な加工とセッティング、双方の賜物

今俗に言う“カスタムブーム”は'80年代終盤に沸き起こり、'90年代後半にさしかかる頃にピークを迎えた後、カスタムという概念と作業とをバイク界一般に浸透させていった。規制緩和や技術・素材の進歩もあって、カスタムは市民権を得たと言っていいだろう。では、それ以前はどうだったかというと、カスタムという概念自体は確立されていたが、今よりももっと特別なことと捉えられていた。確かに、簡単に使えるようなパーツはないし、何かをしようと思えばそのための採寸や実走データ収集、加工といったことからも自らやらねばならず、誰かを頼ろうにも、頼る先は非常に少なかった。今でこそNCマシニングセンタでのワンオフも一般化しているが、このマシニングすら一般には耳にすることもなかったのだ。

 

今回紹介するダイシンのRZは、全体のスタイルは一見STD。カラーリングも初期型=1980年のそれを踏襲しているからSTD感を助長しているが、じつはこの車両、とても大胆なカスタム化が図られている。そう、本来並列2気筒のRZ250が、3気筒になっているのだ。クランクケースは左側をアルゴン溶接で足し、シリンダーもノーマルをベースに中央に1気筒を追加。しかも製作当初はこの中央気筒が後方排気となっていて、チャンバーの取り回しもシートカウル下に出る『4気筒風』となっていた。ここまで大がかりなカスタムが、1982年当時に既に形になっていたという事実も、衝撃的だ。

 

その後'80年代後半に入り、前述の後方排気部分は通常の前方排気へと仕様変更、この際に吸排気系も変更されたのが写真の状態(撮影は1993年)だが、これだけの大作業をともなうリニューアルを敢行した理由が「4気筒風に飽きたから」(大真工業代表・渡辺さん)というのも、じつにダイシンらしいエピソードと言える。

 

ダイシンはほかにもホンダCBX400Fを500ccにスープアップした上で後方排気&乾式クラッチ化してオリジナルアルミフレームに搭載したマシンで、2ストローク全盛だった500ccクラスレースに参戦するなど、誰も思いつかないような発想、極めて高度な加工およびセッティング技術のふたつを、当時すでに合わせ持っていたことが非常に大きな特徴だった。単に「今まで見たことがない形、構造をしている」だけでなく、それが「技術的に計算されたバックグラウンドを持ち、しかも高いレベルで走る」。このRZ-TRIPLEも車体まわりはスイングアームやフロントディスク、タイヤ程度の交換にとどまるものの、ツクバやスズカ、中山サーキットなどで市販レーサーのTZ350と走っても、決して引けを取らなかったという。これだけ見ても大真がいかにワン&オンリーな存在であったかが分かるというものだろう。こうしたスペシャルなカスタムとビルダーがいて下地が作られていたからこそ、無意識にこの感覚を目指して、日本のバイクカスタムは進化していったとも言えそうだ。

大真工業 RZ250の詳細写真は次のページにて

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