【ロイヤルエンフィールド メテオ350スーパーノヴァ 試乗記】現代的な構成でも、伝統のフィーリングは健在

掲載日:2021年12月16日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/伊井 覚

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Royal Enfield Meteor350 SUPERNOVA

保守的な姿勢から脱却し
多種多様なモデルを続々と開発

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少なくとも10年前までのロイヤルエンフィールドは、昔ながらのOHV単気筒車に特化した、保守的なメーカーだった。もっともイギリスに本家があった1970年以前は、Vツインやパラレルツイン、2ストローク単気筒など、多種多様なエンジンのモデルを販売していたのだが、1950年代にライセンス生産を開始したインド工場/現地法人が社名を継承してからは、ロイヤルエンフィールド=OHV単気筒車という図式が定着していたのだ。

ところが、近年の同社は方針を大きく変更。2016年に411ccのOHC単気筒を搭載するアドベンチャーツアラーのヒマラヤ、2018年にOHCパラレルツインのINT650/コンチネンタルGT650を発売し、2020年からはヒマラヤとは路線が異なる新しいOHC単気筒車として、メテオ350を市場に投入している。これらが生まれた背景には、2015年に傘下に収めたイギリスのハリスパフォーマンス社のノウハウ、さらには、元トライアンフのサイモン・ウォーバートン、元ホンダR&Dヨーロッパのエイドリアン・セラーズなど、他メーカーから移籍して来た技術者の尽力があったようで、前述した保守的なイメージは年を経るごとに薄れている。

ロイヤルエンフィールド メテオ350スーパーノヴァ 特徴

ルックスはクラシックでも
随所に現代の技術を投入

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既存のOHV単気筒車の派生機種として、ロイヤルエンフィールドは2000年代初頭から、クルーザーのライトニングやサンダーバードを販売していた。今回試乗するメテオ350はそれらの後継/上級仕様と言うべきモデルで、2021年秋には基本設計の多くを共有するクラシック350も発表。なおメテオ350とクラシック350は、パッと見は旧車的なスタイルでまとめられているものの、細部に目を凝らすと、ヒマラヤとINT650/コンチネンタルGT650で培った、新しい技術を随所に注入している。

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まずエンジンに関しては、シリンダーヘッドやクランクケースといった大物部品は昔ながらの雰囲気で、ボア×ストロークはロングストローク指向の72×85.8mmだが、動弁系はOHC2バルブで、振動対策として1軸式バランサーを装備。そしてフレームは、部分的には往年のダイヤモンドタイプに似ているけれど、実際のレイアウトは現代のネオクラシックで採用車が多いダブルクレードルタイプである。いずれにしてもメテオ350とクラシック350は、古きよき時代の構成を長きに渡って維持して来た、既存のOHV単気筒車とは完全な別物……と言いたくなる進化を遂げているのだ。

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メテオ350には、ベーシックモデルのファイヤーボール:59万6200円、マフラーとハンドルがメッキ仕上げでリアシート後部にバックレストを追加したステラー:60万8300円、ツートーンカラーの外装や切削加工を施した前後ホイール、スクリーン、プレミムシートを装備するスーパーノヴァ:62万2600円の3種が存在する。この価格をどう感じるかは人それぞれだが、市場でライバルになりそうなホンダGB350:55万円やレブル250/500:59万9500円/79万9700円より高級そうに見えること、いずれの仕様もGoogleマップをベースとする、ターンバイターンナビシステムのTripperを標準装備することなどを考えれば、高いと言う人はいないだろう。

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ロイヤルエンフィールド メテオ350スーパーノヴァ 試乗インプレッション

昔ながらのロードバイクと
クルーザーの中間的なキャラクター

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メテオ350で僕が最初に感心したのは、一昔前のロイヤルエンフィールドではマストだった乗り手のアジャスト、バイクに合わせた気遣いが、まったく必要なくなっていることだった。もっともヒマラヤとINT650/コンチネンタルGT650だって、かつてのOHV単気筒車と比べれば格段に現代的だったのだけれど、メテオ350の親しみやすさはそれら以上で、前後ショックの動きやブレーキタッチは自然でスムーズだし、クラッチはごく普通の軽さだし、ミッションはスコスコ入る。さらに言うなら、スロットル操作に対する反応はどんなときも心地よく、ハンドリングは至ってフレンドリー。この特性なら日本車からの乗り換えでも、違和感を覚えることはないはずだ。

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とはいえもちろん、メテオ350の魅力は親しみやすさだけではなかった。最初にパワーユニットに対する印象を述べると、乗り手を急かさない、重厚で粘り強くて優しいフィーリングは、既存のOHV単気筒の美点を継承している。もっともメテオ350のエンジンは1軸バランサーを装備しているから、振動はある程度抑えられているのだが、長いストロークで重たいフライホイールをゆったり回している感覚は、依然として健在。個人的には、スロットル操作にエンジンが反応するまでの程よい遅れ、中回転域の力強くて息が長い加速に好感を抱いた。

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なお形式で言うなら、今春からホンダが発売を開始したGB350は、メテオ350と同じOHC2バルブ単気筒を搭載している。ただし、あえて適度な振動を残している印象のメテオ350とは異なり、GB350は雑味がないクリアな鼓動感を念頭に置いて、不快な振動をほぼ完全に取り除いているのだ。この件はどちらがいい悪いと安易に言えるものではないけれど、同じ時代に生まれた同じロングストローク指向の単気筒でありながら(GB350のボア×ストロークは70×90.5mm)、ここまで振動特性が異なるのは、なかなか面白い事実だと思う。

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さて、エンジンの話が長くなったけれど、メテオ350の車体で僕が興味を惹かれたのは、クルーザーならではのまったり走行が堪能できる一方で、その気になればスポーツライディングが楽しめること。と言っても、昨今ではそういうクルーザーは少なくないのだが、メテオ350の場合はライディングポジションがオーソドックスなロードバイク的で(シートが意外に高く、ステップはクルーザー用語で言うミッドコントロール)、ロー&ロング指向を意識していないからだろうか(ホイールベースは1400mm)、峠道では見た目を裏切る軽快さと旋回性を披露してくれる。逆に言うならこのバイクは、クルーザーとしての徹底的な作り込みが行われてない……という見方もできるのだが、昔ながらのロードバイクとクルーザーの中間的なキャラクターに、好感を抱く人は多いのではないだろうか。

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冒頭で述べたように、近年のロイヤルエンフィールドは方針を大きく変更し、魅力的なニューモデルを次々と市場に投入している。そして改めて考えると、メテオ350は同社にとって久しぶりとなる、日本の普通2輪免許に適合する車両なのだ。もっともこのモデルは、大型2輪免許を所有するライダーも魅了する資質を備えているのだが、メテオ350の投入によって、日本におけるロイヤルエンフィールドの支持層は確実に増加するだろう。

ロイヤルエンフィールド メテオ350スーパーノヴァ 詳細写真

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ヘッドライトはオーソドックスなハロゲンバルブだが、外周に備わるガイドライトとテールランプはLEDを採用。スクリーンとメッキ仕上げのウインカーボディは、最上級仕様のスーパーノヴァならではの特徴だ。

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アップタイプのハンドルバーはオーソドックスなロードスポーツ用という印象で、クルーザー的な雰囲気は希薄。バックミラーの視認性はなかなか良好。ブレーキ/クラッチレバーに位置調整機構は備わっていない。

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スピードメーターはキロとマイルを併記。その内部に備わるLCDパネルには、燃料残量、時計、ギヤ段数などを表示。右はターンバイターンナビの表示画面で、専用アプリをインストールしたスマホとペアリングして使用。

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左右スイッチボックスは新規開発。ヘッドライトのハイ・ロー切り替えとパッシングボタン、セルスターター&キルスイッチは、近年のバイクでは珍しい回転式。

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ティアドロップタイプのガソリンタンクは、容量15ℓ。左右の立体エンブレムはステラーとスーパーノヴァのみの装備で、ファイヤーボールではステッカーとなる。

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一般的なロードバイクの基準で考えると前方に位置するものの、ステップはツーリングとスポーツライディングの両方が楽しめる絶妙な位置。シフトペダルはインドで定番になっているシーソー式。

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シートはロングランにも余裕で耐えうる肉厚を確保。ただし現在のクルーザーの基準で考えるなら、765mmの公称シート高は、フレンドリーとは言い難い数値だ。パイピングが施されたレザーは、スーパーノヴァならではの装備。

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構造的にはヒマラヤ用の441ccシングルに通じるところがあるものの、メテオ350とクラシック350が搭載するOHC2バルブ単気筒は新規開発。最高出力は20.2bhp/6100rpmで、最大トルクは27Nm/4000rpm。

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往年の英車を意識したのだろう、左から見たパワーユニットはエンジンとミッションが別体風のデザインで、この造形はINT650/コンチネンタルGT650も同様。始動はセルのみで、キックは装備しない。

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フレームはダブルクレードルタイプだが、ダウンチューブはボルトオン構造の別部品。ハーネス類を固定するラバーバンドには、メーカーロゴが刻まれている。

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キャストホイールはF:19/R:17インチで、スーパーノヴァ用は側面に切削加工が施される。フロントフォークはφ41mm正立式。

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前後ブレーキキャリパーはバイブレで、ディスク径はF:270/R:220mm。試乗車のタイヤはCEATのZOOM PLUS。リアショックは6段階のプリロード調整が可能。

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センタースタンドは標準装備。ロイヤルエンフィールドにとっては当然のことかもしれないが、クルーザー界では貴重な機構だ。

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