【KTM RC 390 試乗記】多くの人を受け入れるライトウェイトスーパースポーツ

掲載日:2021年09月29日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力・写真/KTM JAPAN 取材・原稿/和歌山 利宏

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KTM RC 390

フルチェンジされたRC390は、よりスポーティに、よりレーシーになっていた。と同時に、オールラウンダーとしての性格を堅持しており、その点で独自性が際立っていた。

街乗りコミューターを思わせつつも
その実はレーサーレプリカ

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エンジンが373ccの単気筒であることを聞けば、多くの人は、テイスティかつ軽量スリムで、操りやすいストリートスポーツを連想するだろう。それがマニアックであるか、お手軽バイクであるかはコンセプト次第にせよ、ジャケットとジェット型ヘルメットが似合うバイクをイメージしがちではないかと思う。

しかし、この新型RC390には、あくまでもレザースーツとフルフェイスヘルメットを求めてくるレーシーさが根底にある。その意味で、多くの軽中量級シングル車とは性格を異にしている。

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十分なまでに街乗りバイクとしての資質を持ちながら、造り込まれたポテンシャルを引き出すことを旨とする純粋なスポーツなのである。

KTM RC 390 特徴

一般的な軽中量級スポーツとは一線を画す
KTMならではのスポーツ性

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ライディングにおいてスポーツとは、速く走れるマシンに身を任せることではなく、速さをいかに引き出すか、のはずである。そう考えたとき、RC390のハンドリングはまさにスポーツである。

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従来型から9.2kgも軽量されて運動性能が高まっているにも関わらず、ハンドリングにはミドルクラス以上のスーパースポーツにも通じるレーシーさが漂っている。ヒラヒラと向きを変えていくようなお手軽感はなく、安定感があって、手応えがしっかりと伝わってくる。

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しかも、適度の抵抗感があって、コーナリングでは、やるべきことをしっかり認識できる。やるべきことをしっかり組み立てることができると言っていい。そればかりか、やるべきことをしっかりこなすほどに、うまくコーナリングをこなすことができ、サーキットを速く走れるようにもなる。

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お断りしておくが、クセがあるとか、マシンが走り方を強要してくるわけでなく、あくまでも素直。マシンなりに向きを変えていくような軽薄さはないということだ。おかげで、ワインディングでも、コーナリングの面白さを実感しやすいのである。

KTM RC 390 試乗インプレッション

エンジン性能をいかに引き出すか
バイク本来の醍醐味を思い出させてくれる

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軽量級であっても、昨今の多くのモデルには、日常域でも十分な動力性能がある。でも、373cc単気筒から44psを絞り出すRC390の場合、高回転まで回して馬力を稼がなければならないことも事実で、低回転域は犠牲にならざるを得ない。

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そのため、スポーティに走るには6000rpm以上、レブリミッターが作動する10500rpmまでをキープしなければならない。公道でも、3000rpmでスムーズに巡行することができても、加速が要求される状況ではギヤダウンして回転を上げてやることになる。

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でも、大排気量に慣れて、出力の上澄みをすくい取るような走りが当たり前になっていると、これは本来のバイクを思い出させてくれるし、実に新鮮でもある。コーナーの手前で適切なギヤに落とし、向きを変えたら早いタイミングでスロットルを開け、上限までを使い切ってシフトアップしていく。そして、うまくいくほどにシフトアップポイントが手前になっていく。こうやって性能を取り出していくこともスポーツだ。

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日常性に関して付け加えておくと、ライディングポジションは全く精鋭化していないし、荒れた路面での走破性も抜群で、ハンドル切れ角も大きく、あくまでもスポーティな街乗りバイクとしてのスタンスを崩していない。その意味で、独自性が放たれているのだ。

KTM RC 390 詳細写真

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ライディングポジションはスーパースポーツとしては快適指向で、日常使用も厭わない。従来型から燃料タンク後端が8mm後方に、4mmシートが高くなり、このことが微妙にハンドリングに影響していると思われるが、もともとが快適指向だけに、そのことに気が付くことはない。ハンドルは10mm低くセット可能。身長161cmで両爪先が接地する。

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クラッシュ時のダメージをメイン側に及ぼさないことや生産性を考え、リアフレームは別体式となった。メイン、リア合わせ、1.5kgの軽量化を達成している。縦曲げ剛性を同等に、横曲げと捩じり剛性を落とす方向で、剛性バランスの最適化が図られた。

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重力ダイキャスト製の前後ホイールは、前後それぞれ1.7kg、都合3.4kgも軽量化された。重力ダイキャスト製で、徹底した肉厚の最適化が図られている。また、インナーブラケットが廃されたフロントディスクは960g軽量で、バネ下重量は4.4kg近く軽量化されたことになる。

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エンジンは従来型から基本を受け継ぎながら、ユーロ5に適合させている。エアボックス容量が40%大きくされたこともあって、最大トルク値は高められている。スロットル・バイ・ワイヤ式である。

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WP製のφ43mm径倒立フォークは、左側で圧側、右側で伸側減衰力を発生、それぞれ調整機構をフォークトップに備える。ストロークは従来型よりも5mm短い120mmで、このこともレーシーなハンドリングに貢献していると思われる。

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リアサスはリンクレス式モノショックで、WP製ショックはプリロードと伸び減衰が5段階に調整可能である。リアホイールトラベルは従来型やベースとも言えるデュークと同じ150mmで、走破性も高い。

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シート下の重心近くにエアボックスを、その上側にバッテリーや電装品類を配置。4リットル以上増となった燃料タンクをその前方に置く。これはテストで煮詰められた結果で、従来型は、バッテリーが前部、燃料タンクが後部にあった。

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メーターには5インチTFTカラーディスプレイを採用。ABSやトラクションコントロールなどの設定画面も配置される。周囲光によって明るさが自動的に調光される。ブルートゥースやKTMアプリとの接続も可能である。

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シートは厚みがあって、軽量級であることを感じさせないほど快適。そのため、シート高は4mm高い824mmとなった。滑りにくい材質のシート表皮も高品位である。

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アルミ鋳造製のスイングアームは従来型から受け継がれる。フレームの外側に支持されるアウターピボット式だ。2次減速比は15/45から15/44になった。軽量化のため、マフラーはエキパイがステンレス製、サイレンサーはアルミ製となった。見た目と音質のレーシーさにも拘ったという。

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新型にはアップダウン両利きのクイックシフターが装備される。リッタークラスの装備が軽量クラスに落とし込まれた印象だ。こまめなシフトが要求されるだけに重宝する。

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ヘッドライトも両サイドのデイライト・ランニング・ライトもLEDとなった。マスク部とウィンドスクリーンが一体化、フロントビューも斬新である。ウィンドスクリーンはかなり小ぶりだ。

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燃料タンクは前部に配置され、容量は9.5リットルから13.7リットルに増量された。カバーで覆われたタンク後部にバッテリーや電装品類が収まっている。シートからタンク後部に掛けてのカバーを取り外すことで、整備性にも留意される。

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シャープで小振りのテールライトもLED式である。リアフェンダー回りもスーパースポーツらしく削ぎ落され、レーシーさを高めている。サーキット走行での取り外しも考慮されている。

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