【ヤマハ MT-07 試乗記】軽くて扱いやすいミドルスポーツがさらに魅力と走りの楽しさを増して新登場

掲載日:2021年09月06日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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YAMAHA MT-07

2014年に発売されたMT-07は、軽量でコンパクトな車体に270°クランクを持つ688ccの水冷並列2気筒DOHCエンジンを組み合わせ、高い機動性と乗りやすさで瞬く間に人気モデルとなった。2018年のマイナーチェンジを経て、このほど2021年7月に2度目のマイナーチェンジを敢行して発売された。ますます魅力を高めたその走りや機能を、実際に試乗して確かめてみた。

ヤマハ MT-07 特徴

大胆にイメチェンしたフロントマスク
同時に各部も大幅にリファイン

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ヤマハMTシリーズのMTとは、マスターオブトルク=人とバイクの一体感を表すワード。そのMTシリーズの中でCP2(クロスプレーン2気筒)のエンジンを搭載しているのがMT-07だ。ヤマハの唱えるクロスプレーンコンセプトとは、ピストンやクランクシャフトの動きから生じる慣性力を除き、燃焼トルクだけを効率良く引き出す設計思想のこと。CP2エンジンを搭載するMT-07は、エンジン内の爆発するトルクを感じられる気持ちのいい走りと、コントロール性の高さのバランスがちょうどいいモデルとして人気を得続けてきた。

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2021年のマイナーチェンジでどこが変わったのかを順番に見ていこう。まず手が加えられたのがエンジンだ。270°クランク688ccのエンジンは基本的に前モデルと同じだが、ECUの仕様変更やフューエルインジェクションセッティングの最適化、排気系の仕様変更(2into1エキパイ・マフラー一体型を採用)などで、平成32年排出ガス規制(欧州ユーロ5相当)に適合。あわせて低速域でのレスポンス特性の向上や、2速、3速での再加速時のダイレクト感向上などを成し遂げている。また、最新の音響解析技術により排気系を最適化し、特に低速、アクセル低開度時の音色を創り込んで、パルス感のあるサウンドを実現したという。

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フロントマスクをはじめ、デザイン面にも大きな変化があった。ヘッドランプには、ハイ/ロービームを一体化したバイファンクションLEDヘッドランプを採用。その左右に独立して配置されたLEDポジションランプは「Y」字をモチーフとしたもので、MTシリーズ共通のアイコンとしながら、小型化と先進性をアピールしている。また、フューエルタンク周りのデザインも一新され、フレームカバーをアルミから樹脂製に変更、ニーグリップ部の形状も見直したほか、全体のスタイリングもエアフローの動きを取り込んだダイナミックなものとなっている。

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ハンドルバーには新たにアルミ製のテーパーバーを採用。左右の幅を32mm広げ、高さも12mmアップされている。これは大柄なライダーにもフィットするための変更だが、高めのポジションとなったことでよりゆったりとした乗車姿勢が取れるようになった。このほかにもネガティブ表示のLCDマルチファンクションメーターの採用やフロントブレーキディスク径の拡大、MT-09と同型のリアブレーキディスクの採用、標準装着タイヤの変更など、全体にわたってリファインが図られている。

ヤマハ MT-07 試乗インプレッション

ヒラヒラと操れる楽しさは健在
さらに走りがバージョンアップ

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MT-07に実際にまたがってみると、車体は前モデルと同様にスリムかつコンパクトだ。184kgと軽めの車重であり、シート高も805mmと高くはないので、乗る前から身構えるようなこともない。実際に走り出しても、車体の軽さもあってか、それほどエンジン回転を上げなくてもググッと前に加速していく。シティランでは、特に2~4速ギアを使った中速域までの走りが小気味いい。何がそんなに気持ちがいいのかというと、エンジンの爆発の力がしっかりと路面を蹴るのがわかる……というと大げさだが、アクセルワークに応じてストレートにエンジンがパワーを増し、それがリアタイヤにしっかり伝わるのが、とても素直に伝わってくるのだ。その際、決して強烈ではないが確かな鼓動感とともにハーモニーを奏でるのが排気音だ。こちらも決して大きく迫力のある音ではなく、どちらかといえばマイルドなほうだと思うが、耳からとともに体で感じるとでも表現すればいいのか、とにかく走りの気分を高めてくれるチューニングとなっている。

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続いて少し郊外の、ちょっとしたワインディングコースへとハンドルを向けた。街中での走りよりも少し速度のアベレージは上がったが、やはり軽い車体をヒラヒラとさせながら走るのが楽しく、気持ちがいい。前モデルに比べてニーグリップ部分のパーツ構成が改良され、よりマシンとライダーが一体化しやすいのに加え、幅が広げられ、高さもアップしたハンドルバーは倒し込みの際に制御がしやすくなった印象だ。それでいてライディングポジションは適度に状態がリラックスできる自然なもの。

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これらのトータルコンディションから生み出されるライディングフィールは、しゃかりきになって飛ばさなくても、マシンとの一体感や鼓動感、そして爽快感を感じられるものとなっている。実際に乗ると車両重量から想像するイメージよりも、体感的にははるかに軽く感じるのが不思議だ。

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ABSのほかは、トラクションコントロールやモード切り替えなどライディングをサポートする電子デバイスは搭載されておらず、走りは「素」の状態に近いもの。だが、きっとそれがいいのだ。派手なスペックではないが、レギュラーガソリンで走れて、コストパフォーマンスも高い。スピードを出さなくても乗って楽しく、バイクを操る気持ちよさを味わわせてくれる……まるで履きなれたジーンズのようにカジュアルでプリミティブなバイクに徹していることこそが、MT-07の個性であり、最大の魅力だと感じた。

ヤマハ MT-07 詳細写真

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ヘッドライトはロー/ハイを一体化したバイファンクションLEDを採用。Y字をイメージしたポジションランプやウインカーなど灯火類はすべてLEDとなった。

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メーターは新たにネガティブ表示のマルチファンクションタイプを採用。速度やギアポジションなどすべての表示が大きめで、直射日光下でも見やすい。

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左側のグリップ。ヘッドライト上下切り替えの右にあるのはメーター内の表示切り替えスイッチだ。前側にはパッシングスイッチを配置。

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右側グリップ部にはキルスイッチ一体型のスターターボタンとハザードスイッチを備える。

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シートは前後分割タイプ。前席はスリムで薄型だが、見た目から想像するよりクッション性は良好だ。

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車載工具はリアシートの裏側と、別体の袋の中に分かれて収納されている。ナイロンのベルトは引き出すと荷掛けフックになる。

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フロントシートはボルト1本で外すことができる。バッテリーやヒューズボックスへのアクセスは簡単だ。

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シート裏から荷掛け用のナイロンベルトを引き出した状態。袋状になっているので、コード類のフックを引っ掛けることができるが、位置的には微妙だ。

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タンクカバーやニーグリップ部のパーツも見直され、ボリューミーで迫力を保ちつつ、マシンを膝で挟みやすくなっている。

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前から見ると、タンクカバーの形状がエアフローを考慮したものだとわかる。ハンドルバーはアルミ製のテーパータイプで、左右幅を32mm、高さを12mmアップした。

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従来型をベースにしたCP2エンジンは平成32年排出ガス規制に適合。ECUの仕様変更やFIセッティングの最適化に加え、新型の2into1マフラーを採用している。

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車体左側、タンデムステップホルダー上部にはヘルメットホルダーを装備。ツーリング先の観光地などでは重宝する。

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チェンジペダルは長めのリンクを介している。ステップには滑り止めのラバーを標準で装備。

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フロントのディスクブレーキ径は282→298mmへと大径化され、同時にフォークのアウターチューブの形状も変更された。

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リアのブレーキディスクはMT-09と同じものを採用。新たにタイヤは前後ミシュランのロード5となった。

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テール周りはシンプルだがシェイプされたデザイン。全灯火類がLED化され、スポーティなイメージが高まった。

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テスターは身長170cmで足は短め。MT-07のシート高は805mmで、シートも細めなので片足だとしっかり接地し、足つき性自体は悪くない。ただ、足をまっすぐ下ろしたところにステップがあるため、慣れるまでは戸惑うかもしれない。

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