【カワサキ メグロK3 試乗記】往年の名車に通じる資質は備わっているのか?

掲載日:2021年04月05日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/伊井 覚

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KAWASAKI MEGURO K3

ヨーロッパ勢に通じる姿勢で
バリエーションモデルを次々と投入

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日本市場で多くのライダーから愛されている一方で、欧米では大人気獲得には至っていないようだが、カワサキが1999年から発売を開始した空冷バーチカルツインのW650/800シリーズは、近年のネオクラシックブームの原点である。もっともカワサキはそれ以前から、クラシックなテイストを感じるモデルとして、ゼファーシリーズとエストレヤを販売していたものの、21世紀に入ってネオクラシック市場に参入したライバル勢の多くは、何らかの形でW650/800を意識していたに違いない。

ただし現在のW800は逆にライバル勢、具体的にはヨーロッパ勢からの影響を受けているように思う。と言うのも、かつてのW650/800は、ハンドルやカラーで差異を設けたことはあっても、基本的にはベーシック仕様の1機種のみだったのだが……。2019年から発売が始まった現行モデルは、豊富なバリエーションモデルを設定するヨーロッパ勢の手法を踏襲するかのように、第1弾としてストリートとカフェを同時発売し、約9ヶ月遅れで注釈ナシのベーシック仕様を追加。そしてシリーズ第4弾として、今春からはメグロK3の発売が始まったのである。

カワサキ メグロK3 特徴

外観には特別な雰囲気を感じるものの
基本はベーシック仕様+大アップハンドル

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メグロK3の説明をする前に、まずは現行W800シリーズの各車の差異を説明しておこう。と言ってもエンジンや吸排気系、フレームなどの構成は全車共通である。では何が違うのかと言うと、前輪、ハンドル、シート高。まず前輪については、ストリートとカフェが18インチ、ベーシック仕様は19インチで、ハンドルは、ストリート:大アップ、カフェ:M字型ダウンタイプ、ベーシック仕様:セミアップを採用。シート高は、ストリートのみが770mmで、カフェとベーシック仕様は790mmだ。

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そしてそれらを踏まえたうえで、メグロK3の構成を観察すると……。ストリートと共通の大アップハンドルが目を引くものの、19インチの前輪や790mmのシート高を含めて、基本構成はベーシック仕様と同じである。とはいえ、銀鏡塗装+自己修復機能を持つハイリーデュラブルペイント仕上げの燃料タンク、往年のメグロ製を再現した立体エンブレム、リアショック上部のカバー、ベベルギアカバーに施された赤いペイントなどは、メグロK3ならではで、このモデルを実際に見たら誰だって、兄弟車とは一線を画する特別な雰囲気を感じるはずだ。

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ところで、往年のW1シリーズの前身として1965年に登場したK2は、名門メグロ(創業は1924年で、1950年代までは日本の2輪市場をリード)を吸収合併したカワサキが、初めて手がけた4ストビッグバイクである。もっともK2の基本設計は、1960~1964年にメグロが販売したK1を踏襲していたものの、自社の名を冠するにあたって、カワサキはパワーユニットを中心とする大改革を敢行。そう考えると、K2は同社の歴史を語るうえで欠かせないモデルなのだが、まさかほぼ半世紀を経てK3が登場することになるとは、K2やW1シリーズの開発に関わった技術陣は、夢にも思わなかっただろう。

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カワサキ メグロK3 試乗インプレッション

兄弟車とは意外に異なるうえに
往年のメグロK2を思わせる乗り味

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前述したように、メグロK3の基本構成は既存のベーシック仕様と同じである。だから当初の僕はこのモデルに対して、コレといった期待はしていなかった。でも実際に体感したメグロK3は、ベーシック仕様を筆頭とする他の兄弟車とは意外に異なる乗り味で、往年のメグロK2と似ていなくもなかったのだ。

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僕がそう感じた一番の原因は、穏やかで優しいハンドリング。と言ってもW800シリーズのハンドリングは、もともと穏やかで優しいのだけれど、フロント19インチ+大アップハンドルの効果で、メグロK3は他の兄弟車よりその傾向が顕著。ムキになって飛ばすのではなく、周囲の景色を眺めながら、淡々と走り続けたくなって来る。

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また、乗車中の頭の位置が適度に後ろになったせいか、カフェやベーシック仕様と比較すると、メグロK3は排気音がよく聞こえるような気がした。もちろんこの印象は、同じ大アップハンドルを採用するストリートも同様だと思うけれど、メグロK3はハンドリングと排気音の聞こえ方のバランスが、何とも絶妙なのである。

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往年のメグロK2を思わせるのは、エンジンのスムーズさだ。もっともバランサーを装備しない1960年代以前のバーチカルツインは、振動が過大というのが定説で、カワサキがK2の後継として1966年から発売を開始したW1シリーズも振動はそれなりに大きかった(北米市場では大問題とされた)。ただし、排気量が624ccに拡大されたW1シリーズと比べると、実は497ccのK2は意外にジェントルな特性だったのである。

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もちろん、スムーズでジェントルだから似ているというのは、我ながら少々短絡的だけれど、バランサーで振動を適度に抑制したメグロK3を味わっていると、もしかしたら1960年代にK2を開発した技術者は、こういうエンジンフィーリングを求めていたのかも? という気がして来る。そう考えると1999年から発売が始まったW650/800は、そもそもW1シリーズではなく、メグロK2、そしてK1に近いモデルだったのかもしれない。

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カワサキ メグロK3 詳細写真

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LED式の灯火類は兄弟車と共通。ヘッドライトステーはストリートやカフェと共通のブラック。メーターの前方には、標準装備となるETC2.0用のアンテナユニットを設置。

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ワイドなアップハンドルはグリップ位置がかなり手前なので、一般的な体格のライダーなら、乗車時の上半身はほぼ直立状態になるはず。

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文字盤がホワイト/ブラックのメーターはカフェがベースのようだが、速度計の下部に記されたWの文字は、メグロに変更。ステンレス製ベゼルには黒色酸化皮膜処理を施工。

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シンプルでクラシカルな左右スイッチボックスは、兄弟車と共通。ブレーキ/クラッチレバーの基部には、4/5段階の位置調整アジャスターが備わる。

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ストリートを除く現在のW800は、グリップヒーターを標準装備。温度調整は3段階。

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ガソリンタンクには銀鏡塗装+自己修復機能を持つハイリーデュラブルペイントが施される。メグロの立体エンブレムは熟練した職人による手作り。

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シートの基本構成はストリートやベーシック仕様と共通だが、プレーンレザー+白パイピングの表皮は専用設計。シートレールの後方にはアシストグリップに加えて、片側2ヶ所ずつの荷かけフックが備わる。

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ステップラバーは昔ながらの丸型。バンク角はあまり多くはなく、峠道でソノ気になって飛ばし始めると、バンクセンサーがすぐに接地する。

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1999年にW650を世に送り出して以来、長きに渡って熟成を続けて来たOHC4バルブ空冷バーチカルツインは、上側ベベルギアに赤いペイントを施すことで、特別な雰囲気を構築。

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インジェクション+スロットルボディはケーヒン製。シリンダーのみをブラック塗装としたエンジン外観の仕上げは、ベーシック仕様と共通(ストリートとカフェはほぼ全体がブラック)。

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スチール製前後フェンダーは、ストリートやカフェと同様のブラック仕上げ。フロントフォークはφ41mm正立式で、純正タイヤはシリーズ全車に共通のダンロップK300GP。

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リアショック上部にはクラシックなイメージを高めるカバーを追加。ブレーキはF:φ320mmディスク+片押し式2ピストン・R:φ270mmディスク+片押し式2ピストン。

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ストリートとカフェでは省略されたものの、ベーシック仕様とメグロK3はセンタースタンドを標準装備。

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