掲載日:2021年02月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
SUZUKI GIXXER 250
スズキのグローバルモデルとして、軽量スポーツカテゴリーを担っているのがジクサーシリーズだ。先に発売された150ccに続いて、2020年4月にフルカウル仕様のジクサーSF250、6月にはネイキッドモデルのジクサー250が発売された。新設計の油冷エンジンを搭載した両モデルのうち、今回はより軽量でコンパクトなジクサー250に試乗、その魅力に迫ってみた。
ジクサー250の基本的な車体構成は弟分であるジクサー150と共通なため、パッと見ただけでは見分けがつかないほどよく似ている。薄型で斜めにスラントがつけられたヘッドライトと、多くのパネルによって複雑な造形を与えられたボディは、近未来的なイメージを持ちながらどこか有機的な野性味をも感じさせるデザインだ。
150との違いを中心に250の仕様を見てみよう。まずもっとも違うのはエンジンだ。単なる排気量の違いではなく、150が空冷4サイクル単気筒SOHC2バルブ154ccなのに対して、250は油冷4サイクル単気筒SOHC4バルブ249ccとなっている。この油冷エンジンは新規に開発されたもので、燃焼室の周辺にオイルの通路を設け、冷却ファン付きのオイルクーラーによってエンジンを冷やすという「SOCS(スズキ・オイル・クーリング・システム)」を採用している。最大出力は150の14psに対して250は26psと、実に190%アップ。250ではボア×ストロークがショート気味となり、より高回転まで回せるスポーティな味付けとなっている。
フレームは150用をベースにパイプの肉厚を0.3mmアップし、ねじれ剛性を12%高めている。また、スイングアームについては新設計とし、角断面パイプの太さをアップしてこちらもねじれ剛性を30%高めたという。また、タイヤサイズに関しても同じ17インチながら150に対して太さをワンサイズアップしているほか、前後のサスペンションやブレーキ、ABSなどに関してもグレードアップが図られている。要するに、エンジンパワーの増大に伴って、それに見合った走りを実現するため、すべてが見直されたということになる。
トータルで比較すると、シティコミューターとしての実用的側面が強かった150に対し、250はよりスポーツライディング寄りに各部を強化され、ツーリングなども楽にこなせるマルチユースなライトウェイトスポーツ、という位置づけになるだろう。
ジクサー250はシュラウドの形状などボリュームのあるデザインだが、実際に跨ると車体はとてもコンパクトだ。シッティングポジションとハンドルの位置が近く、ストリートファイター的な乗車姿勢となっている。始動は「スズキイージースタートシステム」を装備しているのでスターターボタンをワンプッシュするだけ。アイドリングでの排気音はストトトト……とまるでビジネスバイクのように静かだ。
走り出してアクセルを開けても、トゥルルル~と排気音はあくまでおとなしい。しかし、音に反してエンジンは低速から粘りがあり、けっこうパワフルだ。シティランではエンジンを4000~6000回転程度にキープすれば、非常に小気味いい走りを見せてくれる。新型の油冷エンジンは、吹け上りが非常にスムーズで振動も少ない。小回りやUターンなどもやりやすいので、混雑する道路でのストレスや疲れも少ない印象だ。
身長170cmの筆者の体格だと、タンク下のカバーに脚がぴったりとフィットしてニーグリップがとてもしやすく、軽量な車体をヒラヒラと自在に操れる感覚が楽しい。サスペンションは前後ともに良く動き、衝撃吸収性とコシや粘りのバランスがちょうどいいため、中高速コーナーでの旋回も難なくこなしてくれる。まさにライトウェイトスポーツのお手本のようなライディングが可能なのだ。
高速道路に乗り入れても、エンジンの振動は少なく、レッドゾーン付近までストレスなく吹け上がる。車体剛性が高く、頑張れば120km/hでの巡航も出来なくはない。が、エンジンに負担がかからず快適なのはやはり100km/h前後といったところ。にしても、高速走行では150よりもかなりの余裕を感じることができた。これだけの走りや装備で税込みメーカー希望小売価格が45万円を切るのだから、コストパフォーマンスは驚くほど高い。ビギナーからリターンライダー、そして大型からのダウンサイジングを考えているベテランライダーまで、多くの人に受け入れられる素質と魅力を持ったマシンと言えるだろう。