掲載日:2019年12月10日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
HONDA CB250R
CB250Rのほか、CB1000R、CB125Rという新世代CBシリーズの外観デザインは、ギュッと詰まった凝縮感のあるダイナミックな台形型プロポーションで統一してあるのが特徴だ。また、薄型の丸いヘッドライトや美しい造形のタンクなどもイメージアイコンとして共通している。
CB250Rを目の前にして思うのは、その上品なたたずまいだ。ほかの新世代CBシリーズもそうだが「単に高級感がある」という言葉では表しきれない、工芸品のような美しさがあるのだ。そこには「伝統あるCBの名を冠しているからには、排気量に関係なく、だれもが納得する高品質なマシンを提供するのだ!」という、ホンダの理念とプライドが込められているように感じる。
2019年モデルでは全カラーでフロントフォークがブロンズカラーになり、さらに上質感が増している。ちなみに今回試乗した新色のマットブルーと継続販売のレッドに関しては、ホイールもブロンズカラーとなり、落ち着いた雰囲気に磨きがかかっている。
しかし2018→2019モデルにおける変更点で一番のポイントは、外装ではなく「足つき性の向上」にある。スペック上ではシート高が800→795mmと5mm低くなり、それに伴って全高が1,050→1,045mm、最低地上高も151→147mmに変更になっている。あわせてフロントサスペンションはスプリングのレートを変更、リアサスペンションはショックユニットが新しくなるなどセッティングが見直された。また、ステップがラバーのないタイプに変更されている。これらを合わせることで、トータルとして足つき性がかなり改善されているのだ。
ちなみにABSなしモデルが廃止され、すべてABS付きとなった。このABSはIMU(車体姿勢推定システム)を備えており、急制動の際にリアホイールの浮き上がりを防ぐ効果を高めるなど、より緻密な制御が可能となっている。
データ上でシート高は5mmダウンしているが、見た目ではほとんどわからない。ところが実際に跨ってみると、サスペンションのセッティング変更が効いているらしく、1Gでの沈み込みが前モデルよりも明らかに大きい。それにプラスしてステップがラバーなしのタイプに変わったことにより、足が下ろしやすくなった。これはデータ以上に足つきが良くなった、と実感できる。ハンドルは少々広めだがポジションはごく自然なもの。普段はリラックスして乗れて、いざとなったら抑えがきくというオールマイティさを持っている。
走り出してまず感じるのは、車体が軽く動きも軽い、ということ。車体構成がCB125Rとほぼ同じでコンパクトであり、車両重量は144kg。エンジンだけが250ccになったと考えると、運動性能が抜群なのは明らかだ。それにしても、これは混雑する都市部のライディングなどで非常に有利で、特に意識することなくヒラリヒラリと車体を自在に動かせるので扱いやすく、ストレスや疲れが格段に少ない。しかも、軽いからと言ってフワフワしていたり、不安定な部分があるかというと、それが全くないのだ。41mmという大径の倒立フロントフォークの効果か、むしろ乗り味はカッチリとしていて、走れば車体剛性の高さがわかる。
2018モデルでは路面のギャップなどを拾うとコツコツした感じがよく伝わり、リアサスも路面の荒れを吸収はするものの少々硬く、時にバタつく感じもあったが、2019モデルではよりしなやかさが増し、落ち着いた乗り味にシフトしたように感じられる。横風が強めの高速道路でレーンチェンジした際も、まるでタイヤが地面に張り付いているかのように、車体が一切ブレることなく自分の思ったポジションにピタッと決まったのだ。まるで大型バイクのような安定感に「これは本当に250ccなのか?」と驚いたほど。
エンジン特性は素直で、街中を走るなら3~4,000回転でも十分なトルクが得られる。スペック的には同様のエンジンを持つCBR250Rよりも1kw(2PS)のダウンだが、むしろ一般道を走る際には低中速の力強さが増したように感じられる。それに、ちょっと気合を入れて走ろうかなという際には6,000回転以上回せばパワフルさがグンと増すので、かなりキビキビとした走りが楽しめる。峠道などでは車重の軽さを活かし、かなりの戦闘力を発揮するはずだ。2019年モデルになってさらに乗りやすく進化したCB250Rは、初心者のファーストバイクとしてオススメなのはもちろん、様々なマシンを乗り比べてきたベテランライダーの所有欲をも満たすクオリティの高さとトータルバランスの良さを持っている。