KTM 690 DUKE(2016)
KTM 690 DUKE(2016)

KTM 690 DUKE(2016) – 意外な広守備範囲を得たシングルスポーツ

掲載日:2016年01月07日 試乗インプレ・レビュー    

レポート/鈴木 大五郎  写真/KTM Sportmotorcycle AG  記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです

KTMの690DUKE/Rが5代目へとモデルチェンジ。ユーロ4に対応しつつ、パワーはさらに向上。トラコンやモード切替など、安全性も機能性もさらに磨きがかけられた!

意外な広守備範囲を
得たシングルスポーツ

KTMのDUKE(デューク)は1994年に初代が登場している。元々は「オフロードバイクメーカーがオンロードモデルを作ったらどうなる?」というところがスタートで、620ENDUROをベース(初代ではその80%を流用)とし、モタードモデルとしてまず成立した。

1999年に水冷4バルブのLC4エンジンが640cc化し、キャストホイールを履いてDUKEⅡとなり、2008年にはLC4エンジンの構成が一新されると同時に645cc化。車名もこの時に690DUKEとなる。そして2012年には現在のようなロードスポーツ的スタイルとなり、エンジンはツインプラグ化。この現行型=4代目が扱いやすくなったことで、3代目までのマニアックなモタードという評価が、万人受けする純ネイキッドへ、というように変わった。

そんな690DUKE/Rが、2016年型でアップデートを受けた。この5代目、どうなったのだろう。パッと見の印象はカラーリングが変わったのかな? という程度。スペックなども合わせて細かく見ればシート/外装やホイールの形状、トレール量、メーター等も異なる。エンジンは当地の排出ガス規制、ユーロ4に対応しつつ5ps出力を高めたというが、そのあたりはセッティングでできることでは? とも思った。

KTM 690 DUKE(2016)の試乗インプレッション

しかし、その認識は間違っていた。シングルエンジンを長年手掛けてきたKTMのこだわりがあったのだ。排気量は同じながら、ボア&ストロークが102×84.5→105×80mmへと変わっている。これでピストンもコンロッドも変わるわけで、シリンダーヘッドもクランクもミッションも…と、ほぼ全面変更だった。

そうなれば話は違ってくる。どう変わっているか、きちんとお伝えしないといけない。始動してみよう。10cmを超える大きな径のピストンが上下運動を繰り返していると考えると、もっとドカンドカンと鼓動感や燃焼感を感じさせるかと思いきや、軽やかで静かな印象。メカニカルノイズが多めと言われることがあった従来型からすれば当然静かで、ルーツがレース用エンジンだったとは、もはやイメージできない。ヘッドまわりにはバランサーを備え、嫌な振動も効果的に打ち消している。

KTM 690 DUKE(2016)の試乗インプレッション

そんなスムーズさもあって、5psのピーク出力向上は実感はしにくい。だが、確かに全域でパワフルになっていて、ちょっとしたコーナーの立ち上がりや追い越し加速という場面で恩恵が感じられる。パワーモードセレクトによる味付けも絶妙で、スポーツモードを選択すれば新エンジンのポテンシャルがフルに味わえるし、ストリートやレインのモードでは、大人しく手なずけることも可能だ。大排気量シングルエンジンの守備範囲がこんなにも広かったか、と改めて驚くこととなった。

そんなエンジンを受け止める車体はとにかく軽快。それは慣性の少ないシングルエンジンだからこそという面もあるだろうが、それを生かす軽さとコンパクトさが効いている。イージーでクイックに動く一方で、それが手応えのない軽薄さとは異なり、不安定な挙動はまったくない。トレール量を4mm増やして安定性を高めたことも、ここで分かった。

KTM 690 DUKE(2016)の試乗インプレッション

690DUKE Rは前後サスペンションがフルアジャスタブルになり、動きの上質さも確実に上。ステップ位置やブレーキマスター&キャリパーのグレードアップ、削り出しステム等の専用パーツ採用で、よりスポーティな走りを受け止める設定。アクラポヴィッチ製サイレンサー、エアークリーナーボックスの形状等によりエンジン出力も2馬力高く、トラコン、リーンアングルセンサーを用いたコーナリングABS等も標準装備だ

またこの5代目ではオプションとしてトラクションコントロールが装備できるが、パワーと車体のバランスが素晴らしく、お世話になるような状況はほぼなかった。690という排気量では、リッタークラスのように積極的に使うことは少ないが、いざという時に作動してくれる安心感があるのは好ましい。

奇しくも今回の試乗コースは、4年前の現行型発表時と同じ。それゆえ5代目での安全性や快適性の高まりも明確に理解することが出来た。もちろんエキサイティング感や充実感の高さは引き継がれている。トータルパフォーマンスは、外見の変化を大きく超えて、高まっていたのだ。

KTM 690 DUKE(2016)の試乗インプレッション

レーサー然とした無駄のない構成

基本的な車体まわりは従来型を踏襲するが、フォークオフセットを28mmにまで減らして、トレール量を4mm増やし、スタビリティを向上させた。Rではサスのグレードアップのみならず、ストロークも15mm長い150mmとし、フレーム&ホイールカラーはSTDが黒に対し、Rではオレンジに

KTM 690 DUKE(2016)の詳細写真は次ページにて

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