ロードライダーインプレッション~ホンダ CBR1000RR ABS CBR600RR ABS~

掲載日:2010年05月31日 特集記事    

記事提供/2009年5月1日発行 月刊ロードライダー 5月号
Report/和歌山利宏   Photo/徳永 茂

この記事は「ロードライダー2009年5月号」に掲載されたものです。
HONDA CBR600RR<ABS> & CBR1000RR<ABS>

電子制御ABSを装備し安全と自信を与えるSS

すでにホンダは昨年の夏に、開発中の電子制御ABS+CBSを装着したCBR600RRに試乗する機会をジャーナリストに与えてくれたが、今回、'09年型としてCBR600RRと1000RRへの装着車が 市販されることになった。その完成度の高さと有効性には、絶賛せざるを得なかった。

ええっ!雨の中でも
こんなにブレーキ効くの

'和歌山利宏:もてぎでの試乗会はあいにくの雨。おかげでABS試乗日和だったというのは負け惜しみ。スーパースポーツ は、いい天気の下で思い切り走りたかったに決まってます

正直言って衝撃である。路面がしっかり濡れている状況でも、ここまでブレーキが効くとは信じられなかったのだ。それにプロジェクトリーダーの工藤さんから「私を信じて思い切りブレーキをかけてください」と言われでも、本能的にそんなことできるわけがない。

それでも、徐々にレバーを強く握っていくと、身体に強い減速Gがかかってくるのが分かる。ええっ、こんなに雨の中でもここまでタイヤが喰い付いて、ブレーキが効くの!? といったところである。

普通のブレーキの場合だったら、前後のどちらかが滑ったのを察知し、そこで入力を弱めてしまうが、それは前後バランスが好ましくなくて滑らせてしまうだけで、このように理想的配分でブレーキングできれば、ここまでの制動力を得ることができるということなのだ。そんなことに改めて気が付かされる。

たとえ力任せに握ったとしても、ABSが働くからロックすることがない。しかも、従来の機械式のように、レバーやペダルに強い振動を感じるわけでもない。ロック限界に達したときは、せいぜいレバータッチにかすかなびびりを感じる程度で、それ以上に減速Gが高まっていないと気が付くといった具合である。

もちろん、この電子制御ABS+CBSは、サーキットを攻めても威力を発揮する。完全なドライ路面ならともかく、このようなウェット路面では、ブレーキを遅らせてフルブレーキングしても、そこで滑ったときのリスクに肝を冷やすことがあるが、その点、このシステムだと、マシンを信じて安心して走ることができるのである。

 


石橋知也:昔はミニバイクEDにも参加し、現在もXR100を所有。「ラージサイズミニで125ccエンジンはいい。ダートでも遊べる。これから増えてほしいサイズだね」

そればかりか、前後が連動していることが分かっても、その弊害を感じさせない。従来の機械式前後連動CBSだと、コーナー進入時にリヤが引っ張られるように残ってしまいがちだったが、これは実に自然である。この電子制御式ではリリースの際、リヤの効きが解除されるようになっているのだ。

また、ペダル操作でフロントも効くことに変わりはなくても、フロントの効きのタイミングを遅らせるように制御されるので、コーナリング中のペダル操作でも大きく挙動が乱れることがない。コーナリングでスピードをコントロールしたり、スロットルを開きながらリヤブレーキを効かせて加速を抑えるという小技にも、対応してくれるというわけだ。

ただ、ブレーキングでグリップを良く感じても、そのまま寝かし込めば握りゴケするのは明らかだし、グリップ状態を錯覚してスロットルを開ければ大きくスライドすることになる。僕も試乗中、そんな錯覚に陥らないようにと、気分を引き締めていたことも告白しておこう。

さて、こうした新しいブレーキシステムについての印象は、600RRと1000RRの両方に通じることなのだが、ここでは国内向けの'09年型600RRそのものについてもお伝えしておきたい。

注目すべきは、新型600RRは、エンジンの随所に手が入れられ、最高出力も69psから78psに引き上げられていることである。そのため、8250rpmのトルクピークが近付いた頃にトルクが膨らむのが感じられ、そのトルクを使ってトラクションコントロールしていくことができるし、そこからしっかりパワーの盛り上がりを感じさせてくれる。

従来型だと高回転域は諦め、1000rpmぐらいで早めにシフトアップしていったものだが、新型ではレッドゾーンが始まる15000rpmまでは無理があるとしても、その近くまで引っ張って、性能を引き出せる自然な特性となっている。これなら、ワインディングでは最高の特性と言えそうな気がする。

さて、ブレーキシステムに話題を戻すと、これに慣れたまま一般的なブレーキのバイクに乗ったとき、対応できるのだろうか・・・・・・という疑問もある。でもこいつは、ネガを感じさせることなく、多くのライダーにスーパースポーツを楽しませてくれることも事実である。

CBR600RR ABS

性能特性を最適化したABS装置車

'09年型CBR600RRは吸気ポート内面に特殊処理を施し、エキパイをφ35mmから31.8mmへ小径化、インシュレーター径拡大、ピストンリングのバッククリアランスの変更、電子制御マップの改良などにより、力強い出力特性を実現。ホワイトトリコロールはABS仕様車の専用カラーである

 

CBR1000RR ABS

より幅広いユーザーに応えるABS車

'09年型1000RRは車両の基本そのものは'08年型から引継がれるが、600RR同様、コンバインドABS仕様車が追加された。ABS車のカラーリングはパールセイレンブルーの専用色のみの設定となる。なお1000RRは標準型も含めて、リヤウインカーの形状をシャープなものに変更している

Machine Details



バルブユニットは、リヤ用がシート下のピボット上方、フロント用は車両中央部力ウリング内と、マスの集中化に留意して配置される

前後キャリパーへの配管も簡素。写真はフロントの左右に分岐する部分

フロント用のパワーユニットはエンジンの前、エキパイ後方に置かれる

『 HONDA CBR1000RR <ABS> & CBR600RR <ABS> 』スペックを見る >>

 

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