【Page3】2010年シーズンを占う昨シーズンマシン総括 3

掲載日:2010年05月10日 特集記事ロードライダーMotoGPマシンレビュー    

記事提供/2009年12月24日発行 月刊ロードライダー 2月号
Report/小林祐史  Photo/富樫秀明(YAMAHA)、小野正志(SUZUK)、小林祐史(HONDA,HAYATE)、本田技研工業 

2009 JAPANESE 4MAKERS' MOTOGP MACHINES REVIEW!

 

 

全サーキットへの順応性も重要な課題

スズキは'09年モデルで車体のジオメトリーを大きく変えている。その理由のひとつはタイヤワンメーク化に備えたもので、開発陣もマシンに合わせてくれるタイヤに頼っていたことを自覚していた。そこでホイールベース、重量配分、ライダー着座位置などの見直しを図った。

 

また'09年モデルはカピロッシのコメントを考慮に入れて、TCSを変更している。具体的な変更点は機密だが、いままでは特定の状況下しか作動しなかったTCSが、さまざまな状況で微細に作動させることが可能になった。

 

エンジンでは'08年シーズンに燃費が厳しかったので、その改善とパワーアップが並行で行われ、'08年モデルより最高出力は5%ほど上がり、燃費も向上した。

 

しかしシーズンが始まると意外な弱点が浮上する。'09年の序盤戦は天候不順なレースが多かった。この環境変化に'09年モデルは敏感に反応してしまい、高いパフォーマンスを安定して発揮することが難しいという問題があらわれた。

 

そのためシーズン途中で車体変更へと踏み切ることになる。それによりパフォーマンスはレベルアップすることになった。ところが今度は、限界域でのマシン挙動が神経質な特性で、決勝などでポテンシャルをフルに使い続けることが厳しく、ライダーへの負担が増大してしまう。そして、この問題を抱えたままシーズン終了となってしまった。

 

テストコースでは判断できない環境への適応力をつけることが'10年シーズンへの課題となった。

 

吸排気バルブ、ピストン、クランクシャフ卜などのエンジン内で動くムービングパ一ツの軽量化や製造精度を高めることでパワーアップを図り、耐久性と燃費も向上させた'09年型エンジン。TCS(卜ラクション・コン卜ロール・システム)も見直し、さまざまな状況で制御できるようになった     オイルパンは写真のような深みのあるタイプが、MotoGPなどのレースエンジンでは定番となっている。クランクシャフトがオイルに浸ってパワーロスすることを防ぐのと同時に、コーナリングで深くバンクさせたときでもポンプが確実にオイルを吸い上げるために生まれた形状なのだ
'09年モデルではサイレンサーを装備した、GSV-Rのエキゾース卜パイプ   メーターパネルの下側にECUやデータロガーに加え、さまざまな機器を集中させた'09年モデル。全体重心の位置や前後タイヤへの重量配分を変えるための位置変更であり、シーズン中もこれらのバランス取りを微細に変化させながら、最適なポイントを探し続けていたという  
炭素繊維を炭素で固めたCC製ブレーキディスクとそのカーボン専用パッドは高額な反面、メンテナンス次第で1シーズン保つ耐久性を持ち合わせている。もし、MotoGPで鋳鉄やステンレスを使うとしたなら、数レースで熱による歪みなどが起こり、交換サイクルがとても早くなるそうだ   同様にCC製ブレーキディスクは高温になると制動力が高まるが、低温では逆に制動力が低い。使用頻度が低く、温度域も低いのでリヤブレーキディスクは鋳鉄かステンレスが定番となっている   '09年中盤からは、前後ホイールはマルケジーニのマグネシウム鍛造品に変更されている

 

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