【Page2】KAWASAKI Z2/750RS 点火系の基本

掲載日:2010年03月17日 特集記事KAWASAKI Z1/Z2 延命治療 Part2    

記事提供/2009年2月1日発行 モトメンテナンス No.81
Text/K.TAGUCHI 田口勝己  Photo/A.KURITA 栗田 晃  取材協力/グリーンワールド Phone 0249-41-1601

シンプルなバッテリーポイント式点火システムはトラブルが少ないことで知られているがメンテナンスフリーではない。将来的にはスペシャルパーツで点火系強化を実践するにしても、まずはその前に確実なメンテナンスを施しておきたい。このスパークアドバンサーのコンディションが重要なのだ。

 

正しく作動しなければ安定しない点火系。
まずは基本に忠実な「ポイント周辺」メンテを実践。

絶版旧車のコンディションを大きく左右するのが点火系である。様々なパーツが組み合わされ、システム作りされている点火系は、ここに紹介するポイント周り以外にも、重要なパーツが数多くある。まずはシステム強化の前に、現状最善を目指してみた。

 

絶版車の好調不調を大きく左右するのが電装系だ。その中で、特に、エンジンコンディションと深く関わっているのが点火系である。

 

Z1/Z2シリーズは、バッテリー点火システムを採用しており、点火制御は右側クランクシャフトエンドに取り付けられるポイントで行われている。現代のバイクとは異なり、このポイント式は定期的な点検整備が必要だ。

 

仮に、アイドリング不調だったり、発進加速時に今ひとつ調子が悪いような際には、キャブレターコンディションを疑うのと同時に点火系コンディションも疑ってみよう。

 

初代Zシリーズの点火系は、実にシンプルな造りであり、キャブレターメンテナンスよりも遥かに状況把握しやすい。好調不調の原因を目視確認できるのもポイントシステムの特徴だ。まずはポイント周辺のコンディション確認を行ってからキャブメンテナンスに取り掛かっても遅くは無いはずだ。

 

また、点火系に限らず絶版車の電装系トラブルに多いのがアース不良である。各電装機能部品には必ずアース回路があるが、例えば、アースをボディーに落とすフレーム側の締め付け部分がサビていると、間違いなくアース回路はサビに邪魔されてスムーズな電気の流れを得られなくなってしまう。

 

一方、フルレストア直後のバイクに多いのが、フレームペイントや電装関係をマウントする部品のリペイントによって起こるアース不良だ。塗膜によって電気の流れを遮断され、本来の働きを得られなくなってしまうのである。せっかくキレイにリペイントしたからといって、パーツを大切に扱い過ぎないことも重要。ボディーアースを落とす箇所に吹き付けられたペイント膜は確実に剥がし、金属地肌が出るまで磨いた後にアース結線するように心掛けたい。エンジンマウントに関しても同様で、フレームやエンジンハンガーのペイントが原因でアース不良を起こしているケースも少なくない。このアース不良が原因で、例えばレギュレーターがパンクしたり、最悪でコードが燃えてしまうトラブルも発生するので注意しよう。IGコイルも同様だ。

 

スパークアドバンサーのコンディションは要チェック
ポイント式、フルトランジスタ式を問わず、点火時期確認ツールとしてあると絶対に便利なのが点火ストロボだ。編集部ではパナソニック製を利用しているが、安定していて耐久性もありお勧めできる。ストロボセンサーが劣化すると、CDI点火車の信号を検知できなくなるケースもあるようだ。他社製で経験した。   ポイントカバーを取り外し、3本の締め付けボルトを抜き取ってベースプレートごとポイント&コンデンサーASSYを取り外す。抜き取り時にボルト先端付近でポイントヒールを曲げたり傷めたりしないように注意しよう。アームの変形はエンジン不調の原因だ。   スパークアドバンサーを締め付けるボルトを抜き取り、クランクシャフトエンドのオイルシールコンディションを確認しよう。この段階でオイル滲みがあったり、オイルシール周辺が汚れている場合は、オイルシール不良を疑うことができる。シール不良の場合はポイントケースごと分解し、オイルシールを交換する。
ガバナー(スパークアドバンサー)からポイントカム部分を引き抜き、ベースシャフトのコンディションを確認する。長年ノーメンテ車だとオイル切れでシャフトにサビが発生しているケースもある。サビの発生が作動性を悪くしエンジン不調になる。   ベース側の遠心レバーがスムーズに作動することを確認する。動きが硬いと点火進角がスムーズに行かなくなりNGだ。レバーの支点に潤滑スプレーを適量塗布する。吹き付け過ぎたらウエスで拭き取ろう。   ポイントカム面が磨耗していたり段差があったり、バリが発生していないか指先でしっかり確認する。磨耗があるときには、パーツを交換(アッセンブリー)した方が賢明だ。磨耗の原因はポイントヒールへの潤滑グリス不足だ。ポイントベースのオイルフェルトが乾燥していないか?復元時にグリスアップしておこう。
復元の前にベースシャフトの摺動面に耐熱グリス(シリコン系グリス)を少量塗布する。塗り過ぎると逆に作動不良の原因になるケースもあるので注意。   ポイントカムを復元する際には、先端側の上面にある刻線とベース本体の丸穴が一致する側でポイントカムを復元する。   これが目印になる。
ベースにポイントカムを復元したらスムーズに作動するかポイントカムを動かして碓認する。グリスがはみ出すようなときには塗り過ぎだと考えよう。   スパークアドバンサーを締め付けるボルトはリーマタイプになっていて、位置決め機能となる。ボルトの位置決め部分(太い部分)がサビていたり汚れているときは洗浄し、薄くグリスを塗布する。   ポイントベースASSYを復元したらポイント調整に取り掛かる。ポイント接点が歪んで点当たりになっているようなときには、事前にポイントアームをラジオペンチなどで修正し、面当たりにする。接点があまりにタダレていたり凸凹になっている際には、ポイント&コンデンサーを同時に交換する。ポイント接点が傷む原因の多くはコンデンサーのパンクによるところが大きいのだ。コンデンサーがパンクするとアイドリング時のポイントから火花がバチバチ出て、アイドリングも不安定になる。
ポイントヒールをカム山に載せた状態でギャップを0.4mm程度に調整する。左右のポイントともに調整後、クランクを正転させて点火タイミングのFマークがケース側刻線を通過したときにポイントが開き始めるように調整する。この作業は1/4と2/3ポイントのいずれでも行う。   静的調整作業を終えたらエンジン始動し、ハイテンコードクランプを1/4シリンダーのいずれかにセットし点火ストロボを刻線付近に当てる。1/4のFマークとケース側刻線が一致していれば点火時期はOKだ。   同様に2/3シリンダーも確認する。仮に、若干のズレがあり、同程度のズレの場合はポイントベースを締め付ける全体ベース部分で調整する。1/4と2/3で明らかな違いがあるときには、どちらかのサブベース調整部分でタイミング合わせる。

 

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