【Page5】 PIRELLI DIABLO ROSSO

掲載日:2010年02月22日 特集記事タイヤ最前線!    

記事提供/2009年12月1日発行 月刊ロードライダー 12月号
■Photo/富樫秀明 ■Text/中村友彦
■取材協力/ピレリジャパン株式会社 103-5418-6500 営/9~18時 休/日祝

主力タイヤメーカーに聞く、今イチ押しのタイヤ

MAKERS' CHOICE

日本でも広く認められ、着実に支持層を拡大しているピレリ。“ひとつのタイヤに2種類のコンパウンドを使う”という技術をあえて使わず、スチールベルトを中心とした内部構造によって、乗りやすさと性能の向上を実現してきた。ディアブロ・ロッソはその集大成とも言えるタイヤだ。

マルチトレッドをあえて採用せず
スチールベルトを軸とした内部構造で自然な特性を得るオールラウンダー

ピレリは、ここ数年の日本の2輪タイヤ市場で急成長を遂げたブランドだと言っていいだろう。きっかけはレースでの活躍である。レースで勝ったタイヤが人気を得るというのは普遍的な話でもあるが、今のピレリの場合で驚くべきは、その人気がジャンルを問わないことだ。実際ピレリは草レース~エリア/全日本選手権戦まであらゆる分野で活躍しており、機種で言えば250ccのVT系から最新リッターSS、さらにはツクバTOTなどで活躍するZレーサーまで、排気量やエンジン/フレーム形式を問わずに、装着率が高まっている。

「最近のピレリが高評価をいただけているのは、ピレリのレース活動がそういったいろいろな場面、いろいろな車両を想定して行われているからでしょうね。ワールドスーパーバイクでもワールドスーパースポーツでも、ピレリはトップライダーだけに的を絞った開発はしていませんから。実際、我々がサーキットに行くと、“ピレリに変えたらチャタリングが収まった”、“ディアブロ・スーパーコルサにしたらタイムが2秒縮んだ”なんていう声がさまざまなユーザーから寄せられるんですが、今のピレリにはそれが実現できる包容力が備わっていると思います」(ピレリジャパン株式会社・加藤さん)

そんなピレリを牽引しているタイヤは、スーパーコルサを筆頭とするディアブロシリーズ。ただし、このシリーズは名前の付け方が独特なためか、どれがどういう特性を持っているかがちょっとわかりづらい。

「では順に行きましょう。まずスーパーコルサは完全なレース仕様で、公道を視野に入れつつサーキットランの楽しさを追求したのがスーパーコルサSPとコルサIII。今年発売したロッソは基本的に公道がメインステージですが、既存のディアブロや同ストラーダと比べると、スポーツ性が格段に上がっています」

これらを見ていて興味深いのは、コルサIIIのリヤを除く製品に、近年のトレンドとなっている“ひとつのタイヤに2種類のコンパウンド”という手法が採用されていないこと。
「ピレリでは3ゾーンコンパウンドと呼んでいて、それを作れる技術はきっちりあるんですが、大前提として、異なるコンパウンドを使うよりも、内部構造で改善したほうが普通のライダーにはメリットが大きい場合もあると考えているんです。簡潔に言うと、タイヤ全体としての剛性は内部のスチールベルトで調整して、コンパウンドはできるだけソフトなものを全体に使う。そうすることで、十分なグリップと耐久性が両立できるし、乗り手が感じるフィーリングも自然になると考えているわけです。ロッソの発売時に新技術として発表したEPT=Enhanced Patch Technologyはその一環ですね。これは、あらゆるバンク角でパッチ=接地面積を広く取ることによって、トレッド全体にレース使用に耐えるソフトなワールドスーパーバイク直系のコンパウンドを使いつつ、ロングライフを実現するべく生まれた技術と考えてください」

またピレリジャパンでは、ピレリとメッツラーユーザーを主な対象とした(他社製タイヤでの参加も可能=要問合せ)ファントラックデイを各地のサーキットで開催している。
「バイクとタイヤをもっと楽しんでほしいというのが、ファントラックデイを始めたきっかけですが、どうせやるんだったらご家族にも参加してもらって一緒に丸一日楽しんでもらおうという姿勢ですね。そのためにサーキットを貸し切り状態にして、初心者講習やランチサービス、走行写真の撮影、開催日によってはエクストリームの実演など、いろいろな演出を準備してます。このイベントには、当然、我々メーカーサイドの人間も参加しますから、ピレリとメッツラーに興味のあるライダーは、ぜひとも参加してほしいですね」

 

'09年春発売のディアブロ・ロッソは、一般公道をメインステージとしたピレリ製ラジアルタイヤの中では最もスポーツ指向が強いモデル。フルバンク時のグリップ力を考慮してリヤのエッジ部には溝が一切刻まれていない。同社ではこれをレース用スリックタイヤに匹敵するという意味を込めて“ヌードショルダー”と呼んでいる。

 

加藤 新さん

ピレリジャパン株式会社・トレンドマーケティングアシスタント 2輪車タイヤ部門。「乗り手の技量や車種を問わずに、履けば性能向上が体感できるというのがピレリの基本姿勢なんです」

レース界で絶大な支持を得ているスーパーコルサの公道バージョンとして開発されたSPも、'08年秋に新たにピレリのラインナップに加わったモデル。パッと見の印象はレース仕様とほぼ同じだが、内部構造の見直しによって高速直進安定性に磨きをかけ、さらにコンパウンドの変更によってウォームアップ時間の短縮を実現した。

 

早くからスチールベルトを“ベルト”部に採用したピレリはここに膨大なノウハウを持っていて、巻き数や巻き間隔の変更で理想の特性を作り出せる、と

EPT=エンハンスド・パッチ・テクノロジーの概念図。ワールドスーパーバイク直系のハイグリップコンパウンドをトレッド全面に採用しつつも、接地面の最適化によって磨耗の均一化を図り、ロングライフを実現する技術だ。

 

開発の主戦場となる舞台は
ワールドスーパーバイク

かつて各タイヤメーカーが参戦していたWSBK=ワールドスーパーバイクは、'04年からピレリのワンメイクとなった。当初はこの形態を疑問視する声も聞かれたが、さまざまなエンジン/フレームに対応するべく全力を尽くしたピレリは、結果的にこのワンメイク化で大きな収穫を得たようだ。写真は'09年のファクトリー・ドゥカティ1098R+芳賀紀行選手。

バイアス界で人気を誇る
スポーツデーモン

ラジアル業界におけるディアブロシリーズほど圧倒的ではないものの、近年バイアスタイヤで着実に評価が高まっているのがスポーツデーモン。このタイヤはバイアスらしからぬと思えるグリップ力を発揮する一方で、十分な耐摩耗性も確保されているのだ。写真はこのタイヤを積極的に活用している、鈴木大五郎さんのBKライディングスクール。

 

PIRELLI DIABLO ROSSO サイズ表

フロント

リム径 タイヤサイズ タイプ 標準リム幅 許容リム幅(inch)
17inch 110/70 ZR17 MC (54W) TL 3.00 3.00-3.50
  120/70 ZR17 MC (58W) TL 3.50 3.50-3.75
  120/60 ZR17 MC (55W) TL 3.50 3.50-3.75

 

リヤ

リム径 タイヤサイズ タイプ 標準リム幅 許容リム幅(inch)
17inch 150/60 ZR17 MC (66W) TL 4.00 4.00-4.50
  160/60 ZR17 MC (69W) TL 4.50 4.25-5.00
  170/60 ZR17 MC (72W) TL 4.50 4.25-5.00
  180/55 ZR17 MC (73W) TL 5.50 5.00-5.50
  190/50 ZR17 MC (73W) TL 6.00 5.50-6.00
  190/55 ZR17 MC (75W) TL 6.00 5.50-6.00

 

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