愛しきロードスポーツ

掲載日:2008年12月15日 特集記事    

写真/渕本 智信  文/田中 善介

愛しきロードスポーツ ニッポンのロードスポーツ
Theme : 飽きられないキャラクター
30年間ずっと現行モデルであり続けた
ロードスポーツの代表格、といえば…

ヤマハSRヤマハSRでしょう! 息の長いバイクというだけなら他にも思いつくところはありますが、商業バイクでもなくミニバイクでもない「ロードスポーツ」というくくりで考えたら、SR以外に例はありません。SRはビッグシングルエンジンを搭載したスポーツバイクなのです。

 

1978年3月に登場して以来、ず~っと同じスタイルを貫き通してきたSRですが、発売当初は「最初から古クサイ」という印象で国内ではヒットしませんでした。むしろ欧米(とくにドイツ)で大ウケし、生産台数の約3分の2が海外向けで、輸出台数のほうが圧倒的に多かったという意外な事実があります。

 

排気量は年輩層へ向けた500ccと若者層向けの400ccという2タイプがラインナップされ、他メーカーがこぞって多気筒エンジンの開発へと注力するなか、空冷ビッグシングルエンジンは逆路線を走っていました。またそれが一部のファン層を厚くしたのも事実です。それにアップライトなポジション、磨きこまれた鍍金パーツ、そしてシンプルな車体構成(必要最小限とも言う)で価格も安い。お世辞にも華があるとは言えませんが、庶民的な下駄バイクから旅の道連れとして、一定のファン層のあいだでひっそりと売れ続けました。

 

ヤマハSRつくりがシンプルなだけに、ちょっと手を加えてやれば驚くほどパフォーマンスの変化を感じることができるので、のちに草レースでクラスができるほどファンを増やし、サーキット遊びで大ブレイクしたのがコトの始まり。これがSRブームのきっかけです。やがてサーキットからストリートへとフィールドが移り、さまざまなカスタムベースとして流行の浮き沈みをつくっていきました。そのあたりは記憶に新しいところでしょう。

 

さて、SRを語りはじめるとキリがありませんが、排ガス・騒音など規制の強化で、ついに2008年をもって現行モデルの生産は中止されてしまいました。じつに悲しい出来事です。

 

振り返ってみるとSRのスゴイところは多々ありますが、もっともリスペクトすべきポイントは「メーカー×ユーザー×コンストラクター(ショップ)」という3つの柱で支えられてきた製品だということは間違いありません。

 

造って終わり、売って終わり、乗って終わりではなく、メーカーが造り、ユーザーが使い、コンストラクターが付加価値を与える…いわばSRとは市場に育てられてきた製品で、ビジネスモデルの成功例とも言えるのです。

 

また、新車で購入したライダー層の年齢幅が30年というのも驚くべきポイントです。免許をとったばかりの若いライダーも、30年以上バイクに乗り続けてきたベテランライダーも、SRなら共通の認識としてつながることができる(って意味わかります?)。

 

いつの時代もファン層が途絶えることなく、現行モデルとして継続してこられたのは、飽きられることのないキャラクターがあったからこそ。まさに夢のロードスポーツバイクなのです。そんなSRに特別な想いを抱くライダーは、きっと少なくないでしょう。

Theme :  SRざっくりヒストリー
普遍のスタイルに最新の技術
変更点を挙げたらキリがない!

SRの30年は、そのつくりからざっくりと3つの時代に分けることが出来ます。

それぞれの特徴を軽~くおさらいしてみましょう。

 

前期 (1978-1984年) : フロント19インチ時代

初代から84年まではホイールサイズがフロント19インチ、リア18インチ。500はアップライトなハンドルとダブルシート、グラブバーを装備し、ゆったりとしたポジションの年輩層向け。400はやや低めのハンドルと小さいシートカウルで若年層向けに、とターゲットを分けていました。当時スポーツバイクで流行っていたキャストホイールを装着したSPや、7周年を記念して職人の手塗による“サンバースト塗装”モデルも登場しました。

中期 (1985-2000年) : 前後ドラムブレーキ時代

販売期間が7年というだけでも十分長いのですが、SR時代はまだまだ続きます。レーサーレプリカブーム全盛期でありながらSRは懐古路線へと逆行。前後ブレーキをドラム式に変更し、レトロバイクの代名詞になりました。それがユーザーに大ウケ。もっとも販売台数を伸ばした時代でもあります。免許制度の関係で売れ筋はもっぱら400が上々、500はマニア色が強かった。タンク容量アップやエンジン、車体の耐久性の向上など、じつは細部にわたっていろいろと変更されています。95年には緑のサンバースト塗装を施した限定バージョンのSR400Sが登場。500は99年が最終型となりました。

後期 (2001-2008年) : 400ccフロント右ディスク時代

ついに400だけに…。それでも、以降8年間売れ続けるとはバイク界のモンスター級。2001年からフロントブレーキがディスク式となります。他メーカーのシングルスポーツが軒並みカタログ落ちするなか、SRだけは排気ガス規制に対応して存続。05年にはSR史上初めて、フレームにシルバー塗装が施されました。06年にはエンジンと足回りをブラックアウトしたYSP限定バージョンも登場。そして2008年にはついに30周年を迎え、記念モデルとしてサンバースト塗装などの豪華な外装をまとった限定モデルが登場し、長いSR時代に幕を降ろしたのでした…(泣)。
Pick up Models : このスタイルに注目したい
生まれたときからなつかしい
現代レトロなロードスポーツ

レトロやベーシック、スタンダードといったスタイルに魅力を感じたら、

こんなキャラクターはいかがでしょうか?

 

モダンクラシック代表、英国生まれの伝統的なバイクです。排気量865ccの空冷バーチカルツインエンジンは、適度な鼓動と扱いやすいパワーで、ライダーを急かさずゆとりのある走りを得意とする紳士的なキャラクターです。

 

ボンネビルという名のモデルが最初に登場したのは、じつは半世紀も昔のこと。紆余曲折あって一時は姿を消しましたが「現代版ボンネビル」として再び登場しました。当時のそれとはまったく違う性格ですが、眺めているだけでも満たされる造形美は健在です。

かつてカワサキが英国車のデザインを踏襲して造り上げ、いまだに根強いファンが多く存在する「650W1」。その「W」の名を継承したのがW650です。当時のルックスを再現しつつ、オリジナルの持つ荒々しさや激しさといった強烈な性格は排除し、現代の道路環境に適した設計がなされた純国産バイクです。

排気量675ccの空冷4ストローク並列2気筒エンジンからは必要十分なパワーが得られ、ストリートから高速道路、ワインディングまで心地よく走り、ほど良いスポーツライディングも楽しませてくれます。

意外と知られていませんが、モトグッツィはイタリア最古のバイクメーカーです。その長い歴史の中でも、1967年に登場した「V7」は、当時とても高い評価を博した名機。それを現代の技術でリバイバルしたのが「V7 CLASSIC」です。

スタイリングはもちろんベーシックで、ハーレー同様、当時と現代の車体構成に大きな変更はなく、じっくりと熟成されて精度が高まり、クラシカルな見た目とは裏腹に驚くほど高いスポーツ性能を発揮してくれます。フィーリングを楽しむことも、ちょっと前のめりで駆けることも許容してくれる、いいバイクです。

スタンダードなバイクを挙げるうえでハーレーは外せません。メーカーとして1世紀以上の長い歴史を持ち、当時から基本構造を変えることなく常にその時代の最新技術を取り入れながら、普遍のシルエットを崩すことなく世界中のファンに支えられています。

ハーレーのなかでもロードスポーツとして考えるなら、ビッグツインよりも小排気量で軽量コンパクトなボディ、高いスポーツ特性を持つ「スポーツスター」でしょう。883ccのVツインエンジンを搭載し、ベーシックな車体構成はカスタムベースとしても、ニクイほど高い人気をキープしています。

そこに置いてあるだけで、バイクを知らない人でもつい目に留めてしまうのがドゥカティの色気。スポーツマシンを多くラインナップするなかで、2本のリアサスペンションが装備されたGT1000は「スポーツクラシック」というシリーズの中でもとりわけ懐古的です。しかもスポークホイールを装着するとはかなりセンスがいい。

排気量992ccの空冷L型2気筒エンジンを搭載し、心臓部は立派なスポーツバイク。クラシカルなルックスに高いスポーツ性能となると、これはひじょうに魅力的なのですが、乗り手にもそれなりの勇気がいるのではないでしょうか…。

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