Report:和歌山利宏  Photo:赤松 孝  記事提供:ROADRIDER編集部
    掲載日/2013年4月17日
新しいα-13は従来型α-12の正常進化形で、α-12にも増して格段にクルッと曲がり一気に立ち上がる走りを実現していた。
しかもフィーリングは往年のダンロップそのものだ。

Impression

その操る面白さと高まる一体感は絶品だ

新しいスポーツマックスα-13の技術説明会において、まとめのスピーチに立った技術部長の原憲悟さんは「新型α-13では若い技術者が、私が開発を担当した従来型α-12を見事に進化させてくれました」と切り出し、さらに「乗ってみると、α-12で気になっていたところが直っていました。タイヤにいい腰が出ているんです」と続けた。

 

はて、これはどういうことなのか? こういう場で、自身の開発作のネガな部分をほのめかすなんてことは、まずない。何か大きな意味があるのだろうか? 受けた技術説明の中で “腰” 感に影響しそうなのは、サイドウォールの補強ゴムが薄く長い形状となって、剛性バランスが是正されたこと、リヤのセンター部のコンパウンドが粘着性と強度を両立したものに改良されたことである。その影響のことなのだろうか? ただ、試乗が始まるときには、僕はそのことをすっかり忘れていた……。

新しいα-13は、まさに前作α-12の正常進化形である。コーナーで早く向きを変えて、早く立ち上がり、サーキットを楽しく攻める。そんな目指す方向も、その実現のための技術的アプローチも変わらないが、全てが高次元化されている。開発目標に合わせ、プロファイルやコンパウンドを改良。そしてCCT=キャンバースラストチューニング技術を、従来よりもさらに初期に曲げて、高いトラクションを掛けられるよう進化させている。そんなα-13の走りには、技術的な狙いが見事に反映されている。いや、技術説明の内容よりも、走りの印象は鮮烈である。

 

とにかく、初期にクルッと良く曲がり、トラクションを掛けて一気に立ち上がれる。今日的にコーナーに向けて奥まで突っ込み、ミドルイン・ミドルアウト的な走りもしやすい。一気に立ち上がりやすい半面、いつまでも寝かしたままだと、アンダーになるきらいもあるが、小さく曲げる走りをさほど強く強要するわけでなく、自由度もある。もちろん、グリップ力も高く、α-12よりラップタイムが上がりそうなのは、明らかというものである。

 

ただ、初期に曲げることができる人はいいが、できないと走り辛いことも考えられよう。そのため、ダンロップはスポーツマックス・ロードスポーツという寛容なタイヤも用意する。比較試乗すると、峠道などではダラダラと曲がらざるを得ない状況もあるから、ツーリング志向のユースではロードスポーツのほうが向いているかもしれないとも思う。

 

ちなみに、そのロードスポーツにα-13の後で乗ったときのこと。同じ感覚で曲げようとしたら、フロントが逃げた(冷や汗もの)。お断りしておくが、これはロードスポーツが悪いのではない。α-13のスポーツ性能が高いということである。

 

そうして、試乗を進めるうちに、新しいα-13には、もっと根本的な領域でステアリング感覚に違いがあることに気が付いた。

 

フロントがシャキッとして、ダイレクトに面でなく点でタイヤと路面を感じ、タイヤの幅を狭く感じるとでも言えばいいだろうか。リズムに乗るに従い、いい意味でフロントの存在感が小さくなってくる。斬新なフィーリング……じゃない。これは僕が覚えている20年以上前のダンロップのタイヤのイメージそのものではないか!

 

試乗が終わって、原さんに「フロントのフィーリングが全然違うんですね」と話を向けると、「気が付いてくれましたか。嬉しいですね?。最初に私が言ったのはそのことだったんですよ」ときた。 “そのこと” は技術説明になかったのだが、コンパウンドがシリカ入りとなり、また高グリップが要求される状況で、ゴムの強度が足らなくなっていたらしく、ついにそれが対策できたということのようだ。ともかく、このフィーリングは大好きだ。

 

というわけで、α-13の素晴らしい進化以上に、ダンロップの復活を実感した試乗でもあった。

 

 

和歌山利宏

筑波サーキットでの試乗後、ダッロップのゲストライダーとしてやってきた北川圭一さん、ノビーこと上田昇さん、仲城英幸さん(後列左から)という面々と記念撮影。なんとも豪華な顔ぶれではないか!

● SPORTMAX α-13の問合先

住友ゴム工業モーターサイクルタイヤ部

〒651-0072兵庫県神戸市中央区脇浜3-6-9

電話/0120-39-2788(お客様相談室)

公式サイト >>

 

● SPORTMAX α-13も展示!ダンロップオンロードイベント

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開催日程・詳細はコチラ >>

※参加には事前の申し込みが必要となります

 

気軽に立ち寄れるツーリングスポット
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開催日程・詳細はコチラ >>

※事前申込不要、参加費無料

どの車両にも生きる基本特性!

ミドルスポーツ車として試乗したCBR600RRは、運動性能に長けるだけに、α-13の高い旋回能力によってマシンの良さがさらに昇華された印象。クイックに曲げようとスポーツ心が沸き立つだけに、その直後に乗ったRoadsportでは、本文にあるようにオット?となった

CBR250Rに履かされるのはHRレンジでリヤトレッドが3分割のα-13H。だが、基本特性は同様で、むしろリズムに乗ってくると、姿勢変化に合わせタイヤがいい仕事をしてくれる。タイヤを意識して駆るα-12よりも、レーシーで無心になれるのが特徴となっている

 

レースレプリカの最高峰ラジアル

峠のワインディングやサーキットを攻めて楽しむライダー向きのタイヤであることは従来型α-12と同じだが、α-13では更なる旋回力とグリップ力が加えられた。パターンは3%溝面積を少なくし、ランド比を97%とし、またリヤの外形を2?3mm増大、前後プロファイルは尖がり傾向に改められる。α-13にはZRレンジのα-13Zと、HRレンジで軽中量級向きのα-13Hが用意されていて、特にα-13Zでは前輪16インチや、後輪18インチの一世代前の車両向きのサイズも用意される

基本構造を踏襲し、サイドの補強ゴムをスリム化

タイヤ構造は、フロントがセミラジアルカーカス(70数度の2枚)とカットベルト、リヤは1枚の90度ラジアルカーカスと0度モノスパイラルベルトの組み合わせを踏襲している。α-13ではサイドウォールを補強するハイスピードAPEXをスリムなものとし剛性を最適化。α-13Zのリヤトレッドは、α-12の7分割に対し、ゴムの改良により5分割に改められている

キャンバースラストチューニングを更に高次元化

α-12にも展開されたCCT(キャンバースラスト・チューニング・テクノロジー)を高次元化。さらに初期に曲げやすく、立ち上がりでトラクションを与えやすい傾向を高めている。その結果、ウェットグリップこそ同水準ながら、全ての要素においてα-12を上回る性能を引き出した