掲載日:2021年10月22日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
70年代後半から80年前半、女性ユーザーにターゲットを絞った、いわゆる「ファミリーバイク」と呼ばれるカテゴリーがあった。女性でも跨りやすい小径のタイヤにアンダーフレームを採用、自動遠心変速でクラッチ操作不要にするなど、運転動作もイージーにしていた。ホンダのシャリー、ヤマハのチャッピー、スズキのランディーがその始まりだった。そこにオシャレで気軽に運転できるホンダのロードパルが登場。主婦や学生などから圧倒的な支持を得た。そのころからファミリーバイクのカテゴリーが一気に活性化した。
1978~80年頃に発売されたファミリーバイク。ホンダからロードパル、シャリー、シャレット、パルフレイ、パルホリデー、パルディン、カレン、ハミング。ヤマハからはチャッピー、キャロット、リリック、マリック、ポエット。スズキからはランディー、ユーディ、ユーディミニ、スワニー、スージー……。これ以外にスクーターのパッソルやタクトもあったのだから、その数と種類に驚く。
そんなファミリーバイク黄金時代が終焉を迎える1982年に生まれたのがスズキのファンファンだ。コンセプトはオシャレなヨーロッパモペット。アップハンドルと足元のガソリンタンク、カバードリアフェンダーは他にない特徴だった。柔らかい雰囲気に力強さも兼ね備えたデザイン。いま改めて見ると、ユニセックス的な不思議な魅力を持ったバイクだと思う。翌年にはスクーターブームが到来。カタログを賑わしていたファミリーバイクは流れ星のように消えて行った。