EICMA(ミラノショー)2017/Vins・ブースレポート

掲載日:2018年01月12日 トピックス    

取材協力/Vins Motors  取材・写真・文/河野 正士

Vins Motorsのオーナーであり、デザイナーであり、エンジニアであるヴィンチェンツォ・マッティア氏と、彼が造り上げたオリジナルマシン「Duecinquanta」。

話題騒然の新型V型2気筒2stエンジンと
カーボンモノコック・フレームの新型マシン

11月にイタリア・ミラノで行われた『EICMA2017(エイクマ/ミラノショー)』の中から、気になるブースをじっくりお届け。

今回はイタリアの新生バイクブランド/Vins Motors(ビンス・モータース)。自社開発のV型2気筒2ストロークエンジンを、これまた自社開発のカーボンモノコック・フレームを搭載したオリジナルマシン「Duecinquanta(デゥエ・チンクアンタ/250の意)」を発表したブランドだ。

オーナーであり、デザイナーであり、エンジニアであるヴィンチェンツォ・マッティアが、それまで務めていたフェラーリ社のデザインスタジオを退社したのは7年前。今回発表した「デゥエ・チンクアンタ」のアイディアを実現するためだ。フェラーリを辞めると言ったとき、周りには大反対されたという。なぜフェラーリのような会社を辞めるのか、と。しかし逆に、フェラーリ社はマッティア氏を後押ししてくれたそうだ。素晴らしいアイディアを持っているのだからそれを実現するべきだ。そんな素晴らしいアイディアを持つことすら難しいのだから、と。

以来、すべての時間とお金をこのプロジェクト実現につぎ込んだマッティア氏。自宅のガレージとコンピューターだけで計画を進めてきたが、車両製作の目処がつき、そしてEICMA2017でプロジェクトを発表するべく、2017年春に正式にファクトリーを起ち上げ、ここでの発表にこぎつけたという。

この車両は2018年春に販売することを目標に、現在、市販化に向けた最終段階に入っている。価格は40000ユーロ(約533万円/ストリートバージョン)と50000ユーロ(約633万円/レースバージョン)。両モデルともに20台を生産する予定だ。もちろんすべてハンドメイドだ。そのハンドメイドの技術はフェラーリで学んだものであり、製品はフェラーリ・クオリティで製造するという。

EICMA2017/Vins・ブースレポートの画像

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自社開発のV型2気筒2ストロークエンジンと、自社開発のカーボンモノコック・フレームを採用するオリジナルマシン「Duecinquanta(デゥエ・チンクアンタ)」。これは排気量249ccのストリートバージョンだ。ボディは航空機の技術思想をアレンジしたカーボンファイバー製で、航空機用ボディと同じ構造で製作している。またボディだけでなく、スイングアームやフロントフォーク周りも、同様のカーボンファイバー製。

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ストリートバージョンと同様の車体周りを持つサーキット専用モデル「Duecinquanta Competizione(デゥエ・チンクアンタ・コンペティツィオーネ)」。排気量288ccエンジンを搭載する。

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ヘッドライト周りのダクトから取り入れた走行風はエアクリーナーボックスへ、フロントフォーク周りから取り入れた走行風は、車体内側を通って車体後方へ。ボディ内の形状を造り込むことで、走行風を利用しダウンフォースを得ることができるという。その構造を確立したことで、軽量でありながらスタビリティー向上が実現したという。重量は約85kg。

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ストリートバージョンのヘッドライト周り。

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フロントサスペンションは、ダブルアームとモノショックを使用した、四輪のダブルウィッシュボーンのようなシステムを採用。

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ダブルアームを受け止める車体側は、アルミキャスティングの大型部材を製作しセット。

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フロントアームはカーボン製。空力を意識した形状で製作されている。ダブルウィッシュボーンサスペンションは、アームのセッティングによってノーズダイブ量をコントロールでき、ストローク時のアライメント変化が少ないことから採用したという。

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リアサスペンションは“パラレルサスペンション”というフォーミューラーカーなどと同じシステムを採用。スイングアームが上下したとき、スイングアームから伸びたロッドが、スイングアーム上/ピポット近くに設置したリアサスペンションユニットを、同タイミングで、左右から押し縮める。サスペンションユニットの左右マウント部分にリンクを介しているのも特徴だ。一般的なモノショックシステムを採用した場合、スイングアームピポッド付近に、サスペンションを装着するためのスペースと剛性を確保しなければならない。そのために構造が複雑になり、それによって重量が増えてしまうデメリットもある。それを解消するため、このシステムを採用したという。

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ストリートバージョン「Duecinquanta(デゥエ・チンクアンタ)」のシート&リア周り。

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レーストラックバージョン「Duecinquanta Competizione(デゥエ・チンクアンタ・コンペティツィオーネ)」。

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ストリート用とレーストラック用で排気量を変えたのは信頼性を高めるため。レーストラック用エンジンはより高回転での走行が予想され、より大きな負荷が掛かる。そのような状況では、わずかでも排気量を上げることでエンジンの耐久性や信頼性を高めることができるという。サーキット専用マシンのエンジンであれば125ccという選択肢もあったが、それではエンジン特性がピーキーすぎるし、メンテナンスサイクルも短くなってしまう。だからこそ排気量を大きくした。ストリート用に比べわずか30ccの差だが、それがもたらす効能は計り知れないという。

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現在、ストリートバージョンのエンジンに関しては、ユーロ4のレギュレーションはクリアできていない。ショー開催時は、その前の段階の耐久テスト、そしてメンテナンスポイントの洗い出しやメンテナンスサイクルに関するテストを優先していると語っていた。2ストロークエンジンらしい、軽量ハイパワーを維持したままユーロ4をクリアするのは容易ではないが、不可能ではないと語った。

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ヴィンチェンツォ・マッティア氏。ジョン・ブリッテンがヒーローであり、本田宗一郎も目標とする人物だと語った。その2人は自らを信じ、前に進んでいくと決意した人たち。その背中を追うようにマッティア氏も同じ道に足を踏み出したという。失敗を含めたこれまでの経験は、じつに素晴らしいものだったと語った。





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