愛車撮影術

レースシーンを撮影する

掲載日:2008年05月14日 愛車撮影術    

上級者向けのレース撮影
その撮影ノウハウをお伝えします

みなさん、お久しぶりです。

愛車撮影術担当の浪折です。このコーナーは以前一旦終了いたしましたが、今回は皆さんから「走行中のマシンを格好良く撮影したい」との熱いご要望を頂きまして、特別にもう一度撮影講座を開かせていただこうと思います。内容はやや上級者向けになっておりますから、カメラに自信のない方は今までの講座を改めて読み返してみてもいいかもしれません。よろしくお付き合いください。

レースシーンのマシン撮影には
望遠レンズは欠かせない

冒頭でも申し上げましたが、今回のテーマは「走行中のマシン撮影」。

バイクの撮影をするうえで、走行中のマシンを格好良く撮りたいという願望は誰しもが持っていることだと思います。ただ走行中のマシンを上手く撮影するには、ある程度の技術と機材が必要になってきます。特にサーキットでマシンを撮影する際には、望遠レンズの使用が欠かせません。モトクロスなどのオフロードレースのようにコース近くで観戦することのできるレースでは広角側のレンズを使用することもありますが、望遠を使うことも多いので持っていた方が良いでしょう。

 

さて、望遠レンズを使った撮影となると、どんなレンズを探せばいいのかとなります。レンズの長さや明るさなど適正な物を探す必要があります。参考に例を挙げると、サーキットのコースサイド(プレス関係者のみが入れるエリア)での標準レンズは500ミリ、それよりもさらに離れた観戦エリアでの撮影では600ミリや、さらに2倍のテレコンバーターを付けて1200ミリで撮影ということも必要になってきます。ただしこれらのレンズを手に入れようとすると、100万円単位の金額が必要になってしまうので、購入は現実的ではありません。そこで活かせるのがパソコンソフト上でのトリミング。比較的F値の明るい望遠ズームか、中古で安い型落ちのサンニッパ(300mm2.8Fのレンズの略)にテレコンバーターを付けて撮影したものなどを、部屋に帰ってからパソコンのソフト上で適当な大きさに切り取ってやる方法です。ちなみにテレコンバーターは焦点距離が長くなるのと引換に1.4倍で絞り1段分、2倍で絞り2段分暗くなってしまい、その分ピントが合う速度も遅くなってしまうというデメリットがあります。なお、オフロードレースの撮影の場合は、70~200ミリくらいの望遠ズームがあれば、ほぼ事足りるはずです。

走行シーン

走行シーンを撮影するための
マスターすべき2つの関門

走行シーン走行中のマシンの撮影を始めるにあたって、最初の難関がフレーム内にマシンを入れること。これはマシンの動きを観察しながらレンズを振ることで、マスターすることができます。ロードレースとオフロードレースは、マシンがそれぞれ独特の動きをするので、その特性を研究しましょう。さて、最初の難関がクリアできたら、今度はピント合わせです。まずカメラの設定を合わせるところから。シャッター優先モードに合わせシャッタースピードを1/500~1/250の間に設定、オートフォーカスはAF-C(コンティニュアスAF:動いている被写体にピントを合わせ続けます)に設定します(※1)。フォーカスポイントは中央が良いでしょう。この状態で、動き続けるマシンに合わせてレンズを振っていき、ベストポジションでシャッターを押せば、走行中のマシンがとらえられます(※2)。おそらくこれが一番の難関ではないかと思われますが、マシンの動きに合わせてレンズを振りながら、露出とピントの合ったきれいなマシンの写真を撮ってください。

(※1)シャッター優先モード

カメラ側が自動で露出を合わせてくれる機能のひとつ。任意のシャッタースピードで撮影することができ、そのかわりにカメラ側で絞りの調整を行ってくれます。ただしカメラが被写体の色に惑わされ、黒っぽい被写体の場合は暗いと判断しオーバー気味に、白っぽい被写体の場合は明るいと判断しアンダー気味に傾いてしまう欠点があるので、それを回避するためにマニュアル露出で撮影する場合もあります。

 

(※2)フォーカスエリア

フォーカスエリアとは、ファインダー内に表示されるポイントでピントを合わせてくれる機能。5点・9点・11点などカメラによってさまざまですが、上位機種を除いて中央以外のポイントは精度が甘い傾向がみられます。自分のカメラの性能の限界を見極めて、ポイントを選択してみてください。

本当に大切なことは
瞬間の雰囲気をどう表現したいか

「ピントも露出もばっちりなのに、カッコイイ写真にならない」というのが、撮影に慣れてきた頃、誰もが陥る悩みだと思います。そんな時は、ファインダーから視線を外して、じっくりとライダーとマシンの動きを観察してみましょう。オン・オフ問わず、ライダーとマシンは常に一定の動きをしているわけではありません。長いストレートではアクセルを全開、コーナーではブレーキングで減速した後、パワーをかけて立ち上がっていくなど、さまざまな動作をしています。そんな一瞬の動きと、ライダーの気迫が伝わってくる瞬間を狙ってみましょう。それに伴って、シャッタースピードや露光をを変えてみるなどの表現方法が思い浮かんでくるはずです。レースの場面は、シャッタースピードを遅くして背景が流れていなければいけないと思っている人も多いと思います。しかし、ただ流しているだけでは、必ずしも良いというわけではありません。速いシャッタースピードでしか表現できない瞬間というのもありますので、走りを見ながらいろいろ観察してみてください。

 

さて、今回はサーキットでのマシンの撮り方を少し上級向けに説明してみました。走りの場面を撮るうえで、遅いシャッタースピードにすれば格好良くなると思っている人が多いと思われます。もちろん、遅いシャッタースピードで流し撮りをして被写体にピントを合わせるというテクニックは必要ですが、大切なのは瞬間の雰囲気をどう表現したいかです。シャッタースピードはあくまでも味付けだと思って、どの瞬間にシャッターを押せば良いのかということを考えて写真を撮ってみてください。

浪折 明良
講師
浪折 明良

カメラマン。続々と登場するカメラの新機種に財布の中身がついていかない750ライダーでもある。現在の愛車は10年もののGSF750。油冷エンジン最高! といいつつも、新型水冷エンジンが気になる今日この頃…

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