【ベータ アルプ200 試乗記】イタリアの名門が生んだ万能トレッキングマシン

掲載日:2020年08月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/伊勢 悟、稲垣 正倫

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BETA ALP200

世界中で多くのライダーの共感を得て
約20年に渡って生産が続くロングセラー

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オンロード派のユーザーにとっては、いまひとつピンと来ないかもしれないが、ヨーロッパにはベータやガスガス、tmレーシング、リエフなど、コンペティション指向のオフロード車を得意とするメーカーが数多く存在する。それらの中で、近年の日本市場で急速にシェアを拡大しているのが、イタリアのベータだ。1904年に創設され、第二次大戦後にモーターサイクル事業への参入を開始した同社は、1960年代までは多種多様なオンロードモデルを手がけていたものの、以降はオフロード車に注力。1987/1989~1991/1997~1999年にはトライアル世界選手権でシリーズチャンピオンとなり、2000年代から本格的に力を入れ始めたエンデューロの世界では、2016年に世界選手権E3クラスで初のワールドタイトルを獲得。そして2018/2019年の世界エンデューロ選手権では、2年連続でGP/E1/E3の3クラス制覇を達成している。

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そんなベータが2000年代初頭から発売を開始したのが、コンペティション指向の主力機種とは一線を画する、トレッキングマシンのALP125/200だ。親しみやすさを重視すると同時に、エントリーユーザーを視野に入れたこの種のモデルは、過去に多くのメーカーが手がけているけれど、ほとんどが定番としての地位を確立するには至っていない。逆に言うなら、約20年に渡ってロングセラーを続けるALPは、近年のオフロードの世界では異例の存在で、日本ではこれまでに断続的な販売が行われて来た。そして今年からはベータモータージャパンの正規輸入車として、ALP200の販売が始まったのである。

ベータ アルプ200 特徴

往年のトライアル車を彷彿とさせる
親しみやすいルックスと乗り味

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近年のモトクロッサー/エンデューロレーサーやトライアルマシンは、初心者にはとっつきづらいところがある。その主な原因はシートで、一般的なライダーの多くは、高すぎ、あるいは、なさすぎ(?)と感じるに違いない。でもALPの場合は、これならイケそう……と受け取る人が多いんじゃないだろうか。適度な肉厚を確保したシートの座面高は、セロー250と同じ830mmで、乾燥重量はセロー250より10kgほど軽い108kgなのだから。でもそれ以上に重要な要素は、1980年代前半以前のトライアルマシンを彷彿とさせる、親しみやすいルックスかもしれない。もちろん親しみやすさという見方なら、58万8000円の価格や、スズキ・ジェベル200用エンジンを搭載することも、多くの人にとって好材料になるはずだ。

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近年のベータが販売するコンペティション用トライアルマシンが、エンジン吊り下げ式のアルミフレームを採用しているのに対して、ALPは昔ながらのスチール製ダブルクレードルフレームを採用している。その事実を知ると、本気度が低いイメージを持つ人がいるかもしれないが、同社のエンデューロマシンはスチール製ダブルクレードルが定番だし、21/18インチのタイヤはオフロード界で定評を得ているミタスを選択。また、タンクカバーとシートは脱着を前提とした構成で、この2点を撤去すると、ルックスは現代的なトライアルマシンになる。

ベータ アルプ200 試乗インプレッション

セローに通じる守備範囲の広さと
セローを上回る悪路走破性

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たまにはコースを走ることもあるけれど、主な用途は林道ツーリング&トレッキング。そういう用途に最も適している現行車は、誰が何と言おうとセロー250である。いや、そこまで断言すると、読者の皆様からクレームが来そうだが、少なくともオフロードの腕前が中級以下の僕の場合は、車格が大柄なホンダCRF250Lでは悪路を存分に楽しめなかったし、常に攻めの姿勢を要求するカワサキKLX230では、セロー的なトレッキングは難しいと思った。だからこそ僕は、セローの生産終了を残念に思っていたのだが、ALPを体験した現在は、何だかホッとした気持ちになっている。と言っても、ALPがセローの代わりになるわけではないのだが……。

これは通勤快速になり得るかも。ベータはそんな用途を想定していないはずだが、ALPで市街地を走った僕は素直にそう感じた。現代の本気のトライアルマシンは言うに及ばず、トライアル指向のバイクで公道を走ると、とりあえずライディングポジションと2次減速比を何とかしたい、と考えることが普通なのに、AJPはノーマルでまったく問題なし。軽さとスリムさを武器にして、混雑した市街地をスイスイ走って行ける。なるほど、かつてのTLR200やTY250などで市街地を走っていたライダーは、こういった感触を味わっていたのか。なおサスストロークが極端に多くないため、ALPのハンドリングはナチュラルにしてフレンドリーで、この特性ならオンロード車からの乗り換えでも、違和感を抱くことはないだろう

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高速道路で意外だったのは、100km程度の移動なら余裕でこなせること。と言っても、最高速は110km/hで、高回転域でシートやステップに出る振動を考えると、巡航速度は80~90km/hに落ち着くのだけれど、それ以上の速度で走ってもシャシーはごく普通に安定している。コンペティション指向のオフロード車で高速走行をすると、意外に怖い思いをすることが少なくないものの、ALPにはそういった気配がなかったのだ。

続いてはオフロードの話。まず僕が期待していたセロー的なトレッキング、歩くようなスピードで景色を見ながら林道や獣道を移動するトコトコ走りに、ALPはきっちり応えてくれた。車体が軽くてスリムで足つきが良好で、ジェベルから転用した単気筒エンジンが納豆のような粘りを見せてくれるから、このバイクはどんなところにも気軽に入って行けるし、Uターンも楽々。でもそのこと以上にALPで驚いたのは、数多くのジャンプが設置されたオフロードコースを、予想以上のペースで、気持ちよく走れることだった。

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もちろん、コンペティション用のモトクロッサー/エンデューロレーサーのように、豪快に攻められるわけではない。でも親しみやすい特性を信頼して、徐々にペースを上げてみると、ブレーキはよく利くし、コーナリングはスパッと軽やかに決まるし、前後サスはジャンプにもきっちり対応(ただし調子に乗って着地をミスると、身体にそれなりの衝撃が入って来る)。さらに言うなら、エンジンは非力でも、トラクションがわかりやすいから、アクセルを気持ちよく開けられる。ALPはトライアル指向のトレッキングマシンと思っていた僕にとって、この特性は意外だった。もしかしたら僕のスキルだと、同社が販売するエンデューロレーサーのRRやクロストレイナーより、ALPのほうが速く走れるかもしれない?

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そんなわけで、ALPにかなりの好感を抱いた僕だが、例えばセローのユーザーが乗り換えを考えていたら、手放しでオススメするつもりはない。積載性や高速巡航性能、ツーリングの後半で感じる安心感では、ALPはセローには及ばないのだから。とはいえ、セローよりもう少しオフロードが楽しめるモデル、あるいは、日常域で普通に使えるトライアルマシンが欲しいと考えているライダーにとって、ALPは最善の選択肢になり得ると思う。

ベータ アルプ200 詳細写真

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車格を考えるともう少しコンパクトにしたくなるけれど、フロントマスクはなかなかのインパクト。デビュー時のヘッドライトは丸型だったものの、2000年代後半から異形になり、2018年からは現状のデザインを採用。

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液晶モニターの表示内容は、スピード、12/24時間が選択できる時計、オド/トリップメーター、内臓電池(CR2032)のバッテリー残量。悪路走行を考慮して、バックミラーはたたみやすい構成になっている。

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タンクカバー後端とシートのフィット感は抜群。燃料タンク容量はセロー250やCRF250L、KLX230より少ない6Lだが、マシンのキャラクターを考えれば、異論を言うべきではないだろう。フレームはスチール製ダブルクレードル。

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シート高は830mm。この数値はセロー250と同値で、CRF250Lより45mm、KLX230より55mmも低い。後方左右にはグラブバーが備わっている。なおトライアル仕様にしたときのシート高は725mm。

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テールセクションは簡単に脱着できそうな雰囲気。バッテリーやエアクリーナーボックスにアクセスする際は、シートと長大なリアフェンダーを取り外す必要がある。

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左右ステップはステーの取り付け角度を180度回転させることで、トライアル走行に適した位置になる模様。ペグは日常域や振動の緩和を意識したラバー付き。

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66×58.2mm、199ccの空冷単気筒は、スズキから供給を受けたジェベル200用。スペックは公表されていないものの、1993~2004年に販売されたジェベル200の数値は、最高出力:20ps/8500rpm、最大トルク:1.8kgf・m/7000rpmだった。

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エグゾーストシステムはベータのオリジナル。始動はセル&キック併用式で、セルモーターはクランクケース前部に設置されている。余談だが、数年前まで販売されていたALP125のエンジンは、ミナレリヤマハ製だった。

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フレームに隠れてよく見えないけれど、気化器は現代では貴重なキャブレター。もちろん、この部品もスズキから供給を受けたジェベル200用で、正式名称はミクニBST31。

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リーディングアクスル式のフロントフォークはφ37mm正立式で、ホイールトラベルは170mm。フロントブレーキはφ245mmディスク+片押し式2ピストン。

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トライアル車の通例に従い、フロントフェンダーはダウンタイプを採用。ホイールサイズはF:1.60×21/R:2.75×18で、トライアル指向の純正タイヤはミタス。

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リアブレーキはφ220mmディスク+片押し式1ピストン。スチール製スイングアームの側面には、キズ防止に役立つステッカーが貼られている。

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リアサスはリンク式モノショック。調整機構は無段階のプリロードのみだが、リンクプレートにはレバー比調整用(?)と思える穴が存在。リアのホイールトラベルは185mm。

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