【KTM 390アドベンチャー 試乗記】アンダー400ccの常識を変える、本気のアドベンチャーツアラー

掲載日:2020年06月04日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/井上 演

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KTM 390 ADVENTURE

高性能・高価格になりすぎた
リッタークラスに対する反動

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2000年以降の2輪業界で最も盛り上がっているカテゴリーは、アドベンチャーツアラーである。日欧のメーカーが熾烈な戦いを繰り広げるこの分野は、昨今ではハーレーまでもが参入しようとしているのだから。ただし、各社が総力を結集して生み出した大排気量アドベンチャーツアラーが、高性能・高価格になりすぎたせいか、十数年前からは、ミドルアドベンチャーツアラーにも力を入れるメーカーが増えている。そして近年ではその波が、ついにアンダー400cクラスにも訪れようとしているのだ。

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ただし、既存のアンダー400ccクラスで、アドベンチャーツアラーと呼べるモデルはわずか4台で、方向性もまだ定まっていない。例えばフレームに注目すると、ホンダ400X、スズキVストローム250、BMW G310GSの3車が、開発ベースのオンロード車用をほぼそのまま転用するのに対して、カワサキ・ヴェルシスX250は専用設計という手法を選択。また、操安性の要となるタイヤは、G310GSとヴェルシスX250は19/17インチ、Vストローム250は前後17インチ、400Xは初代:前後17インチ→2019年型以降:19/17インチを採用している。なおホンダが販売するCRF250ラリーも、見方によってはアドベチャーツアラーに分類できるのだけれど、このモデルの開発ベースはトレール車のCRF250Lで、オンロード車がベースの前述した4台とは素性が異なっている。

KTM 390アドベンチャー 特徴

390デュークの基本設計を転用しながら
外装と足まわりを新設計し、電子制御も追加

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390デュークのエンジン+フレームを転用しながら、外装部品を新規開発し、フロントに19インチを履き、前後サスストロークを延長。そのあたりを考えると390アドベンチャーは、G310GSや2019年以降の400Xと同様の手法で生まれたモデルである。とはいえ、TFT液晶メーターや電子制御式スロットル、オン/オフロード用が選択できるABS、任意でカットできるトラクションコントロール、ダンパー調整機能付き前後ショック、悪路重視のコンチネンタルTKC70などを採用しているからだろうか、このモデルはライバル勢より豪華にして本格派という印象。ちなみに390アドベンチャーの価格は、400Xより7万円ほど安く、G310GSより6万円ほど高く、開発ベースの390デュークよりは11万8000円高い、75万9000円だ。

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基本設計を共有する390デュークと比較すると、390アドベンチャーの車体寸法は大きくなっている。以下に具体的な数字を記すと、軸間距離:1357→1430mm、乾燥重量:148→158kg、シート高:830→855mm、最低地上高:175→200mm、前後サスストローク:142/150→170/177mm、キャスター角:25→26.5°。とはいえライバル勢と比較するなら、390アドベンチャーの数値は決して大きくはないのだ。なおエンジのスペック、最高出力:44ps/9000rpm、最大トルク:3.8kgf・m/7000rpmは、390デュークとまったく同じで、現代の250~400ccアドベンチャーツアラーでこの数値を上回るのは、46ps/9000rpm、3.9kgf・m/7500rpmの400Xのみである。

KTM 390アドベンチャー 試乗インプレッション

エントリーユーザーだけではなく
ベテランライダーも満足するに違いない

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半日に及んだ試乗が終わった時点で、これはヤラれた……と思った。もちろん、僕はKTMと敵対しているわけではない。でもツーリングとスポーツライディングが大好きな一方で、近年の大排気量車に手強さや重さを感じる機会が増えて来た僕にとって、390アドベンチャーは、その手があったか!と言いたくなるバイクだったのだ。

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僕が390アドベンチャーで感心したのは、気軽で快適でスポーティで、しかもアンダー400ccクラスで時として感じるコストダウンの気配がほとんど見当たらないことである。まずは気軽さの説明をすると、シート高は855mmなので、身長が170cm以上のライダー限定の話になりそうだが、このバイクは日常の足に使いたくなるほどフレンドリーで、ゴー&ストップが苦にならず、どんなところにもスイスイ入って行けるのだ。と言っても、KTM自身のスモールデュークシリーズを含めて、アンダー400ccクラスにはそういう車両がたくさん存在するのだが、このモデルはアドベンチャーツアラーらしからぬと思えるほど気軽。なおオフロードの腕前が万年初級の僕の場合、ミドル以上のアドベンチャーツアラーに乗って1人で林道に入るのは、かなりの勇気を必要とするものの、装備重量が172kgで、悪路走破性に優れるこのモデルなら、1人でも臆することなくダートが楽しめるだろう。

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続いては快適性の話だが、今どきのアドベンチャーツアラーはどのモデルも快適である。とはいえ、ラリーで培ったノウハウを投入した390アドベンチャーは、ライディングポジションの設定が絶妙だから、足腰や腕に妙な負担が一切かからないし、専用設計された足まわりのおかげで、路面の凹凸の吸収性は実にしなやか。もっとも、マシンに身を委ねられる、安楽でホッとできるという視点なら、ライバル勢に軍配が上がりそうだが、どんなときも乗り手に積極性を求める、KTMの姿勢に共感している僕には、その点はマイナス要素とは感じられなかった。

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ではスポーティさに関してはどうかと言うと、単純な峠道での速さなら、フロントが17インチで、車格が小さい390デュークのほうが上だろう。でも390アドベンチャーだって、十分以上にスポーツライディングが楽しめるのだ。と言うより、フロントが19インチで、車体寸法が穏やかな390アドベンチャーには、乗り手を優しく導いてくれるかのような特性が備わっているので、安心して飛ばせるという意味では、390デューク以上かもしれない。もちろん、アイポイントの高さとサススストロークの豊富さを考えると、走行条件が悪くなれば、390デュークを凌駕するペースで走ることも可能だろう。そんな390アドベンチャーにあえて異論を述べるとすれば、エンジンの抑揚が390デュークより希薄になったこと。と言っても、ライバル勢と比べれば元気はいいのだが、僕がオーナーになったら、サブコンの投入や排気系の変更など、本来の資質を取り戻すカスタムを行うと思う。

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さて、最後は“アンダー400ccクラスで時として感じるコストダウンの気配がほとんど見当たらない”に関する話だが、そもそもどうして、アンダー400ccクラスにコストダウンの気配を感じやすいかと言うと、メーカーとしては、できることならミドルクラス、そしてリッタークラスにステップアップして欲しいからだと思う。もちろんKTMだって、多くのユーザーに790アドベンチャーや1290スーパーアドベンチャーに乗って欲しいと考えているはずだ。でも少なくとも僕にとっての390アドベンチャーは、兄貴分に勝るとも劣らない存在で、十分以上の満足が得られるバイクだったのである。

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KTM 390アドベンチャー 詳細写真

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アグレッシブで独創的なフロントマスクは、兄貴分の1290スーパーアドベンチャー/790アドベンチャーと共通。近年のKTMの流儀に従い、灯火類はフルLED。コンパクトなスクリーンは、ボルトを差し替えることで2段階の高さ調整が可能。

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アルミ製テーパーハンドルはリジッドマウントで、ナックルガードは標準装備。トップブリッジは上面に複雑な形状のリブが備わる。WPのφ43mm倒立フォークは、近年のアンダー400ccクラスでは珍しい伸圧ダンパー調整機構を採用している。

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390デュークから継承した5インチTFTフルカラー液晶モニターは、ライバル勢とは一線を画する豪華な装備。オプションのKTM MY RIDEを導入すると、スマホとのBluetooth接続が可能になる。メーター下部には12V電源ソケットを設置。

メーターの表示項目変更やABS/トラクションコントロールの設定切り替えは、左側スイッチボックスに設置された十字ボタンを介して行う。なお390アドベンチャーのABS/トラクションコントロールは、リーンアングルセンサーの情報を検知して利き方を制御している。

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新規開発された樹脂製ガソリンタンクの容量は、390デューク+1Lとなる14.5L(リザーブは3.5L)。微々たる違いと感じる人がいるかもしれないが、この変更で航続可能距離は400kmの大台に乗った。KTMの公称航続可能距離は約430km。

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フラットな座面を確保したシートは、オンでもオフでも快適で動きやすかったし、表皮の滑り止め感も好印象。オプションとして、快適性に配慮した素材のエルゴシート、前後一体型でモトクロッサー的な形状のスポーツシートが存在する。

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オフロード走行時にラバーが簡単に取り外せるステップは、390デュークより前方/下方に設置されている。可倒式ペダルはシフト側のみだが、ブレーキ側は前後位置の調整が可能だ。ヒールプレートのホールド感はなかなか良好だった。

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373ccの水冷DOHC4バルブ単気筒、ケーヒンのφ46mmスロットル+インジェクション、ボッシュのEMS、鋼管トリレスフレームなどは、390デュークから転用。海外のウェブサイトを見ると、最高速は160km/h前後と記されている。

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ガレ場でエンジンを護るスキッドプレートは、かなり本格的な造り。高熱になるエキパイの周囲には金属素材を使用。

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サイレンサーは往年のパリダカレーサー風? もっとも、このサイズでは現代の排出ガス・騒音規制がクリアできないため、スイングアームピボット後部に膨張室が設置されている。オプションのスリップオンサイレンサーはアクラポビッチ製。

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アルミキャストホイールのサイズはF:2.50×19/R:3.50×17。フロントだけではなく、リアも専用設計するところに、このバイクにかけるKTMの意気込みを感じる。ちなみに、390デュークのホイールサイズはF:3.00×17/R:4.00×17。

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アルミ鋳造のスイングアームはKTMならではのオープンラティス構造。純正タイヤのコンチネンタルTKC70は悪路を重視した特性だが、舗装路でも頼りなさはまったく感じなかった。ABSの設定は異なるものの、ブレーキは390デュークと共通。

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WPのリアショックはプリロードと伸び側ダンパーの調整が可能。サスストロークを390デュークと比較すると、フロントは28mm、リアは27mm伸びている。なおシートレールは、パニアケースの設置を視野に入れた専用設計品。

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