【KTM 390 アドベンチャー 試乗記】日本の道路環境にハマるリアルアドベンチャーモデル登場

掲載日:2020年03月17日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/伊丹 孝裕 写真/KTM JAPAN

【KTM 390 アドベンチャー 試乗記】日本の道路環境にハマるリアルアドベンチャーモデル登場の画像

KTM 390 ADVENTURE

KTMはラリーやエンデューロなど、オフロードの世界で培ったノウハウを様々なストリートモデルにフィードバックしている。「アドベンチャー」と呼ばれるカテゴリーもそのひとつで、そこにシリーズ最小の排気量を持つモデルが加わった。

誰もが待っていたちょうどいいサイズとパワー
本当に使えるオールラウンダーが上陸

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1290スーパーアドベンチャー/Rや790アドベンチャー/R/Rラリーなど、旅と冒険を目的にしたモデルを多数ラインナップしているのがKTMだ。いずれもたっぷりと余力のある大排気量エンジンを採用しているが、そこに373ccの単気筒エンジンを搭載したスモールバイク「390アドベンチャー」が登場。シリーズの末弟を担うことになった。

2019年のEICMAで初披露され、早期の発売が期待されていたが、2020年4月から始まることが決定。その導入を前にしてテネリフェ島(スペイン領カナリア諸島)で国際試乗会が開催されたため、ファーストインプレッションをお届けしたい。

390アドベンチャー 特徴

ロードモデルの390デュークがベースながら
様々な専用パーツでオフロード性能を強化

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390アドベンチャーはスチールパイプを組み合わせたトレリスフレームに、373㏄の水冷4ストローク単気筒エンジンを搭載している。KTM最大のヒットモデル、390デュークと同じ構造を持ち、実際多くのコンポーネントを共有。スポーツネイキッドから派生したアドベンチャーモデルである。

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外観上の大きな違いは足まわりだ。390デュークが前後に17インチホイールを装着しているのに対し、390アドベンチャーはフロントを19インチに大径化。タイヤもダート走行を想定したコンチネンタルのTKC70が選択されている。

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それに伴い、サスペンションのトラベル量を延長し、減衰力調整機構を追加。様々な地形への適応力が拡大され、衝撃吸収性も大きく引き上げられていることが分かる。

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また、電子デバイスも充実している。車体がバンクしていてもブレーキングが可能なコーナリングABSを搭載する他、ONとOFFが選択できるトラクションコントロール、必要に応じてリアのABSをカットできるオフロードABSを標準装備。不整地でのコントロール性が重視されている。390デュークの兄弟モデルとはいえ、オフロード性能が追求されているところにKTMらしさが伺える。

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390アドベンチャー 試乗インプレ

前にはバハ1000のチャンピオン
後ろにはダカール・ラリーのチャンピオン

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390アドベンチャーの試乗会はカナリア諸島のひとつ、テネリフェ島で開催された。モロッコと西サハラの沖合に位置する火山島で、土地柄、至るところにダートが広がっている。つまり、そういう路面における走破性にKTMは自信を持っているということだ。

それが如実に表れていたのが、先導役として名を連ねていたメンバーだ。ひとりはバハ1000で4度の優勝経験を持つクイン・コーディさん、もうひとりは19年のダカール・ラリーで優勝したトビー・プライス選手という豪華さで、彼らに挟まれて走るという極めて貴重なひと時を経験。390アドベンチャーを華麗に、そして心底楽しそうに操る姿が印象的だった。

ふたりともその身体は巨躯と言ってもいいが、スモールアドベンチャーは音を上げることもなく、ハードなライディングに追従。それを見れば、KTMがいかに本気で開発したかが分かる。

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最初に体感したアスファルト上での振る舞いはナチュラルそのものだ。フロントの19インチホイールは旋回力を妨げることなく、バンクさせればベタッと安定したハンドリングを披露。コンチネンタルのTKC70は、ブロックパターンながら十分なグリップを発揮し、タイトターンが続くワインディングも安心してコーナリングを楽しむことができた。

オンロードでの肩慣らしが終わると、いよいよオフロードだ。まずはMTC(モーターサイクル・トラクション・コントロール)をONからOFFへ、ABSのモードをROADからOFF ROAD(リアのみABSがカットできる)へ切り換えておく。こうすることで、より積極的な車体コントロールが可能になるからだ。

スロットルをガンガン開け、表面の砂利を飛ばしてその下の路面を掴み、リアタイヤをロックさせながら車体の向きを大きく変える。そんなライディングはビッグアドベンチャーならそう易々とできないものの、390アドベンチャーの軽さとスリムさなら可能だ。

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キャストホイールとTKC70の限界レベルは見た目よりも遥かに高く、硬い火山岩も砂地も難なくクリア。ちょっとしたジャンプも余裕で許容するなど、その懐は深い。

オールラウンドを謳うバイクは多いが、実際は妥協しなければいけない性能が多いものだ。250㏄のオフロードバイクは走破性に秀でていても快適性は低く、大排気量のアドベンチャーで快適性を確保するとオフロードでの自由度が制限されがちだ。

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そういう問題を軽々と飛び越え、オンロードもオフロードも、日常的な使い方もロングツーリングも高いレベルでこなしてくれる存在が、この390アドベンチャーである。日本における、最良のオールラウンダーになるのではないだろうか。

390アドベンチャー 詳細写真

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44HPの最高出力を発揮する水冷4ストロークDOHC単気筒エンジンを搭載。スロットルはライド・バイ・ワイヤによって制御され、軽い操作性を実現している。6000rpmを超えてからひと際快活になる、鋭いレスポンスが魅力だ。

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バイブレのブレーキキャリパーをラジアルマウントし、φ320mmのシングルディスクを組み合わせる。リーンアングルセンサーと連動するコーナリングABSによってバンク中のブレーキングも許容。安定性と安全性に貢献する。

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リアサスペンションはWPのAPEX。プリロードは10段階の幅で調整でき、伸び側の減衰力調整機構も備える。スチールパイプを組み合わせたサブフレームはメインフレームとボルトオンで締結され、脱着は容易。

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シンプルな構造のトレリスフレームに軽量コンパクトなエンジンを懸架。ラリーマシンで培ったノウハウが車体設計に反映されている。乾燥重量は158kg、装備重量でも172kgに抑えられ、低重心のためオフロードでも扱いやすい。

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LEDヘッドライトは1290スーパーアドベンチャーや790アドベンチャーと共通のものを採用。高い輝度が確保され、視認性と被視認性に優れる。ウインドシールドは特別大型ではないが、高速域でもウインドプロテクションに不満はない。

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5インチのフルカラーTFTディスプレイを装備。このクラスのモデルに採用されることは珍しく、質感は高い。トラクションコントロールやABSの設定状態は画面上で確認が可能。その切換はハンドル左側のスイッチボックスに集約されている。

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シート高は855mm。足つき性は平均的な体格の日本人成人男性がまたがって、ツマ先で支えられる程度。ただし、車重が軽いため、不安を覚えるような場面は少ないはずだ。オプションで座面がフラットなスポーツシートも用意されている。

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WPのφ43mm倒立フォークを採用。390デュークは非調整式だが、こちらは減衰力のセッティングが可能だ。フォークの右で伸び側、左で圧側を管理する独立タイプで、ストローク量は170mm(リヤは177mm)が確保されている。

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燃料タンク容量は14.5L(リザーブは3.5L)。定速走行なら430kmの航続距離を公称し、燃費に換算すると約29.6km/Lといったところ。実際、今回の試乗は1~2速を高回転で多用する状況だったが、26km/L近い燃費を記録していた。

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ホイールは前後キャストだが、いずれワイヤースポークホイールもオプションで用意されるとのこと。ABSにはオフロード向けのモードが用意され、リアのみABSの作動をキャンセルすることができる。

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すでにアクセサリーパーツを豊富に準備。アクラポビッチのスリップオンサイレンサーやエンジンガード、積載性が向上するバッグなど、スポーツからツーリングまで幅広い用途に対応する。

試乗ライダー プロフィール
伊丹 孝裕
2輪専門誌の編集長を経て、モータージャーナリストとして独立。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTや鈴鹿8耐、パイクスピークといった国内外のレースに参戦してきた。

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