モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.05

掲載日:2012年09月28日 ツジケンAMA-SX参戦記    

文/辻 健二郎

モトクロスライダー辻 健二郎が2013年、AMA-SXに参戦! Vol.05

長年、日本のモトクロスシーンで活躍をしてきた辻 健二郎選手。その彼が、なんと2013年にアメリカのモトクロスレース、AMA-SX(エーエムエー・スーパークロス)に参戦するという。ダートライドでは、それに至った彼の心境や、そこに向けての活動、そして2013年の活躍まで、その生き様を追いかけてみたいと思う。彼の長年の夢は、いったいどんな結末を迎えるのだろうか……。

出国までいよいよ数日
最後の晩は愛猫と共に……

航空券は旅行会社で取りましたが、これも自分でやってみました。まず、たくさんの航空会社を調べて、価格/条件/期間など、自分に合ったわがままプランを探しました。ビザや荷物の発送ではかなり苦労しましたが、航空券については意外にも自分でかなりできる事がわかり、思ったよりスムーズに買えました。

 

とは言っても、ここでも周りのフォローはありました。知人に教えてもらったテクニックで、12か月のオープンチケットで、帰る日程をスーパークロスチャレンジが終わって戻ってくる頃に仮設定しました。

 

それと、今回一発目の渡米はビザなしになるので90日以内に戻りますが、その時の帰りのチケットはアメリカで取る事にしました。今は円高なので、日本で購入するよりも少し安いみたいなのです。確かに調べてみたら、日本で購入するよりも安い! アメリカで1回でも多く練習できれば、と思っているので、少しでも安く、というのはとても重要なのです。

 

傷害などの保険もそうです! オレの場合、クレジットカードで航空券を決済すると、カード会社の海外旅行保険である程度のカバーをしてくれるのです(編注:カード会社・カード種類により異なります)。これに加え、オートバイに乗っている時のケガ・事故などにも適用する保険と、それでも足りないと感じる部分だけを掛ける事で、ここでも節約が出来ました。これについては、財布に優しいライダー“ヨッサン”(熱田孝高=編注:現役モトクロスプロライダー。海外のチームに長期所属経験あり)に教えてもらいました。よしよし、これでスーパークロスの練習がプラス2、3回はできるくらい節約できたぞ~。

 

送る荷物の搬出も自宅から近い港で終え、出発までいよいよ残すところ3日。

 

ここで気がつきました! 名刺を作っていなかったのです!!

 

忘れていた、というか少し後回しにしていた事がズルズルさらに後になってしまい、ある時になって慌てる悪いパターンです。自分ではしっかりやっているつもりなのですが、どこかしらにルーズなところがあり、連載1回目ですごい目つきでバイクに跨っている父親には、子供の頃から何度も怒られていました。

 

「ごめんよ、父さん、いまだにルーズで」

 

そして、ここでも“自分でできる事はやってみよう”が出ました。はじめは名刺屋さんを探していましたが、途中でパソコンで出来る名刺作成ソフトのダウンロードに切り替えました。あれやこれやとやりだしてからは盛り上がってしまい、時間が経つのが速かったです(笑)。出来あがりまでには、カミさんとあれこれ試して楽しみました。

 

換金にも行ってきました。渡米する、という点だけ考えれば今の円高は大歓迎です。初めてアメリカに渡った時は、確か1ドル130円くらいだったと思います。バイクを購入する為に日本から送金をしたのですが、新車をディスカウントしてもらい「これでも結構安いぞっ」て言われて、確か75.6万円くらいでした。今回も、当時と同じくらいのドルに換金したのですが、必要だった日本円は30万円くらい安くなりました。今回の目的からすれば、個人的にとても助かりました。

 

ここまでで、出発まであと1日となりました。やるべき事は済ませているので、この日は時差ボケ対策と思い、機内でぐっすり眠る為に自転車トレーニングをいつもより多くやりました。130キロも走ったので時間もそれなりに使いましたが、身体もいい具合に疲労させる事ができたので、やって正解でした。夕飯には、「アメリカに行く前に美味しいもの食べてくださいっ」て、友達のケンセイから大好物のジンギスカンを送ってもらっていたので、これを家族と美味しくいただきました。

 

そしてこの夜は、我が家の可愛いネコちゃん“トビ”と一緒に寝る事にしました。彼は、去年(2011年)の夏にモトクロスの練習にコースへ行ったらフラフラとしながら寄ってきて足元から離れなかった、迷い猫なのです。まるでロサンゼルスオリンピックの女子マラソンで、ゴール目前に脱水症状で意識朦朧となりながら懸命にゴールを目指していたあの選手のように、フラフラでした。オレはすぐさま降ろしたバイクを積みなおして、カミさんと病院に連れて行きました。あの時は餓死寸前でガリガリでしたが、今ではトップリと太っています……。

 

別れを惜しんで一緒に寝たかったけど、ネコは気ままなのでそう思うようにはいかないんですね~。逃げられました(笑)。

 

ここまで来るのに長い道のりでしたが、次回はいよいよ出国です! がんばりますよ!

 

<続く>

ツジケンの“USレース参戦に必要な保険”について

まず、オレも全く知らない事だったので、たくさんの知り合いに話を聞きいたり調べたりしました。

 

海外で日本の健康保険が使えないのは、当たり前ですよね。日本でも、健康保険の適用外の治療を受けた場合は、全額患者負担となり高額な治療費を支払うハメになります。日本人がアメリカで治療を受ける場合は、常にそれと同じ状態になります。オレは幸いなことに、まだお世話になったことが無いのですが、救急車で搬送されるような事があれば、ぶったまげるような請求がくるようです(救急車だけで、です)。治療に掛かる費用も、日本に比べるとかなり高いと聞きました。

 

搬送の手段にも問題があります。アメリカでは場所/状況によっては、ヘリコプターが飛んでくる事があるんです。日本の感覚ではめったに“ヘリが来ることなんてないやろう”と思うのですが、これが意外によく来るんです。練習中に脳震盪でキッズがヘリで運ばれたのを見た事もあります。このヘリの金額が、また半端ないと聞いています。脳震盪で気を失ってるうちに搬送されてしまい、途中で目が覚めてしまったら、その事実に驚愕して症状が更に悪化する事になるのでしょうね。たまりません。

 

バイクでのケガの事ばかり書きましたが、病気も同じ事で、治療費は高いようです。したがって、旅行会社が用意しているものや空港で申し込める海外旅行用の保険に加入をしていくことをお勧めします。保険がパックになっている渡航プランもありますが、自分で必要と思うものを選択して掛ける事で、少し手間にはなりますがコストを抑える事もできます。カード会社の海外旅行保険がカバーしている範囲を把握しておいて、それ以外の不足している分だけ保険を付け足す方法も、経済的です。

 

しかし、ここで1点注意!

 

モトクロスなどの危険なスポーツをしている場合に起こったアクシデント/ケガには、普通の海外旅行保険は適用されません。別途、何か加入しておく必要があります。ところが、インターネットで申し込むタイプにこの手のものは一切なく、保険会社の窓口に直接足を運んで、相談する事になります。具体的に専用のプランがあるわけではないので、必ず加入できる保証もない、という代物です。よくあるのは、“海外でスカイダイビングをするので”、というヤツですね。この保険は、危険度が高い事に対しての適用になるので料金はそれなりに高くなり、何か元々あるベーシックな保険に”割増しして適用”という形が多いようです。

 

他でコストを押さえてもここで負担増が発生してしまいますが、救急車にしてもヘリにしても、いざ必要な状況になっても周りに迷惑をかけない為には、必ずプラスの保険は必要でしょう! 面倒くさいと感じる人もいるでしょうが、オレはこのようにしています。

 

ちなみに参考として、補償範囲は、傷害治療費 2,000万円、救援費用 1,000万円、賠償費用 1億円、となっています。

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プロフィール

辻 健二郎

辻 健二郎

1975年8月8日 山口県徳山市(現 周南市)生まれ

父親の影響で3歳の時にモンキー(ホンダ)を緑地公園で乗せてもらったのが初ライド。週末は、家族みんなが父親のモトクロス練習&レースについて行く。そんな環境下、行った先で山の中を草木や泥にまみれて遊ぶのが日常だった。これが彼のバイクライフの原点になる。自己評価は、ポジティブに捉えると真面目で実直と言われるが、見方を変えれば頑固で自分を曲げない性格、との事。不器用だからスムーズに事が進まないが、この性格を理解してくれる周りに支えられ、モトクロス道を進んで来ている。大好きなボブ・マリーの曲、"JAMMIN'"から名前を取ったバイク仲間との倶楽部も活動中。何事も「enjoy!」が信条。

 

なお、随時申し込みがあれば個別のスクールを実施しているので、「ツジケンに教わりたい」と思ったライダーはぜひ問い合わせて欲しい。

【モトクロス塾】

 

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