ソケットツールのバリエーション

掲載日:2010年10月26日 バイク基本整備のイロハ工具の使い方実践    

工具の使い方・3 ソケットツールのバリエーション

バイクに使われているビスやボルト、ナットを緩めたり締めたりする際に欠かせない工具。カスタムやレストアといった大がかりなバイクいじりだけでなく、日常的な整備やメンテナンス作業でも工具が必要となる場面は多いもの。ここでは、さまざまな工具の種類や使い方の紹介を通じて楽しくバイクいじりを実践し、トラブルを未然に防ぐテクニックを解説しよう。

作業環境に合わせて
さまざまなソケットを使い分ける

前回紹介したラチェットレンチは、狭い作業環境でボルトを素早く回すのに便利な工具です。ラチェットレンチとソケットの四角い差込部分は、その四角部分の一辺の長さによって1/4インチ(6.3mm)、3/8インチ(9.5mm)、1/2インチ(12.7mm)の3種類が主に利用されていますが、その可能性をさらに広げるのがさまざまなソケットやエクステンションバーといった先端工具類です。

 

例えば、ラチェットレンチにスタンダードタイプのソケットを組み合わせた状態で、ハンドルを振る軌道上に邪魔者があった場合、そのままでは作業が進みません。そんな時にはレンチとソケットの間に延長棒となるエクステンションバーを装着すれば、ボルトやナットからラチェットレンチの間隔を離すことができ、振れなかったレンチが動かせるようになります。延長できる長さは50mm、100mm、150mmとバリエーションがいくつかあって、それらをまとめたエクステンションバーセットというような商品もあるので、手元に1セット揃えておくと便利です。

 

ソケットツール専門メーカーの山下工業研究所(コーケン)では、首振りタイプのエクステンションバーを「オフセットタイプ」と呼ぶ。バーとソケットのなす角度はわずかだが、実作業ではこれに助けられることも多いです。

ソケットツール専門メーカーの山下工業研究所(コーケン)では、首振りタイプのエクステンションバーを「オフセットタイプ」と呼ぶ。バーとソケットのなす角度はわずかだが、実作業ではこれに助けられることも多いです。

またエクステンションバーの中には、差し込んだソケットが傾けられるような仕掛けが施された製品もあります。この仕掛けは工具メーカーによって「首振り」とか「オフセット」とか「ウォブル」タイプなどと呼ばれており、作業場所周辺が立て込んでボルトに対してラチェットレンチをまっすぐ差し込むのが難しい環境で重宝します。

 

ただし首振りタイプのエクステンションバーは、ソケットが傾けられるように差し込み部分がくさび形状になっていることが多く、ストレートタイプと比較すると強度的に不利なことは否めません。ソケットが傾いたまま大きなトルクを掛けると破損する危険性があるので注意が必要です。

 

次に、ラチェットレンチやエクステンションバーの先端に取り付けるソケットのなかでも、ちょっと変わった仕事をするものを紹介しましょう。

 

まずはじめはスパークプラグ用のプラグソケットです。プラグを着脱する際には、本体の六角部分に工具を掛けます。この六角部分の二面幅はプラグの型式により16.0mm、18.0mm、20.6mm(最新のモデルでは14.0mmサイズもあります)の3サイズのいずれかで、それぞれに専用のプラグソケットが存在します。プラグソケットの外観はディープソケットに似ていますが、プラグにセットした際に陶器製のガイシ部分を傷めない、シリンダーの深い位置にあるプラグをスムーズに引き抜けるなど、スパークプラグソケットには専用品ならではのアイデアが凝らされています。

 

また、シリンダーから外したプラグを保持するためには、ソケットの中にゴムリングやマグネットを仕込んだり、山下工業研究所(コーケン)製のように六角部分に金属製の板バネを組み込んでいるものもあります。このように、通常のソケットにはない様々な工夫が盛り込まれているのは、金属と陶器を組み合わせたスパークプラグがとてもデリケートな部品だからです。ソケットが陶器部分に触れたまま締め付け作業を行えば、割れたり欠けたりしてダメージを受けるのは確実で、それだけにソケットを使用する際はプラグの六角部にしっかりかぶせるようにしましょう。

 

コーケン製エクステンションバーストレートタイプ(左)とオフセットタイプの先端部分の比較。差し込んだソケットが傾くように、差し込み部分の根元がくさび上になっています。また、くさびの奥底の四角部分まで差し込めば、ストレートタイプとして使えるのも特徴です。

コーケン製エクステンションバーストレートタイプ(左)とオフセットタイプの先端部分の比較。差し込んだソケットが傾くように、差し込み部分の根元がくさび上になっています。また、くさびの奥底の四角部分まで差し込めば、ストレートタイプとして使えるのも特徴です。

ヘックスソケットのようでそれより各辺が中心に向かって大きくくぼみ、六角形の星形になっているのが、ヘックスローブソケットです。ヘックスローブはプラスドライバーでビスを締める際に発生するカムアウト(ネジ溝からドライバー先端が浮き上がろうとする現象)を解消するために開発されたもので、プラスビスに比べてトルクを伝える効率はずっと優れています。

 

星形のヘックスローブと六角形のヘックスは一見すると似ていますが、それぞれに互換性はありませんから、ボルトやビスの頭をよく観察して工具を選ぶ必要があります。また、ヘックスローブはヘックスに比べて1サイズ下のビットでもボルトやビスを緩められそうな感触がありますが、ジャストサイズでないとビスや工具を傷めることがあるので、ラチェットレンチでグイッと回す前にサイズ確認を確実に行っておくことが大切です。

 

さらにヘックスローブの中には、いたずらやいじり止めを目的にネジ溝の中心に突起が出ている(ビットの中心に小さな穴が空いている)タイプもあります。

 

ラチェットレンチと組み合わせて様々な作業が可能になるソケット工具を使えるようになると、きっと作業の幅が広がることでしょう。

作業手順を見てみよう!

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