RSタイチインテンションオールシーズンELジャケット

掲載日：2010年12月20日バイク用品インプレッション

バイク用品インプレッション

アクティブセーフティを向上させる
画期的なライディングジャケット

パッシブセーフティ（受動的安全）とアクティブセーフティ（能動的安全）。この両面から安全を追求するという考えが主流となって久しい。前者は事故などのアクシデントが発生した際に被害を最小限に食い止めようという考え方であり、後者は事故を未然に防ごうという考え方である。もちろん、この2つを同時に実現していくのが理想的だが、ことバイク用品に関して言えば、プロテクション性能の向上などを中心としたパッシブセーフティの開発がメインだったと言える。

さて、今回ご紹介するはRSタイチの「インテンションオールシーズンELジャケット」である。商品名となっている“EL”とは“エレクトロルミネッセンス”の略語であり、簡単に言うと電気の力を利用して光りを発する技術のこと。一部薄型テレビなどにも利用されたテクノロジーであるのでご存知の方も多いことだろう。RSタイチではこれをライディングジャケットに応用、背中に被視認性を向上させるEL発光パネルを搭載したのが最大の特徴である。肩、肘、背中にはプロテクターを標準装備するほか、オプションのチェストプロテクターにも対応。防寒用の着脱式インナーも付属し、上腕部と背中両サイドにはベンチレーションを配置するなど、基本性能も充実しているところがいかにもRSタイチらしいアイテムだ。

今回のテストでは、このインテンションオールシーズンELジャケットを着用して約200kmを走行したが、ライディングジャケットとしての性能は申し分ないと感じた。比較的多機能なアイテムであるのに加え、EL発光パネルやその電源となる電池ボックス（単三電池2本格納）を胸の内ポケットに搭載しているため重量増を心配していたが、むしろ着心地は軽いと感じたほど。最大の特徴であるEL発光パネルに関しても非常に有効な安全装備だと実感した。例えば、夜間走行中にギリギリの車間距離で4輪に追い越され、ヒヤッとした経験はないだろうか。バイクの場合、夜間走行における他車からの被視認性は小さなテールランプに頼っているのが実情であり、ドライバーは車間距離やバイクのサイズを正確に把握していないケースも多い。また、多くのバイク用品に採用されている反射材は後続車のヘッドライト到達範囲にいないと機能しないとう弱点がある。ところが、このインテンションオールシーズンELジャケットの発光パネルを点灯して走行すると後続車や併走車が適切な車間距離を保ってくれることが実感できる。これはジャケットの背中、ドライバーの目線の高さに近い位置で横いっぱいに広がったEL発光パネルが、ライダーを含むバイク全体を大きく見せる効果があるためと思われる。また、LEDなどとは異なり、EL発光パネルの放つ光りには方向性がないため併走車からも非常によく見える。スイッチによって点滅モードを選択すれば、ドライバーから注視されるという効果も加わり、夜間走行の安全性はより高まるだろう。止むを得ずエンジンを止めて地図を確認するという場合でも、パネルを点灯しておけば後続車に引っ掛けられるという危険性もかなり軽減されるに違いない。

信号待ちなどのちょっとしたタイミングでEL発光パネルを点灯できるように、スイッチがもっと操作しやすい位置にあれば良かったと思うが、何れにしてもアクティブセーフティを向上させるアイテムとしてこのインテンションオールシーズンELジャケットは画期的だ。防寒インナーは薄手で厳寒期のツーリングには向かないが、その時期を除けば年間を通じて着用できるのでコストパフォーマンスも高いと感じた。