ミシュラン パワーピュア

掲載日:2010年09月21日 バイク用品インプレッション    

バイク用品インプレッション

ミシュランが投入したニュータイヤ
パワーピュアに込められた真意とは…

近年、スポーツバイクは著しい高性能化を遂げているが、それを可能とした立役者はなんといってもタイヤである。ご存知の通り、タイヤは「走る」「曲がる」「止まる」という基本的な機能を最終的に担う最も重要なパーツだ。しかも、バイク用タイヤの接地面積はわずかに名刺程度。これで強大な駆動力や制動力を受け止め、旋回に必要なグリップも得ているのであるから、その重要性は誰にでもご理解いただけるだろう。

そのバイク用タイヤに関して近年最も注目されたテクノロジーといえば、特性の違う複数のコンパウンドを1本のタイヤに使用する、ミシュランで言えば“2CT(2コンパウンドテクノロジー)”と呼ばれる技術だ。詳しい方ならご存知かと思うが、ミシュランはこの分野のパイオニアとも呼ぶべき存在で、この技術の実戦投入を開始したシーズンから、各モータースポーツの世界での躍進ぶりには目を見張るものがあった。今年、そのミシュランから注目すべきニュータイヤ、「パワーピュア」が発売された。2CTが採用されていることはもちろんだが、既にオンロード用タイヤに分厚いラインナップを持つ同社が敢えてこの銘柄を追加するからには、そこには大きな意味が込められているはずだ。実際に車両に装着して、じっくりとテストしてみることにした。

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2CTだけではない
パワーピュアのアドバンテージ

せっかくハイグリップタイヤを装着しても、ワインディングやサーキットまでの自走を繰り返すうちに、トレッドのセンター付近ばかりをすり減らしてしまったというのはよくある話しだ。こうした事情はレースの現場でも同じことで、元来スポーツバイクがタイヤに求める性能はトレッドのセンター付近と両サイドでは異なっている。接地している時間が長いセンターはグリップだけではなく耐久性も考慮しなくてはならないし、バイクがバンクしているときに接地する両サイドはできる限りグリップを重視したい。こうした相反する要求を満たす技術が2CTというわけだが、パワーピュアの特徴はグリップ重視のコンパウンドを使用した領域を大幅に拡大したことである。これまではタイヤの両端、フルバンクしたときに接地する分部をグリップ重視のコンパウンドとし、公道では最後のひと寝かせで役立つ保険的な意味合いが強かったが、パワーピュアは違う。

モータースポーツ界での活躍も有名なミシュラン。伝統的にタイヤの軽量化を重視してきた数少ないメーカーだ。

モータースポーツ界での活躍も有名なミシュラン。伝統的にタイヤの軽量化を重視してきた数少ないメーカーだ。

リアタイヤは全体の80%(=両サイド各40%)がグリップ重視のコンパウンドとされ、フロントも全体の50%(=両サイド各25%)がソフトコンパウンドとなっている。つまり、一般ユーザーもグリップ重視の領域を十分に使える設計になっているのだ。また、LTT(ライト・タイヤ・テクノロジー)による軽量設計も注目すべき特徴だ。2CTなどのキャッチーな要素と比較すると地味なポイントだが、タイヤを含むいわゆるバネ下重量の軽減がもたらすメリットは計り知れない。高性能サスペンションや軽量ホイールはハンドリングやロードホールディングに好影響をおよぼすが、タイヤの軽量化にはそれに匹敵する効果が期待できるのだ。

軽量化とグリップ重視のコンパウンド
そのメリットを誰でも体感できるパワーピュア

パワーピュアをテスト車両に装着して走り出すと、いつものタイヤ交換後のフィーリングとは異なることに気付く。従来であればトレッド面の厚みがリセットされたことによるゴムそのものの感触を強く感じるのだが、パワーピュアはそれが少ない。直立付近は粘りが少なく比較的サラッとした走行感だ。これにより、低速でも路面の荒れやアンジュレーションにめっぽう強く、不安定感が少ないうえに直進性も良好。ニュータイヤに履き替えたという実感が少ないのがやや寂しいところだが、逆に言えば履き慣れたタイヤのように違和感がない。ところが、しばらく直進し最初の交差点を右折しただけで軽量タイヤのメリットが早くも現れた。ニュータイヤなのでバンク角を小さく抑えたつもりだったのだが、ハンドルバーにスッと抵抗なく舵角が付き、そのレスポンスも極めて正確。新品タイヤにありがちな感覚とのズレがほとんどなく、意図した方向にバイクが進む。また、情報量がこれまで経験したタイヤとは比較にならないくらい多いことにも気付いた。それは舗装の質の微妙な変化もわかるほどで、コツコツとした感触はまるで路面を手で撫でているかのよう。軽量タイヤによるバネ下重量と慣性力の軽減効果が如実に現れているという印象だ。タイヤの「皮剥き」は退屈なものだが、あまりの操縦性の良さに気を良くしてしまい、あっという間に終了してしまった。

慣らしを終え高速道路やワインディングを走るようになってからも、この正確無比なレスポンスと情報量の多さという特徴に変化はない。しかし、大きな感銘を受けたのがグリップの良さだ。やはりバンク中のグリップ感が高いという安心感は何物にも代え難い。かつて同社のパワーワンを公道で履き潰した経験があるが、パワーピュアにはそれと同等の信頼を感じることができる。柔らかいトレッド面のゴムが路面にめり込み、キャンバースラストを活かしながらグリグリと旋回。速度を上げても狙い通りのラインにバイクを簡単に導くことができるシュアーなハンドリングと相まって、コーナーリングが実に楽しい。残念ながら荷重でタイヤを十分に押し潰して乗るほどの腕はないが、それでもこのタイヤの絶大な安心感は十分に伝わってくる。これまでタイヤのセンターばかりを擦り減らしてきたのでよく分かるのだが、パワーピュアがセンターの20%を耐久性重視としているのはスポーツツーリングタイヤとして実に的を得た設定だと思う。これであれば気兼ねなくツーリングにも出かけられるし、グリップを重視したコンパウンドの威力を誰でも実感できるはずだ。偶然にも豪雨の走行テストもできたが、センター付近の排水性の良さそうなパターンもかなり有効という印象だった。決して安価なタイヤではないが、多くの人がその投資に満足することだろう。

比較的浅いバンク角でもグリップ重視のコンパウンドの威力を堪能できる。硬さはミディアムとソフトの中間。

比較的浅いバンク角でもグリップ重視のコンパウンドの威力を堪能できる。硬さはミディアムとソフトの中間。

フロントタイヤは両サイド25%ずつにソフトコンパウンドを配置。グリップとともに正確なハンドリングを実現。

フロントタイヤは両サイド25%ずつにソフトコンパウンドを配置。グリップとともに正確なハンドリングを実現。

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ミシュラン パワーピュア

軽量タイヤ技術LTTが採用されたフロントタイヤ。タイヤの軽量化は、ブレーキディスクの4倍、ホイールの3倍の慣性力軽減効果をもたらす。

軽量タイヤ技術LTTが採用されたフロントタイヤ。タイヤの軽量化は、ブレーキディスクの4倍、ホイールの3倍の慣性力軽減効果をもたらす。

LTTにより構築されたリアタイヤ。キャッププライにはスチールの5倍の強度を持つアラミド繊維だ。トレッド面ゴム厚も従来品と同等。

LTTにより構築されたリアタイヤ。キャッププライにはスチールの5倍の強度を持つアラミド繊維だ。トレッド面ゴム厚も従来品と同等。

走行後の前輪。フロントタイヤのグリップを気にするライダーはぜひともパワーピュアを試してほしい。安心感は絶大だ。

走行後の前輪。フロントタイヤのグリップを気にするライダーはぜひともパワーピュアを試してほしい。安心感は絶大だ。

同じく走行後の後輪。この写真からもトレッド面センターの耐久性が高く、両サイドのグリップが高いことが分かる。

同じく走行後の後輪。この写真からもトレッド面センターの耐久性が高く、両サイドのグリップが高いことが分かる。

パワーピュアのフロント用は、120/60 ZR 17 M/C (55W) TLと120/70 ZR 17 M/C (58W) TLの2種類。多くのスーパースポーツに適合する。

パワーピュアのフロント用は、120/60 ZR 17 M/C (55W) TLと120/70 ZR 17 M/C (58W) TLの2種類。多くのスーパースポーツに適合する。

リアは160/60ZR17 M/C (69W) TL 、180/55ZR17 M/C (73W) TL、190/50ZR17 M/C (73W) TL、190/55ZR17 M/C (75W) TLの4サイズを展開。

リアは160/60ZR17 M/C (69W) TL 、180/55ZR17 M/C (73W) TL、190/50ZR17 M/C (73W) TL、190/55ZR17 M/C (75W) TLの4サイズを展開。

ミシュラン パワーピュア

ミシュランが最新のテクノロジーを使い、高性能バイクのために開発したプレミアムスポーツタイヤ。軽量設計LTTによるバネ下重量の軽減と、誰にでも高いグリップを実感できる2CTによる優れたコンパウンド配置が魅力。

価格/オープン価格

問合せ先/日本ミシュランタイヤ

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