【ヤマハ NMAX125 試乗記】多岐に渡る改良で、初代を凌駕する性能を獲得

掲載日:2021年12月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/伊井 覚

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YAMAHA NMAX125

既存のスクーターとは一線を画する
センタートンネル構造と大径ホイール

近年の日本市場において、125ccスクーターに最も力を入れている日本のメーカーは、おそらくヤマハである。何と言っても現在の同社のラインアップには、利便性と経済性に優れる前後10インチのアクシスZ、スポーツ指向のユーザーから絶大な人気を誇る前後12インチのシグナスX(2021年12月からは、後継車のシグナス・グリファスが登場)、そしてMAXシリーズの末弟に当たる前後13インチのNMAXと、各車各様の個性を備えた3台の125ccスクーターが並んでいるのだから。なおアクシスZとシグナスX/グリファスがオーソドックスなフラットフロアであるのに対して、NMAXは良好なホールド感が得やすく、スペース効率に優れる(フレーム剛性の確保が容易で、重量物であるガソリンタンクを理想的な位置に設置できる)、センタートンネル構造を採用している。

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ちなみに2016年のデビュー以来、NMAXの好敵手と世間で呼ばれているのが、ホンダが2010年から発売を開始したPCXである。その一番の理由は、基本設計を共有する兄貴分のNMAX155とPCX150(2021年からは160)が存在するからかもしれないが、既存の125ccスクーターとは一線を画する高級感が味わえることや、大径ホイールとセンタートンネル構造を採用することも、2台に共通する要素。なお日本市場での販売台数はPCXが優勢のようだが、PCXが2018年と2021年に行った大幅刷新は、NMAXへの対抗意識が多分に感じられるものだった。

ヤマハ NMAX125 特徴

ライバルと同様の装備を導入しながら
運動性能にもきっちり磨きをかける

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2021年型で第二世代に進化したNMAXの特徴として、ヤマハがプレスリリースで筆頭に挙げているのは、①スマホと接続してさまざまな機能が楽しめるYコネクト、②トラコンを採用すると同時に平成32年排出ガス規制に適合したエンジン、③静かな始動を実現するスマートモータージェネレーターシステム、④低燃費に貢献するアイドリングストップシステムなどで、②~④はPCXが先鞭を付けた機構である。さらに言うなら、表示面積を拡大した液晶メーターや、容量を0.5L拡大したガソリンタンク、キーレスエントリーシステムの導入などからも、利便性という面でPCXに迫ろうという意識が伺える。

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ただし2021年型NMAXは、運動性能にもきっちり磨きをかけているのだ。まずフレームは最新技術を投入した新作だし、ホイールはF:約17%/R:約12%の軽量化を実現。もちろんそれらの変更と歩調を合わせるように、前後ショックやブレーキも見直されているし、エンジンに関しては新しい排出ガス規制に対応しながらパフォーマンスを落とさないため、吸気バルブやシリンダーヘッド、ピストンなどの設計を一新している。また、NMAXらしさを維持しつつも、シャープで精悍になった印象の外装も新作で、よくぞここまで……と言いたくなるほど、2021年型NMAXは大改良を受けているのである。

ヤマハ NMAX125 試乗インプレッション

硬さや唐突さを感じた初代とは異なり
エンジンも車体も滑らかで優しい

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あれ、ちょっとPCXっぽくなったのかも。それが、二代目NMAXに対する僕の第一印象だった。と言うのも初代NAMXは、よく言えばスポーティ、悪く言うならスパルタンな特性だったのだ。具体的な話をするなら、エンジンは全域で力強い加速が味わえる一方で、振動がやや多く、スロットル開け始めの反応が唐突(と言うほどでもないのだが)に感じることがあったし、車体は軽快かつ俊敏でありつつも、場面によっては硬い?という印象を抱くことがあった。ところが二代目はエンジンも車体も滑らかで優しくて、誤解を恐れずに言うならPCXを思わせる、ラグジュアリーさを身に着けていたのである。

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ただし距離が進むに連れて、その印象は徐々に変化していくこととなった。と言っても、スパルタンな特性が蘇って来たわけではない。二代目はやっぱり滑らかで優しいフィーリングで、そのおかげで渋滞した市街地は非常に走りやすかったのだけれど、初代とは異なる手法で、新型は抜群のスポーツ性を獲得していたのだ。

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中でも僕が感心したのは、挙動の変化がわかりやすい柔軟なシャシーだが、開け始めの反応が穏やかでも以後の加速が鋭くなったパワーユニット、ABSの作動感がナチュラルになると同時にコントロール性が向上したブレーキ、路面の凹凸を通過した際の収束が早くなった前後ショックなども、新型のスポーツ性を語るうえでは欠かせない要素。もし初代と二代目を同条件で走らせたら、間違いなく新型のほうが、安全に速く走れるだろう。

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さて、何だか誉めてばかりの展開になってしまったが、真面目な話、二代目NMAXにはコレといった弱点が見当たらないのである。スポーツ性以外の要素を考えてみても、フロントポケットの増設やヘッドライトの光量アップ、スクリーンの見直しによる防風効果の向上など、歓迎したくなる改善がいろいろとあるし、初代のオーナーなら、キュルキュル音を伴わない静かな始動、状況に応じて停止のタイミングが変わる、頭のいいアイドリングストップに感心するはずだ。

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そんな二代目NMAXにあえて異論を述べるなら、もともと軽くなかった車重が、+4kgの131kgになったことが挙げられるものの、軽さを求めるライダーに対して、ヤマハはアクシスZ:100kgとシグナスX/グリファス:119/125kgを準備しているのだから、その点に文句を言うのは野暮な気がする。

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ヤマハ NMAX125 詳細写真

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LEDヘッドライトは、初代の3灯式から、2眼6灯式に進化。ロービームでは上段4灯、ハイビームではすべてが点灯する。

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カバードタイプのハンドルはライバルのPCXよりやや高めの印象で、足を前方に投げ出すライポジを取ると、ちょっとクルーザー的な感触が味わえる。スクリーンはエッジ部の角度を初代より立てることで、防風性能が向上。

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液晶メーターは丸→変形角型に変更。専用アプリのYコネクトをインストールしたスマホとペアリングすれば、SNS/E-Mailの通話着信を上部のインジケーターに表示できる。

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イグニッションはスマート式で、ハンドルロックを行う際もキーの差し込みは不要。メインスイッチの下部にはシートとフューエルリッドのロック解除ボタンが備わる。

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初代では左側のみだったフロントトランクは、新型では左右に設置。右側はリッド付きで、左側にはシガータイプの12V電源ソケットが備わる。

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シート高は765mmで、この数値は現代の125ccスクーターでは平均的。もっとも車重が決して軽くないうえに、構造的に足が左右に開くので、身長が170cm以下のライダーは足つき性に不満を感じるかもしれない。

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シート下のトランクスペース容量は、初代より1ℓ少ない23ℓで、最大積載量は5kg。ヘルメットは逆さまで収納するのが前提で、形状によっては収まらないことがあるようだ。開閉を穏やかにするため、ヒンジ部には2本のスプリングを配置。

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センタートンネルを挟むように配置されたフットスペースは、自由度が高い構成で、さまざまなライディングポジションに対応。

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駆動系は初代の基本構成を踏襲しているものの、Vベルトやセンタースプリング、クラッチシューなどは新規開発。

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可変バルブ機構のVVAを備えるブルーコアエンジンは、排出ガス規制への対応を念頭に置いて、シリンダーヘッドやピストンなどを刷新。スロットル関連部品の見直しで、扱いやすさが格段に向上した。

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ホイールは前後13インチで、純正指定タイヤはダンロップ・スクートスマート。テレスコピック式フォークのインナーチューブ径は30mmで、トラベル量は100mm。

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ブレーキは前後ともφ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーで、ABSは2チャンネル式。

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バネレートを見直したリアショックは、工具を使用することなく、2段階のプリロード調整が可能。トラベル量は85mm。

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