【ホンダ CT125 ハンターカブ 試乗記】「余裕」を楽しむアウトドア・カブ、CT125 ハンターカブはまさに時代が望んだモデル

掲載日:2020年08月17日 試乗インプレ・レビュー    

写真・取材・文/稲垣 正倫

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HONDA CT125 HUNTER CUB

1981年発売のCT110を引き継ぐ形で登場した、大人気のCT125ハンターカブ。ベースとなったC125をトレッキング向けにアップデートし、リアブレーキをディスク化、吸排気まわりもオフロード・荷物運搬用に特化した特性を持つ。

懐古主義と流行のケミストリー

2019年の東京モーターショーに参考出品されて以来、その発売が待ち望まれていたCT125ハンターカブ。カブフリークの熱い視線は当然ながら、この10年ほど乗り物界隈だけでなく、ファッションや、ライフスタイルで中心的テーマになりつつある「アウトドア」にストライクな容姿が、多くの世代やファン層をわしづかみにした。

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先代CT110と同様に、エアクリーナーのインテークを車体上方に設置する、あるいはシート高が許す限りサスペンションを延長したことなどのリアルなオフロード仕様も、大きな魅力。上質な走行性能と、「道具」としての魅力を兼ね備えた本物志向のカブとして、今後も人気を博すはず。

ホンダ CT125 ハンターカブ 特徴

本物には、理由がある
カブの歴史に加わった新章

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先代のCT110に人気があるのはなぜだろうか。日本が誇る、マスターピースの多くは、その本物の機能性に輝かしい魅力を持っている。アイスホッケーのパックにしても壊れないGショック、結果を出せるアシックス、そして世界1億台の記録を持つカブ。CT110も、その本物たる機能性を多分に持っているからこそ、オートバイ史におけるマスターピースとして認知されている。

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発売されたばかりのCT125ハンターカブも、まさにその魂を継いだモデルだと言える。有名だった副変速機こそついていないが、カブらしからぬアップマフラーに、エンジンを飛び石から守るためのアンダーガードとアンダーフレーム、プレスカブをうわまわる巨大なキャリア……。そして、現代によみがえったCT125は、前後ディスクブレーキ化され、灯火類もLEDを完備、もちろんフューエルインジェクションで、どんなコンディションでもエンジンが始動し、パワフルに走ってくれる。ベースとなったC125からは、フレームの細部にいたるまで、トレッキングに対応する剛性変更が施されているし、エンジン特性もC125とはまるで違っていて低中速トルクに振ったもの。これこそ、本物のトレッキングカブだ。

ホンダ CT125 ハンターカブ 試乗インプレッション

「大人の余裕」がちょうどいい
リアル・アウトドア・バイク

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またがった瞬間に感じることは、このCT125ハンターカブが、歴としたオフロードバイクであるということだ。ジープの形をしていながらも、2WD FFで土の上は想定していません、というSUVとはワケが違う。まず、ハンドルだ。オフロードバイクのハンドルは、極めてセンシティブな操作デバイスで、ちょっとした角度で「荒れた路面のショックを押さえ込めるかどうか」が決まってしまう。オフロードを想定しないアドベンチャーバイクなどは、このあたりがツーリングに向いた絞りの深いロードバイク形状のモノになっているが、ハンターカブのハンドルはまさにオフロードバイクのソレ。街中を走っていても、オフロードバイクに乗っているフィーリングは、失うことがない。

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ディメンションも、通常のカブとは違う。C125比較でホイールベース+10mm、シート高+20mmの新たなサイズ感は、カブ観をくつがえさせるほどの「どっしり感」がある。普段筆者はCC110クロスカブに乗っているのだけれど、これはまるでCC110とも違うものだと感じた。CC110に足りない「オフ成分」が補われたものだと解釈できるし、さらには価格の差額分をはるかに超える、高級感もある。

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車体から伝わる、上質さはアンダーボーンフレームらしくないもの。サスペンションの減衰性能の高さもあるのだろうが、ガシャガシャとしたチープさとは無縁のものだ。キーを回す時ですら、上質に減衰を効かせた回し心地。「ちょっといいバイクを手に入れたな」と思えるだろう。

乗り出してみると、エンジンはCT125専用のセッティングなのだということが、よくわかる。スロットルに対するアタック感や、レスポンスはさして鋭くは無く、おだやかだ。単気筒の味のある中型オートバイのように、ストトトトと走る。回していっても、どこかで盛り上がるような特性ではなく、少しずつおだやかに回転が上昇するが、遅いというわけでもない。ちゃんと低中速トルクがのっていることを感じ取れる。一方で、高回転域は若干苦手な分野だと言って良いだろう。実はクロスカブだと、わりとレブ域までまわしながら街中を走るのが楽しかったりする。速度域も低く、安全だが、少しスポーティなのだ。ハンターカブは、もっとおとなしい。「そんなに頑張らなくても、楽しいよ」と言っているようだ。

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だから、あくまでクロスカブ比較で言うと、ディスク化された両ブレーキは、かなりオーバースペック。ハンターカブが誘う走り方では、このディスクの本来の力を、半分ほどしか使わないだろう。でも、そのことがすごく上質感や安心感に繋がっているのも事実である。

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ちなみに、参考までに土の上でもライディングを楽しんでみたが、前述してきた各部の「余裕」はオフロードの上でこそ、とてもいいフィーリングになる。ABSはオフロードでは嫌われがちだが、これだけ余裕があれば、まったく問題を感じない。溢れるトルクや、おだやかな特性は、リアタイヤを振り回すにも、怖さを一切感じないモノで、とてもコントローラブルだ。

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このCT125ハンターカブは、少なくともアンダーボーンフレームのいわばセミスクーター式モペッドとは思えない出来。それに、リアルなアウトドアツールとしての本物感が合わさって、昨今の売れ行きのよさも、納得がいくというものだ。

ホンダ CT125 ハンターカブ 詳細写真

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前後タイヤはCC110クロスカブと同様、IRCのGP-5が採用されている。オンロードの安定性とオフロードの走破性を併せ持つミニモトタイヤだ。サイズは前後ともに80/90-17 44P。

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ブレーキは前後ともにディスクブレーキが奢られている。パワー的には決してマストな装備ではないが、おかげでだいぶ余裕を持つことができ、高級感や所有満足度の向上にも一役買っている。

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C125ベースの空冷4ストロークOHC単気筒124ccのエンジンを搭載。最高出力は6.5kW(8.8PS)/7000rpm、最大トルクは11N・m/4500rpm。排気量こそ違うが、CC110クロスカブに比べて低速トルクに振られている特性だ。

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外見的な一番の特徴であるアップマフラー。地面に凹凸が多く、飛び石などでの傷を受けやすいオフロードでの走破性を意識したデザインだが、単純にカッコイイ。ヒートガードもデザインに大きく貢献している。

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ステップはラバー付きだが滑り止めの歯がついたスチール製。ラバーキャップは簡単に脱着可能で、よりグリップ力が求められる激しいオフロードにも対応できる。

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リアキャリアは驚くほど幅広い。これなら収納ボックスはもちろん、流行りの配達業者のバッグなども容易に安定して搭載することができるだろう。もちろんキャンプやアウトドア用品の積載にも威力を発揮する。

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燃料タンクはシート下に給油口があり、容量は5.3L。モナカ成形の跡をわざと残し、黒いラバーで保護しているあたりがにくいデザインになっている。

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同じ「カブ」でもC125スーパーカブはスマートキーを採用しているのに対し、ハンターは当然ながらアナログキー。こちらも便利さよりも味や醍醐味を追求して残した装備だろう。

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カブのアイコンとも言える丸型ヘッドライトをはじめ、全ての灯火類にはLEDが採用されている。夜の街はもちろん、街灯の少ない田舎道でも安心な光量を確保している。

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リアまわりの灯火類は四角形で統一。ウインカーは前後ともにCT110を彷彿させる正方形ながら、中身はしっかりLEDなあたりに、強いこだわりを感じさせる。

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ある意味、CT125のキモとも言えるのがエアクリーナー。水没を避けるために、ハイマウント化、吸い込み口をキャリアに接地していたCT110のアイデアを踏襲する。

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リアキャリア下には車載工具キットが収納されているボックスが付属。

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最小限の情報のみを表示するコンパクトな丸型メーター。速度、走行距離、ガソリン残量、警告ランプ類のみとなっている。

試乗ライダー プロフィール
稲垣 正倫
株式会社アニマルハウス代表。雑誌編集者を経験してから独立、編集プロダクションを設立。エンデューロを中心に、モトクロス、ラリーなどオフロード競技に強い。国内だけでなく海外レースにも積極的に取材に訪れている。ライダーとしてはクロスカブからオフロードレーサーまで幅広く乗りこなす。

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