【SYM オービット スリー125 試乗記事】ヨーロッパでも人気の台湾スクーター、SYMの通勤用エントリーモデルは「隠れた優等生」だ

掲載日:2020年01月28日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

【SYM オービット スリー125 試乗記事】ヨーロッパでも人気の台湾スクーター、SYMの通勤用エントリーモデルは「隠れた優等生」だの画像

SYM ORBIT III 125

SYM(エス・ワイ・エム)は台湾・三陽工業(SANYANG MOTOR)が製造・販売する二輪車のブランドで、台湾国内ではKYMCO、ヤマハに次ぐシェアを持つ。最近ではヨーロッパでの人気も高く、世界各地での登録台数は90ヵ国以上、1,300万台を超えるグローバルメーカーに成長している。日本では2017年で販売が終了していたが、ファンティックやランブレッタの輸入販売を手がけるサイン・ハウスが日本総輸入代理店となり、販売を再開。その第1段となるのが、50/125ccのスクーターOrbit III(オービット スリー)だ。今回は原付2種となる125ccモデルに試乗し、その魅力や走りをチェックしてみた。

オービット スリー125 特徴

台湾の人気メーカーが日本に再上陸
最初のモデルは手堅い実力派!?

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今や台湾は世界でもトップクラスの技術力を誇る工業国であり、その先進性についても評価されている。そんな台湾の中で、もっとも古くからエンジン・輸送機器製造を手がけてきたのが三陽工業だ。以前はホンダとの協業、OEM生産を請け負い、現在でも韓国・現代工業の生産の受託を行うなど、技術力には定評がある。実際、現在ヨーロッパで販売されているモデルは全て現地の厳しい規格であるEURO-4をクリアしている。

今回試乗したオービット スリー125は、空冷4ストローク2バルブ単気筒124.6ccエンジンを搭載。前後12インチホイール、フロントディスクブレーキを採用しており、SYMのスクーターラインナップの中では、通勤用などのエントリーモデルとされる車両だ。ちなみにオービット スリーには50cc版と125cc版があり、125ccには前後連動のコンビブレーキが採用されているほか、基本的な車体構成は同じ仕様となっている。

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その車体だが、大きさは全長1,915mm/全幅680mm/全高1,125mm、車両重量120kgで、これはヤマハのシグナスX(全長1,890mm/全幅682mm/全高1,120mm、車両重量119kg)と同程度の車格で、いわゆる“通勤快速系”のマシンとしては標準的な大きさといえるだろう。

外観デザインはエッジのきいたフォルムに大きめのヘッドライトレンズ、ハンドル前部にマウントされたウインカーなど都会的で洗練されたもの。フラットなフロアは乗り降りしやすく、ユーティリティ面もグローブボックスこそないものの、USBアクセサリーソケットを備えた大容量のシート下トランクやコンビニフック、サイドスタンドなどを標準で備えており、実用的には必要十分な装備を持っているといえる。

オービット スリー125 試乗インプレッション

スルスルっと加速する滑らかエンジン
コスパとトータルバランスに秀でた1台

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実際に跨ってみて最初に感じたのは、シートの座り心地の良さだ。お尻がムニュっと沈むような柔らかさでありながら腰があるという、まるで低反発クッションのような感触なのだ。硬めでスポーティなシートと好き嫌いが分かれそうだが、個人的にはこのふんわりと包み込むようなシートはお気に入りのポイントだ。

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ライディングポジションは、普通に座るとハンドル位置が近めでコンパクトな感じもするが、クルージング態勢に入って足をフロア前方に出せば、ゆったりとしたポジションが取れる。信号ダッシュなど、ゼロからのスタートはパワフルで力強く、40km/hまではあっという間で、その後60km/hまでも息継ぎ感なくスルスルっと加速していく。驚いたのは、エンジンの吹けあがりの滑らかさだ。不快な振動や、「いかにも頑張ってます」的なノイジーさがほとんどなく、力強いのにジェントルでシルキーな加速感は独特のもの。座り心地のいいシートとの組み合わせで、通勤・通学時の疲労はかなり少ないはず、と想像できる。

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ハンドリングは軽快な中にもしっとりと落ち着いたフィーリングを持ち合わせており、流れの速いバイパス状の幹線道路などでも安心してクルージングが可能だ。

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試乗した車両は借り受けた際にまだ150kmも走っていないバリバリの新車だったこと、そしてリアサスのプリロード調整もしないままだったこともあり、路面のギャップでは若干跳ね気味の印象があった。しかしサスペンション自体はスムーズによく動いているな、というのが伝わってくるもので、不快には感じない種類のコツコツ感だ。もう少し走行距離が伸びてサスペンションにアタリが出て、適切なプリロード調整を行えば、気にならないと思われる。バイパスのジャンクション状の分岐など、比較的速いスピードでコーナーリングが長く続くような場面でも、腰砕けにならずしっかりとサスペンションが路面に追従してくれるため、安心して走ることができた。また、コンビブレーキのおかげか、強めにブレーキングをしても前のめりになるなどの極端な姿勢変化がないので、ABSほどではないにしろ、かなりの安心感がプラスされている。

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試乗を終えた感想としては「隠れた優等生」というイメージだろうか。目立って突出したアピールポイントがあるわけではないが、軽快に走れてきちんと曲がり、止まるという、基本をきっちりと押さえ、トータルバランスに優れたマシン。これで20万5,000円(税抜)という価格だから、かなりお買い得感があるはずだ。もし「台湾製はちょっとなぁ……」と悩むのであれば、ぜひ1度試乗してみることをお勧めしたい。国産メーカーと比べても遜色のない性能と仕上がりに、きっと驚き、納得するはずだ。

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オービット スリー125 詳細写真

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ヘッドライトは35w/35wのハロゲンバルブを採用、照射範囲は広めだ。ウインカーはクリアタイプにオレンジバルブとなっている。

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アナログの指針式メーターはシンプルで読み取りやすいもの。燃料計はありがたいが、トリップメーターも欲しいところだ。

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ハンドルスイッチは車体側のカバーに埋め込まれているタイプ。パッシングスイッチを装備しているのは便利だ。

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ハンドル右側のスイッチはスターターのみ。上の空いたスペースにハザードスイッチを装備してほしいところ。

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50ccと125ccは車体が共通なため、見分けるにはナンバープレートを見るか、ライト脇に貼られたこのステッカーしかない。

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いたずらや盗難の抑止につながるシャッター付きキーシリンダーを装備。シートや給油口のオープンもワンタッチで可能。

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シートは柔らかいのに腰があり、座り心地がいい。表革はちょっとレトロな感じのものだ。がっちりとしたパイプ状のタンデムグリップを装備している。

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シート下のトランクスペースは大容量。帽体が大き目のSHOEI J-CRUISEⅡも収納可能で、さらに後方にスペースがある。

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トランクスペース内にはUSBアクセサリーソケットを装備。出力が2Aあるので、スマホの充電には十分だ。

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車載用の携帯工具はドライバーとプラグレンチのみというシンプルなもの。

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給油口は左側のハンドル下にあるため、給油の際に腰を曲げたりする苦労はない。メインキーの操作でパカッと開くタイプだ。

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フラットで広めのフロアは乗り降りしやすく、前方に足を置くスペースもあってポジションの自由度が高い。後方にはタンデマーが足を置くステップというか、スペースが設置されている。

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標準装備のサイドスタンドは最後までカチッと出るのではなく、途中まで戻るタイプなので駐車の際には少し気を使う。その分、発進時に上げ忘れても地面にガリっと引っかかる心配はない。

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フロントブレーキディスクは226mmのウェーブタイプ。リアブレーキも同時にかかるコンビブレーキを採用している。タイヤサイズは110/70-12で、チェンシン製を履く。

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マフラーのヒートガードは大きめとなっている。リアのタイヤサイズは120/70-12だ。

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リアブレーキはドラム式を採用。リアサスペンションはモノショックタイプで、3段階のプリロード調整が可能だ。

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ビルトインされたリアの灯火類は個性的で攻めたデザインを採用。バルブタイプだが効果的なレンズカットのため、被視認性は高い。

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テスターは身長170cm、足短め。オービット スリーのシート高は公表されていないが、片足、両足ともに指の付け根までしっかりと接地して踏ん張ることができるため、停車時にグラついたりする心配は皆無だった。

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