掲載日:2014年12月12日 試乗インプレ・レビュー
取材・写真・文/野岸“ねぎ”泰之
もともとはサーキットでのパドック用として生まれたという2ストローク・スポーツスクーターSR50の初代モデルは92年に登場。そのレーサーレプリカ的なコンセプトは欧州で人気となり、99年には燃料供給がインジェクション化、そして09年にはクリーンな排気や燃費向上、オイル消費率を減らすなど環境にも配慮した「Purejet」と呼ばれるモデルに生まれ変わり、ロングセラーとなっている。現在の国産モデルにはない、水冷2ストローク、50cc、ECU電子制御直噴エンジンというパワートレインを持つSR50だが、果たしてその走りはどのようなものなのか。使い勝手とともにチェックしていこう。
まず目を引くのは、レーシングイメージの強いアプリリアならではの外観デザインとグラフィックだ。レーサーレプリカを思わせるようなフロントマスクと、メーカーロゴやイタリアンカラーをうまく配したグラフィックに加え、前部に大きく口を開けたエアインテークや独特の取り回しのマフラー、イエローが映えるリアのモノショックサスペンションなどが、戦闘的かつ、いかにも速そうな雰囲気を醸し出している。
外観が速そうなイメージなので、走り以外の装備が貧弱かといえば、決してそんなことはない。足の前にはコンビニフック、そしてシートの前端部には、小物を収納できるポケットが存在する。シート下にはトランクスペースも設けてあり、フルフェイスヘルメットが1個収納できる容量を確保するなど、ユーティリティ面も忘れていないのだ。
ちょっと面白いのが、タンデムシートとタンデムステップを装備していること。日本では法律上、50cc未満のモデルでは2人乗りはできないので、公道上では意味のない装備に見える。だが、このマシン本来のレース場のパドックを移動するなど、クローズドな場所での使用を考えると、タンデムを想定していることはむしろ自然なことだろう。こんなパーツを見ながら、SR50の生い立ちに思いを巡らせつつ乗るのも、また楽しいものだ。