革のメリットをそのままに、気負わずに履けるクシタニのエクスプローラージーンズとは?

掲載日/2019年12月13日
取材協力/株式会社クシタニ
写真/井上 演 取材、文/佐賀山敏行(一間堂)
構成/バイクブロス・マガジンズ
ジャケットやブーツなど、革とバイクとは切っても切れない関係にあり、実際に愛用者も多い。しかし、ことパンツとなると……少しハードルが上がると感じるライダーも多いのではないだろうか?

革ジャンまでならカジュアルに着こなせても、革パンを合わせるとやはりハードな印象は否めない。そこでクシタニがリリースする「エクスプローラージーンズ」はいかがだろう? “ジーンズ”とは名ばかりで、じつは“ジーンズ風レザーパンツ”だというエクスプローラージーンズはデニムとレザー、それぞれの良いトコ取りをした逸品なのである。

水を弾いて、洗えて、伸びる!!
レザーの常識を覆すライダースパンツ

レザーのメリットといえば、ファッション性の高さに加え、安全性が挙げられる。引き裂き耐性の強さは、万が一の転倒からライダーをしっかりと守ってくれる頼もしい味方。さまざまな分野で技術が進歩しているなかで、今なお「レーシングスーツ=レザー」という現状をみても、その安全性の高さがよくわかる。

しかし、安全性の高さはわかっていても、革パンまでは……と躊躇してしまうライダーが多いこともまた事実だろう。ジャケットならまだしも、パンツにもレザーを合わせるとなると、ハードボイルドなイメージがあまりにも強くなりすぎるのだ。

そこで、革が持つ安全性を一人でも多くのライダーに提供したいと考えるクシタニが開発したのが「エクスプローラージーンズ」である。一見するとスタンダードなジーンズに見えるのだが、じつはステア牛革を使ったれっきとした革パンなのだ。

その風合いのポイントは特殊な製法にある。株式会社クシタニ 広報部の櫛谷信夫さんは言う。

「なめしの工程の途中で、細かな凹凸のある金型を革に押し込んで凹ませる。そして凸の部分だけをバフ掛けするのです。さらにその後、“水戻し”といって水でふやかすことで凹んだ部分が元に戻り、バフ掛けによって削れた凸部分と凹凸が逆転するのです」

これによってバフ掛けしたヌバック(細かな起毛加工)が凹み部分になり、銀面(なめしたままのきめ細かな皮革表皮)が上に出てくる。これがジーンズに見える独特の風合いを生み出すのだ。

また、この製法は風合いを生むだけでなく、銀面が上にくることによって十分な摩耗強度も担保されており、万が一の転倒時でも安心というわけだ。

「いくらデニム風に見せられても、革が持つ強度が損なわれたら意味がないですからね。革パンが持つメリット……強度はもちろん、シートグリップやニーグリップの強さなどはそのままに、いかにハードなビジュアルイメージを軽減するかが考えられています」

さらに一般的な革製品では考えられないような、さまざまな特徴を持つ革を数多く独自生産するクシタニならではの技術が、当然ながらエクスプローラージーンズにも採用されている。

以下にその特徴を紹介しよう。

(1)心地よいストレッチ性能

革製品はその性質上、ジャストサイズで着るとどうしても突っ張る部分が出てくるものだが、エクスプローラージーンズはスキニーパンツを思わせるほどのストレッチ性能を実現。これは革が本来伸びる方向に合わせて忠実に縫製を行なっているからであり、パンツだけでなくジャケットなど、同社の革製品すべてに通じる特徴。身体の動きに違和感なく馴染み、心地よい履き心地となっている。

(2)驚異の撥水性能

「クシタニ製品のなかではレインウェアの次に雨に強い」と櫛谷広報担当が断言するほどの撥水能力も大きな特徴。工程のなかで大量のフッ素を革に吸わせることで、驚くほどの撥水性を持っている。カジュアルな見た目だが、じつは全天候型のツアラーパンツなのだ。

(3)長時間履いても苦にならない軽さ

革パンといえば重たいイメージがあるが、エクスプローラージーンズはとても軽い。クシタニ製品はその多くが重量にこだわって作られているのだが、その中でもさらに軽いというから驚きだ。

(4)全自動洗濯機でガシガシ洗える

エクスプローラージーンズは革にも関わらず、洗濯機で洗うことができる。しかも乾燥機にかけても縮むことがないという。これまでメンテナンスが面倒だからと革製品を敬遠していた人にもおすすめできるのだ。

ちなみに、陰干しのあとに乾燥機にかけることで撥水性が戻るとのこと。乾燥機がなければ、タオルをかけて、その上からアイロン掛けでもOKだ。

以上がエクスプローラージーンズがすべてのライダーにおすすめできる理由。

さらに同製品は、通常のジーンズのように色落ちを楽しむことができるのも見逃せないポイントとなっている。

ただし、通常のデニムジーンズが2-3年で色落ちとともに穴が開いたりして寿命を迎えるのに対し、高い強度を持つエクスプローラージーンズの場合は10年以上履いているというオーナーも多い。すると色だけが抜けてしまうため、クシタニでは再染色加工を実施している。

通常は革をなめす「タイコ」を使って、パンツごと再度なめして染色するという。もちろんその際に使用する「タイコ」は、エクスプローラージーンズ再染色専用。全国から集まったさまざまなコンディションのパンツを、同社のターンナーが一度色を抜いてイコールコンディションに戻し、再度新品同様に染めあげるという。

「せっかく買っていただいたパンツは10年以上履ける製品なので、2-3年で再染色していただき、ずっと良いコンディションで履いていただきたい……そう思ってはじめたサービスなのです」と櫛谷広報担当。

そう、エクスプローラージーンズは常識を覆す革パン! ツーリングでガシガシ履いても、街乗りメインでカジュアルに履いてもOKな、オールマイティーな1本なのである。

INFORMATION

住所/東京都世田谷区瀬田3-15-9
電話/03-3708-3551
営業時間/11:00~20:00
定休日/水曜日

富士山をあしらったロゴマークが象徴的なクシタニの本拠地は、昔も今も静岡県浜松市。そう、ホンダやスズキ、ヤマハといったバイクメーカーと、創業の地を同じくしているのです。
バイク用のレザーウェアを手がけるようになったきっかけも、もともと革製品の製造販売を行っていたところに、あるバイクメーカーから、自社ライダー用のウェア製造を依頼されたことにあります。革ツナギ(レザー製レーシングスーツ)メーカーとしてのクシタニの出発点は、そんな要望に応えることだったのです。
記念すべき第一号のレーシングスーツが完成したのは、1955年のこと。さっそく浅間高原レースで着用したライダーからは高い評価を受け、その後の発展は誰もが知るとおり。世界グランプリシーンだけをとってみても、ワイン・ガードナーなど多くのレジェンドが愛用してきており、クシタニのレザースーツが、ライダーのいわば第2の皮膚として認められていることを証明しています。なお、KUSHITANIの革つなぎは、いまも浜松の自社工場において、一着づつ縫製されています。
現在は、レザースーツのほか、レザージャケットなどの革製品、テキスタイル(布地・織物)のウェア類を中心に、プレミアムブランドとして多くのライダーに親しまれています。
また、しっかりとした製品を供給しながら、サーキットの走行会などのイベントや、KUSHITANIカフェの運営など、バイクライフを楽しんでいただくための働きかけも行っています。