スズキの名車カタナ誕生話

掲載日:2017年04月03日 雑誌掲載記事ピックアップ    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部  画像提供/ロードライダー編集部

1980 IFMA GSX1100S PROTO TYPE

日本刀をモチーフに描かれたイメージイラストを
忠実に再現して世界の注目を集めた名車KATANA

1980年、当時の西ドイツで開催された「ケルンショー」に出展されたスズキのプロトタイプモデルが、スズキGSX1100Sカタナの前身だ。日本刀をモチーフにデザインされたこのモデルは、翌1981年にはプロトタイプのイメージをそのままに市販化され、世界中の注目を集めることになる。

カタナ誕生のきっかけは、ドイツのバイク雑誌『モトラッド』が1979年のVol.46誌面上で実施したデザインコンペだったという。参加したのはイタル・デザイン、ポルシェ・デザイン、そして当時は無名だったターゲット・デザインの3社。イタル・デザインとポルシェ・デザインがツアラーやコミューターを提案したのに対し、ターゲット・デザインはカフェレーサー的なデザインを提案。これがスズキの欧州市場担当者の目にとまったことがカタナ誕生の起点となった。

ターゲット・デザインは、当時のフォードやBMW(R90SやR100RS)を手掛けていたデザイナーのハンス・ムート、ポルシェ911や928のデザインを担当していたハンス=ゲオルグ・カステン、そして若手のデザイナーのヤン・フェルストロームにより1979年に設立されたデザイン集団。そこにスズキがコンタクトしたのが1979年末。そこからわずか9ヵ月でカタナのプロトタイプがケルンショーに出品されたことになる。それを可能にした要因としては、ターゲット・デザインがモトラッド誌コンペ用に作ったMVアグスタ"Motorrad"とカタナのプロトタイプがデザイン的に共通する部分が多かったことが考えられる。そのため、このMVアグスタ"Motorrad"がカタナの原点と呼ばれている。

スズキとターゲット・デザイン、この運命的な出会いとその化学反応によってGSX1100Sカタナは誕生した。工業製品にプロダクトデザインが採用されはじめた初期の時代、バイクもまた、新たな道を走り始めたのだ。

1970年代後半にターゲット・デザインが提案したデザイン。これからほどない1980年10月、西ドイツ(現ドイツ)・IFMA=ケルンショーで初めてカタナが姿を現した。この赤のデザインはイメージスケッチ。カウルがまだ一般化していなかった当時、世界に衝撃が走った。

国内仕様のカタログに差し込まれたハンス・ムートの言葉とイメージイラスト。

ハンス・ムート(1935年生まれ・写真撮影は1991年のGSX400Sカタナ発表で来日した時のもの)。カタナはムートとターゲット・デザインを共に立ち上げたフェルストロームの共同デザインで、スズキに提出したED(Europe Design)シリーズのうちのED2となる。

初期スケッチの形状をもって市販化されたGSX1100Sカタナ。スクリーンを装備しハンドルはセパレート。シートはタンデム側を上げた形状に変更。スイングアームとマフラー、前後オーバーハングはやや延長された。プロトタイプにスクリーンを付けただけではこの形状は完成しない。市販化までに、ターゲット・デザインとスズキの強い協力関係があったことがうかがえる。

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