小さな交換、大きな効果〜KATANAホイール+ブレーキまわりのカスタム効果〜

掲載日/2020年12月11日
取材協力/アドバンテージ
写真/森 浩輔 取材、文/中村浩史
構成/バイクブロス・マガジンズ
2018年、ドイツ・ケルンで開催されたインターモトでの衝撃の初登場から2年。KATANAは新しいファンを開拓し、空冷カタナ時代のファンをも巻き込んで、今やカスタムバイク界でも注目の存在になりつつある。そのKATANA、オーナーが気になるところと言えばフットワーク。このテーマをプロフェッショナルが解決した。

今回の取材車は、ショップ製作車ではなく、個人所有のカスタムバイク。オーナーの湯浅泰司氏はGSX1400用の油冷エンジンをGSX-R1100用アルミフレームに搭載してヨシムラボンネビルレプリカを作り上げたり、ホンダCB1100をベースに、ショップとコラボレーションしてCB1100「R」仕様を作り上げたツワモノ。

今回のKATANAも、自分なりに乗り込んで作り上げたい方向性を決め、各ショップに協力を持ちかけて進めているカスタムだ。
「空冷カタナもショップコンプリートを所有しているんですが、新型KATANAの走りにも興味があって購入しました。ただし、KATANAの走りにいろいろクセがあって、そこを僕好みにしていこうかな、というのがカスタムのテーマです」(湯浅氏)

最初に手を付けたのはライディングポジションだ。上体がアップライトなノーマルKATANAのライディングポジションを、よりスポーティに、弱前傾としたかったのだという。
「ハンドルポジションを下げるのに、空冷カタナの持つセパハンのムードに近づけたかったので、セパハン化しました。新型KATANAは、ハンドルを低くするのがすごく大変で、まずそこでかなり苦労しましたね」

新型KATANAをセパハン化する場合、問題になるのがハンドル切れ角とタンクとのクリアランス。切れ角を確保すると特徴的なフューエルタンクカバーにすぐに当たってしまうのだ。
そのため湯浅氏は、タンクカバーをクレイから自主製作。ハンドルも、各パーツショップの製品を取り寄せ、取り付け位置、角度を合わせていった。もちろん、ハンドル位置に合わせてステップ位置もアジャスト。自分で大まかな形を決めてからショップにオーダーするのが、いつもの湯浅流なのだ。
「ハンドル、シート、ステップの位置関係は理想的になりました。すると、少しハンドリングが変わって来たんですね。ハンドル位置を理想の位置に持ってくるとフロントフォーク長が足りなくなって、フロントフォークを延長してライザーで持ち上げているので、疑似ロングフォークになって、ハンドリングが重くなってしまったんです」

実際に試乗してみると、まずはポジションがしっくりくることが印象的だった。KATANAのノーマルポジションよりもやや上半身が前傾となり、ステップ位置もやや後退、高さも上がったことで、バイクとの一体感が増したように思える。グリップ位置は、ノーマルよりひとつぶん前に、ひとつぶん下がった印象。湯浅氏がこだわった位置だけに体格が似たような私にもしっくりきた。

ハンドリングの問題を解決すべく、湯浅氏が考えたのが軽量ホイールだった。
ホイール交換は、カスタムとしてはかなりハイレベルなものだ。ホイールという、バイクの「走る」ことに直結する回転パーツが軽量になることで、回転する物体は直立を保とうとする「ジャイロ効果」が減少、走りそのものがガラッと大きく変わるからだ。
「ハンドリングが重くなった分、ホイールで解決しようとしたんですが、まだ足りない。この先、セッティングを詰めていかなきゃならないところだと思っています」

走り出す前にバイクを押し引きしただけで、バイクの動きは別物。これはノーマルKATANAのスイングアームエンドにつけられたナンバープレートホルダーを撤去し、サイレンサーをヨシムラ製スリップオンに換装、前後ホイールをアドバンテージ製アルミ鍛造としているからだ。単純計算では、ナンバープレートホルダーとサイレンサーで約4kg、前後ホイールでも約4kg、計8kgほど軽量化されているという。
車両重量215kgのバイクが8kg軽量になったからと言って、大きくは変わらないと思われがちだが、軽量化された場所が車体下半分、さらに回転部品に集中していることで、数字以上に効果が出ていると言っていい。

走り出しても、この軽量化はハッキリと体感できる。転がりに抵抗がなく、加速/減速ともバイクをものすごく軽量化したかのよう。加減速だけでいえば、1000ccが600ccに感じられてしまう、そんな大きな効果だ。それでも、湯浅氏の言う「ハンドリングの問題」もよくわかる。ご本人は「ハンドリングが重くなった」と言うが、正しくは直進安定性が強くなりすぎていること。18〜19インチのフロントホイールを組んだような「立ちの強さ」が見てとれた。これは、ご本人もおっしゃっている通りフロントフォーク延長による変化で、まるでクルーザーモデルのよう。
けれど、これに軽量ホイールを組み合わせていることで、曲がるきっかけを与えてやると、そのバンクスピードが速いハンドリングになっているのだ。直進安定性は強いけれど、コーナー進入で車体がバンク、いったんステアリングに舵角がつくとスーッと寝ていく——そんな印象。ワインディングというより、高速道路で距離を稼ぐGTのようなキャラクターに仕上がっている。これがノーマルフォーク長だと、フットワークの軽さは段違いだろう。それでも湯浅氏は、KATANAを決してスーパースポーツ的に扱いたいわけではなく、フットワークの軽いツーリングバイクにしたいのだ、と今でもKATANAのセッティングを続けている。

他にも、ディスクローター+キャリパーが交換されていることで、ブレーキングも向上。これは、絶対効力というよりはフィーリングやタッチが上質になっている感じ。特にブレーキレバーを数mm引くだけでパッドがローターに触れ始めるのさえ体感できるほどで、レバーの握り込みにきちんと比例、ちょうど二次関数的に効力が立ち上がっていくのがよくわかる。

もちろん絶対効力も強力になっていて、これはおそらくローターとキャリパーだけの仕事ではない、軽量ホイールの効果も大きいはず。一般道でもワインディングでも、ブレーキがコントローラブルなバイクは、ストレスがなく快適だ。この変更で、KATANAはまるで違うキャラクターに仕上がっている。走り出し、ブレーキングの動きが軽く、曲がろうとするとスッとバンクするKATANA。その動きがすべて上質で、まるでエンジンチューンと20〜30kgもの軽量化を果たしたフルカスタムにも感じられるのだ。これをボルトオンカスタムで実現できるところが、ホイール+ブレーキカスタムの効果なのだ。

このカスタムKATANAの要点を締めている軽量ホイールとディスクローター、キャリパーはアドバンテージによるもの。代表である中西さんは、常にバイクの「コントロール性の重要さ」をテーマにパーツを開発している。
「市販されるバイクはどんどん高性能化されています。でもそれは主に動力性能で、そこをいかにコントロールするか、というテーマより先を行ってしまっている。そこに、軽量ホイールは、バイクのコントロール性を上げるのに効果的なんです。扱うということは、ライダーがどうバイクを動かすか、ってこと。それにはハンドリングで思い通りに動かせることがいちばんですからね」(アドバンテージ 中西さん)

サイレンサーが変更されているとはいえ、走りの変更はほとんど足回り。ホイールとブレーキまわりの交換というと、やはりかなりの出費は覚悟しなくてはならないが、その効果はじゅうぶん。KATANAに限らず、愛車のハンドリングに違和感があったらホイール交換は小さな変更、大きな効果への近道なのだ。

空冷カタナの面影を求めてセパハン化。スクリーンも数社の製品を試して、アクリポイント製品を使用している。ウィンカーはノーマルのポジション球の位置に移設。別体ウィンカーを撤去するのはKATANAチューンの定番になりつつある。

ショートテールとしたKATANAを、あえてロングテールに大変更。スタイリング重視の変更だが、タンデムシート下に小物入れスペースも作ることができた。この製品はオオノスピードとのコラボで生まれ「GTテール」として市販化された。

ロングテールとしたことでシートもロングとなり、ライダーの体重移動もしやすくなった。シート形状も、シットポイントの高さ=ライダー荷重に関係する場所だけに、形状やシート厚さを数種類もトライ。納得いく形状となったという。

リアサスはメイドインジャパンのアラゴスタサスペンションを採用。まだKATANA用はラインナップされていないが、プリロード、伸/圧側減衰力調整が可能なフルアジャスタブルタイプをステー製作でワンオフで装着している。

位置や高さを調整しながら、フロントフォーク延長キットを組み、セパレートハンドル化。トップブリッジはノーマルを残して、取り付け剛性を変えず、上面に3Dプリンターで製作したプレートを取り付けてある。

ホイールはアドバンテージ製アルミ鍛造EXACT Racing10のセミレーシングタイプ。ブレーキまわりはアドバンテージNISSIN製のモノブロックキャリパー、マスターシリンダー、アドバンテージ製ダイレクトドライブディスクを使用している。

INFORMATION

住所/兵庫県尼崎市昭和通9-324
電話/06-6412-6145
営業時間/10:00~18:00

「ADVANTAGE」はスズキグループでの経験を基に、DORNAやIRTAの主宰する世界最高峰のモータースポーツ『MotoGP・ワールドスーパーバイク・アジア選手権・AMAスーパークロス』に一石を投じ、レース向けに開発したパーツを世界標準とする事を目的として運営しております。
ADVANTAGE EXACT:NISSIN:SHOWA:FCC:DID:KYB:NHK:XAMなど超一流メーカーとコラボし、世界最高峰のモータースポーツで得たデータを軸に製品に活かし、ADVANTAGEのエッセンスを注ぎ込んだオリジナルパーツを世界に発信いたします。