クッション性を維持したまま足つき性を向上、トリシティ300のローダウンシートを試してみた

掲載日/2020年10月14日
取材協力/株式会社ワイズギア
撮影、文/野岸泰之
構成/バイクブロス・マガジンズ
フロント2輪、リア1輪というユニークで先進的なスタイルを持つヤマハのLMWシリーズは、さまざまな路面状況でも安定感と爽快感を両立し、多くのライダーの支持を得ている。そんなLMWシリーズに新たなラインナップとして、トリシティ300が加わった。従来のトリシティ125/155に比べて大きめのボディだが、足つき性を高める頼もしいオプション“ローダウンシート”が発売。今回は小柄なライダー代表として、様々なバイクメディアで活躍する美環さんが実際に体験試乗。ローダウンシートの効果を実証してもらった。

Y'S GEAR
ローダウンシート トリシティ300/XMAX
34,100円(税込)
スタンダード車両に比べ、乗車時の足つきが約40mmよくなる。座面形状をやや前下がりにすることで、前寄りに座った際には足つき性を向上させ、後ろ寄りに座った時はスタンダードと同等の乗り心地を確保している。

2020年9月末、ヤマハのLMW(リーニング・マルチ・ホイール:リーン"傾く"する3輪以上の乗り物)シリーズに新たなラインナップ、トリシティ300が加わった。従来のトリシティ125/150よりも排気量がアップし、高速道路での走行も余裕でこなすパワフルな存在だ。また、停車時に自立をサポートする「スタンディングアシスト」機能を採用したことも話題となっている。

安定性も飛躍的に高まったが、その分車体のボリュームも増し、シート高はトリシティ155に比べて30mmアップの795mmとなっている。「乗ってみたいけど、小柄だから足つき性がちょっと心配……」、そんなライダーに朗報! ワイズギアからローダウンシートが発売されているのだ。スタンダード車両よりも足つきが約40mmよくなるというから、トリシティ155よりも低くなる計算だ。果たしてその効果のほどはどんなものだろうか?

シートはボルト4本で固定されているだけなので、交換はレンチ1本でとても簡単にできる。例えば身長の異なる2名のライダーでマシンをシェアする場合でも、すぐに換装できるので安心だ(シート背部のエンブレムの付け替えには穴あけ加工が必要となる)。

身長150cm!
女性ライダー代表、美環さんがインプレ

小柄な女性ライダーの代表として、身長150cmのモデル、美環さんが試乗。ちなみに厚底5cm程度のブーツを着用しているため155cm程度とイメージしてもらえば良いだろう。

まずはノーマルシートで跨ってもらう(写真左)。足はしっかりついているが、よく見るとかなりシートの前のほうに座っているのがわかる。これでは長時間のライディングでとても疲れてしまうだろう。フォームからも肩に力が入っているのがわかる。ローダウンシートの場合(写真右)は、シートに深めに腰かけてもしっかりと足が地面についている。上半身もリラックスして自然なフォームに。さらに美環さんによると、小柄なライダーは足つき性を確保するために、停車時にシートの前端部までお尻をずらす、というワザを使っているのだとか。ローダウンシートならそんな動作もスムーズに行うことができる!

「このローダウンシート、小柄なライダーにとってはまさにマストアイテムです。ノーマルシートだと先端が少し上がった形状になっていますが、ローダウンシートは先端が下がった形状になっていて、この形状の違いこそが低身長ライダーにとっては重要なのです! スクーターに乗るときに低身長のライダーがやることといえば、停車するギリギリになったら車体とシートの間の安全地帯(私が勝手に呼んでるだけですが)にお尻を滑りこませて足をつきやすくすること! この動作をする時にシートの先端が下がっている事によって、お尻ずらしがとっても楽になるんです。この形状のおかげでかなり足つきの不安が解消されました」

ノーマルシート(写真左)とローダウンシート(写真右)でこんなに形状が違う。小柄なライダーが座るシート先端部分が見事に低くなっているのがわかる。

「大きくてヤバい……乗れるかな? これがトリシティ300の第一印象でした。この車体の大きさで300㏄なのか! と思うほどの大きさで、この衝撃をガンダムで例えますと、ドムだと思って戦いに行ったらビグ・ザムが来ちゃったんだけど!! くらいの衝撃でした。トリシティ300にはスタンディングアシスト機能が付いていますが、ちょっとした停車時にはバランスを取ったり、車体を支えなければいけません。そうです、今回は厚底ブーツでちょっとマシなんですが、身長150cmの私には、ノーマルシートだとシートが高くて支えるのに必死なのでした。ただこのノーマルシート、最高級ソファーを思わせる座り心地なのですよっ♪ この上質シートに座りながら映画鑑賞もしくはご飯でも食べたいくらいです。

そしてその快適性が、ローダウンシートでも実現されているんです。シートの厚みを犠牲にせずにローダウンしているので、シートの真ん中から後ろはノーマルシートに劣らずフカフカで、最高の乗り心地。ぜひたくさんの低身長ライダーさんに体感して欲しいです!」

実は美環さん、125/155を含め、トリシティに乗るのは初めてだとか。今回トリシティ300に乗ってみての感想を聞いてみた。

「最初に見た時は大きさに圧倒されて不安でしたが、いざ走り出してみると「安定感が半端ないっ!」ととっても感動しました。フロントが2輪なのにもかかわらず、いつも乗ってるバイクと同じように自然なコーナリングが出来たのにも驚きです。スタンディングアシストを使わないちょっとした停車時や、足をつきながらゆっくりUターンする場合など、ローダウンシートがとても安心感を高めてくれました。低身長でトリシティ300に乗れるのかお悩みの方、すでにトリシティ300をお持ちでシートの高さにすこしでも不安を抱えている方! ぜひ、ローダウンシートを検討してみて下さいねっ」

身長170cm
一般男性ライダーもインプレ

テスターは身長170cmだが足は短めだ。

トリシティ300のシート高は795mmで、ヤマハの250ccスクーター、XMAXとスペック上は同じだ。しかしトリシティ300のほうがシートの幅が広く、その分足つき性は良くない印象を持った。重さに関してもXMAXに比べて60kg近くの重量増となっているため、車体を支えるのはかなり緊張する。トリシティ300にはスタンディングアシスト機能が装備されているので、実際の信号待ちなどではそれほど心配する必要はないのだが、ふだん乗り慣れている2輪と違い、ちょっとした瞬間にフロント部分の重さを感じることがあるので、ローダウンシートという選択肢があることは非常にありがたいと思う。

ノーマルシート(写真左)でも片足ならば母指球までしっかりと地面につくのでそれほど不安感はない。ただ、無意識のうちに左側(足をついた側)にお尻をずらして、少しでも足つきを良くしようとする傾向があった。ローダウンシート(写真右)の場合は片足だと完全にべったりと地面に足がつくので、肉体的にも精神的にもかなり楽になった。足つきが40mmよくなるという効果は絶大なのだ。

両足の場合、ノーマルシート(写真左)でもしっかり足をついているように見えるが、実際は多少シーソーのようにバランスを取っている。それがローダウンシート(写真右)になると、両足ともに母指球まで地面につくため、自らの力で完全にマシンを止めることができるようになる。これは、例えば跨ったまま足で地面を蹴りつつバックする、なんて場合にはとても重要なのだ。

最初にトリシティ125が登場した時には、意外なほど取り回しがいいのと雨天時の安定性の高さで、都市部における移動手段に革新をもたらしたと感じた。その後トリシティ155が登場すると、高速に乗れることからさらに行動範囲が広がったと実感。今回のトリシティ300は、パワフルさと安定感が段違いに向上し、同じトリシティシリーズではあるが別次元の乗り物へと進化したと感じた。

「高速にも乗れる」ぐらいの感じだったトリシティ155に対し、「高速道路も積極的に活用したい」ほど余裕を感じられるのがトリシティ300だ。もはや都市の中を移動する便利なコミューターという枠を超え、都市間移動や高速を使っての通勤、休日のツーリングにいたるまで、どんなシチュエーションでも安心感と利便性、快適性を提供してくれるモビリティへと変身した。

スタンディングアシスト機能を手に入れたことで停車時の安心感はさらに増したが、ローダウンシートを装着することで、「短い信号待ちでちょっと停めるだけ」とか「駐輪場から足をついたままバックで出る」など、その安心感は「いつでも、どこでも、どんな状況でも」さらに強固なものとなる。小柄な人や体力に自信のない人にとっても、ローダウンシートを装着するだけで、トリシティ300の存在はグッと身近に、そしてより気軽に扱える存在になるはずだ。

他にも充実したラインナップ!
トリシティ300の純正カスタムパーツたち

Y'S GEAR
ナックルバイザーキット
13,200円(税込)
走行中手元にあたる風や雨を軽減し、ライディングの快適性を向上してくれる。

Y'S GEAR
スポーツスクリーンキット
16,500円(税込)
ダークスモーク&ショートサイズのスクリーン。フロントマスクをいっそう精悍&スポーティに引き締めてくれる。

Y'S GEAR
ハイスクリーン
28,600円(税込)
標準装備のスクリーンよりも高さが約125mmアップ。上半身に対するウィンドプロテクションエリアが拡大し、ライディングをより快適に。

Y'S GEAR
バックレストベースキット
17,600円(税込)
装着することでタンデム時にパッセンジャーの快適性を高めるバックレストのキット。バックレストパッドは別売り(6,600円)。

Y'S GEAR
マルチバーUSB電源
6,600円(税込)
ミラー取付部にスマホホルダーやナビ等が装着できるマルチバーステー。側面にはUSB電源ポートを1口設置。

INFORMATION

ヤマハ発動機グループの純正アクセサリー専門会社。バイク用品、バイクカスタムパーツをはじめ、ボート・マリン用品、電動アシスト自転車用品など、ヤマハ製品に関するアイテムを豊富にラインナップしている。ZENITHは、同社のオリジナルヘルメットブランド。ヤマハ製バイクはもちろん、幅広いモデルで使用可能な高い性能と優れた品質で人気を集めている。