250ccパラレルツインの兄弟車
YZF-R25とMT-25を徹底比較!!

掲載日/2020年8月7日
取材協力/ヤマハ発動機販売
写真/伊勢悟
取材・文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
2019/2020年型で第二世代に進化した、YZF-R25とMT-25。パッと見の印象では、YZF-R25はスポーツ性重視、MT-25はストリート指向という姿勢で、性能に磨きをかけて来たと思えるものの、しっかりと乗り比べてみると実際の2台のキャラクターは、そんなに簡単に割り切れるものではなかったのだ。

各車各様の個性を追求した第二世代で
ハンドルグリップの高さは100mm以上の大差に

全長×全幅×全高は、YZF-R25:2090×730×1140mm、MT-25:2090×755×1070mmで、軸間距離は両車共通の1380mm。装備重量はMT-25のほうが格段に軽いはずと思いきや、意外なことに、YZF-R25:170kg、MT-25:169kg。

改めて考えると、YZF-R25とMT-25の違いを語るのは、なかなか難しそうである。もちろん、フルカウルでセパハンのYZF-R25はスポーツライディング&高速向き、ネイキッドでアップハンドルのMT-25はストリート向き、と言うのは簡単だ。でも実際に2台を同条件で走らせてみると、それだけでは言葉足らずな気がしてしまう。

キャスター角:25度、トレール:95mm、シート高:780mm、ガソリンタンク容量:14L、最高出力:35ps/12000rpm、最大トルク:2.3kgf・m/10000rpmというスペックは、両車に共通。

本題に入る前に、スチール製ダイヤモンドフレーム+スイングアーム、前後17インチホイール、並列2気筒エンジンなど、基本設計の多くを共有する、2台の生い立ちをざっくり説明しておこう。ヤマハにとって約20年ぶりの新設計250ccロードスポーツ、YZF-R25の国内販売が始まったのは2014年12月。そのネイキッド仕様としてMT-25が登場したのは、2015年10月である。そして2019年になると、YZF-R25は外装や足まわりなどを刷新した第二世代に進化し、MT-25も2020年型で、兄弟車を追いかける形でモデルチェンジを受けることとなった。

足つき性は2台とも至って良好で、身長が150cm以上のライダーなら両足が接地するはず(テスターの身長は182cm)。上半身はグリップ位置が高いMT-25のほうが起きているものの、だからと言ってYZF-R25の前傾がキツいわけではない。

独創的なフロントマスク、各車各様の手法でフィット感を高めたガソリンタンクカバー、両車に共通するカートリッジ式φ37mm倒立フォークなど(初代はφ41mm正立式)、第二世代のYZF-R25とMT-25にはいろいろな見どころがあるけれど、2台の違いを語るうえで最も重要な要素はハンドルだろう。

初代の時点で、セパレートハンドルのYZF-R25とバーハンドルのMT-25のグリップの高さには、39mmの差があったのだが、第二世代のYZF-R25が初代-22mm、第二世代のMT-25が初代+44mmという数値を採用したことで、2台の差異は100mm以上にまで広がった。この数値からは、今まで以上に2台の差異を明確化しようという、ヤマハの意図が伺えるものの、実際のYZF-R25とMT-25のキャラクターは、ハンドルだけで語れるものではなかったのだ。

戦闘的な伏せ姿勢がキマるのは、YZF-R25ならでは。逆に言うならYZF-R25のほうが、乗車姿勢の自由度は高いのかも?

さまざまな状況をじっくり走っての結果は
順当に考えると、一勝一敗一分け?

ここからはインプレ編。最初に市街地での印象を記すと、当然ながら、グリップ位置が高いMT-25のほうが、何かとイージーである。まず跨って走り出すのが気楽だし、上半身が直立しているから視界が広いし、ワイドにしてアップタイプのバーハンドルがライダーの入力にキビキビした反応を見せてくれるから、混雑した市街地を水スマシのように走って行ける。

とはいえ、YZF-R25が市街地を苦手にしているかと言うと、べつにそんなことはないのだ。ハンドルグリップ位置が低くても、YZF-R25のシート高は現代の250ccスポーツモデルの中で最も低い780mmで、ガソリンタンク前後長は決して長くはない。だから、上半身の前傾度は穏やかだし、場面によっては25mmの幅の狭さが(全幅は、YZF-R25:730mm、MT-25:755mm)、有効な武器になることがある。いずれにしても市街地での2台の差は、同じような素性のYZF-R1とMT-10のように、劇的ではないのである。

続いては高速道路の話で、この場面では、やっぱりフルカウルを装備するYZF-R25のほうが優勢だ。もっともYZF-R25のフルカウルは、ツアラーモデルのように、走行風を完全にシャットアウトしてくれるわけではないのだが、第二世代は先代より空力特性が向上していることもあって、高速巡航はなかなか快適。ただしMT-25も、新設計のコンパクトなビキニカウルとガソリンタンク左右のシュラウドが、適度に走行風を散らしてくれるようで、法定速度内での巡航ならまったく不満はナシ。おそらく、高速道路でカウルの有無による疲労度に違いが出て来るのは、走行距離が100kmを超えてからだろう。

ではワインディングロードでの印象はと言うと、率直に言うと甲乙が付け難かった。と言っても、見通しと路面状況がいい快走路なら、戦闘的なライディングスタイルが取りやすく、ライダー込みの前輪分布荷重が高く、低いセパレートハンドルがフロントまわりの情報を瑞々しく伝えてくれる、YZF-R25のほうが楽しいのである。いや、楽しいだけではなく、速くも走れるだろう。

でも見通しが悪くて荒れた路面の県道や農道、舗装林道なら、アップライトな乗車姿勢のおかげで、凹凸や砂や枝や水たまりといった危険を早めに察知でき、スーパーモタード的な乗り方も受け付ける、MT-25のほうが快適なのだ。つまり、どんな場面をメインと考えるかで、2台に対する評価は変わってくるのである。もちろんサーキット走行を視野に入れるなら、YZF-R25を選ぶべきだろう。

そんなわけで、2台を乗り換えながら市街地/高速道路/ワインディングロードを走った僕は、一勝一敗一分けという結論に至ったものの、YZF-R25が市街地で負けとは言い切れないし、MT-25で行った高速巡航の印象は決して悪くなかった。また、エントリーユーザーにはMT-25のほうが親しみやすそうだけれど、YZF-R25のハードルが高いわけではない。となると、この2台はルックスで選んでいいんじゃないだろうか。もっとも、現車を見れば気持ちが変わる可能性はあるし、試乗でどんなことを感じるかは各人各様なので、YZF-R25とMT-25のどちらを購入するかで悩んでいる人には、まずは近所のヤマハ販売店、YSPに出かけてみることをオススメしたい。

ディティール比較

他のYZFシリーズやYZR-M1に通じるデザインのYZF-R25に対して、MT-25のフロントマスクは他のMTシリーズとはまったく異なる造形。アイブロウタイプのポジションランプ+超小型LEDヘッドライトで、独創的な雰囲気を構築。

第二世代のYZF-R25は、セパレートハンドルのクランプ位置をトップブリッジ上→下に移動。一方で第二世代のMT-25は、バーハンドルが先代よりアップタイプになった。結果的に2台のグリップ位置の差異は、先代の倍以上に広がっている。

タンクカバーは各車各様。フィット感やグラマラスな造形を追求した結果、先代と比較すると、YZF-R25は31.4mm、MT-25は51mm幅広化。なお第二世代のYZF-R25は伏せ姿勢を意識して、タンクキャップ位置を先代より20mm低くしている。

セパレート式シートのデザインは両車に共通。あまり大きくはないけれど、タンデムシート下には収納スペースが存在する。

ライディングポジションは異なるが、シート高は共通のためステップ周りやブレーキペダル、シフトペダルなどは両車共に共通となっている。

タイヤは今回借りた試乗車にはYZF-R25のみIRC製のRX-02が装着されていたが、標準装着はYZF-R25、MT-25共にIRC製のRX-01。なお、同車体で320ccエンジンを搭載するYZF-R3とMT-03では、DUNLOP製のラジアルタイヤ SPORTMAX GPR-300が装着される。

INFORMATION

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