あなたはどっち派? ロードスポーツ2 vs ロードスマートⅢ比較インプレッション

掲載日/2019年10月24日
取材協力/住友ゴム工業株式会社
写真/伊勢悟、伊井覚 取材、文/中村友彦
構成/バイクブロス・マガジンズ
現代のオンロード用ラジアルタイヤは、①サーキットを視野に入れたハイグリップタイヤ、②ワインディングロードでの楽しさを重視したスポーツタイヤ、③扱いやすさやライフの長さを追求したツーリングタイヤ、という3種に大別できる。ただしこういった分類の仕方は、もしかするとユーザーにとっては、タイヤ交換時の選択の幅、自由度を狭める一因になっているのかもしれない。何と言っても世の中には、ハイグリップタイヤに近いスポーツタイヤや、ツーリングタイヤを思わせるスポーツタイヤ、スポーツタイヤ寄りのツーリングタイヤなど、安易な分類ができないタイヤが数多く存在するのだから。

その好例と言うべきタイヤが、ダンロップが’18年から発売を開始したSPORTMAX Roadsport 2(以下、ロードスポーツ2)だ。この製品は基本的に②に該当するものの、実際に乗ってみると、①のSPORTMAX α-14と③のSPORTMAX ROADSMART Ⅲ(以下、ロードスマートⅢ)に通じる資質が感じられる。もっとも僕自身は、これまでに同一条件で現行ダンロップ製タイヤの比較テストを行ったことはなかったので、今回は3つの製品をイッキに……はさすがに難しいため、2台のCB1000Rにロードスポーツ2とロードスマートⅢを装着して、さまざまな状況を走り、各製品の差異を探ってみることにした。

本題に入る前に各製品の概要を記しておくと、まず登場年は、ロードスポーツ2が前述したように’18年で、ロードスマートⅢは’15年。実はタイヤにとって3年の差異はかなり大きく、設計年度が古いロードスマートⅢは、比較という面ではちょっと不利かもしれない。ちなみに、各製品の発表会で開発陣が強調した主なセールスポイントは以下の通り。

ロードスポーツ2:α-14の技術を転用して運動性能を高めつつ、摩耗時の性能劣化を最小限に抑えた。

ロードスマートⅢ:長距離走行時の疲労軽減とライフの向上を実現。

運動性能とライフの向上は各分野の定番的なテーマ、性能劣化の抑制は最近になって世界中のタイヤメーカーが注力している課題だが、長距離走行時の疲労軽減というコンセプトは、ダンロップ独自のものである。いずれにしても現代のタイヤには、定番的なテーマだけではなく、さまざまな資質が盛り込まれているのだ。

さて、ここからはいよいよインプレだが、先に結論を言ってしまうと、ロードスポーツ2とロードスマートⅢは、どちらもスポーツライディングとツーリングが楽しめるタイヤだった。ただし、僕が大きなインパクトを感じたのはロードスポーツ2のほうだ。

摩耗してもグリップ力の低下が少なく、ウェットグリップも満足できる
スポーツタイヤの革命児、ロードスポーツ2

一昔前のスポーツタイヤと言ったら、ハイグリップ系ほどではなくても、冷間時には本来の性能が発揮できず、乗り心地はいまひとつだったはずなのに、ロードスポーツ2は走り出した直後から十分な接地感が伝わって来るうえに、アグレッシブなトレッドパターンからは想像できないほど、ウェット路面では絶大な安心感が得られるし、路面の凹凸の吸収性はエッ?と思うほど良好。だからどんな状況でも、スポーツライディングが堪能できる。

その印象の背景には、コンパウンドを2層構造としたうえで、深層部に発熱素材を導入したPCL構造や、スチールベルトの編み方を緩くすることで、接地面積拡大や剛性分布の最適化を図ったUFS-JLB/V.B.T.Tなどがあって、現代の新技術を取り入れたロードスポーツ2は、守備範囲が相当に広いのだ。しかもそういった性能が、摩耗が進んでも維持されるというのだから、このタイヤはスポーツタイヤという分野の革命児、と言っていいのかもしれない。

疲労軽減でプレミアムツーリングを提案
ライダーにやさしいロードスマートⅢ

そんなロードスポーツ2の特性を把握した後で、ロードスマートⅢ装着車に乗り換えた僕は、そこはかとない物足りなさを感じることとなった。と言っても、冷間時のフィーリングや乗り心地の印象は、ロードスポーツ2と同等以上なのだから、意外性はなくても、ロードスマートⅢはツーリングタイヤとしての要件をきっちり満たしているのである。

じゃあどんな部分に物足りなさを感じたかと言うと、旋回性だ。グイグイ&スパスパという擬音が使いたくなるロードスポーツ2に対して、ロードスマートⅢのコーナリングは、よく言えば穏やかで安定志向、悪く言えばややモッサリという印象。もちろんツーリングタイヤであることを考えれば、それはまったく悪いことではないのだが……。

なるほど。これがロードスマートⅢの狙いなのか。僕がそう感じたのは試乗の後半だった。心身がある程度疲れて来ると、グイグイ&スパスパ曲がらないこと、コーナリングの初期でフロントまわりに発生する自然舵角が、あえて控え目に設定されていることが、何ともありがたく思えてくるのだ。

さらに言うなら、ツーリング系ならではの絶大な安定性を備えるこのタイヤは、路面の凹凸にほとんど進路を乱されないし、乗り手のちょっとした操作や体重移動に敏感に反応しないから、事情をよく知らない道を一定の速度で淡々と走り続けるのが実にイージー。この特性なら確かに、長距離走行時の疲労は少なくて済むだろう。

そんなわけで、どちらのタイヤにも明確な存在意義を感じた僕だが、読者の皆様にどちらをオススメしたいかと言ったら、やっぱりインパクトが大きかったロードスポーツ2である。もちろん、ライフの長さが何よりも大事と言うライダーなら、ロードスマートⅢのほうがいいのだけれど、普段のツーリングが日帰りメインで、年間走行距離が5000~8000kmくらいであれば、扱いやすさやライフという面でも、ロードスポーツ2に不満を感じることはないだろう。と言うより、妥協やガマンを強いられることなく、現代のスポーツタイヤならではの高揚感と爽快感を味わわせてくれるロードスポーツ2の乗り味を、僕としては多くのライダーに味わって欲しいのである。

DUNLOPの営業担当者に直撃!
ロードスポーツ2とロードスマートⅢ、どっちを選べばいいの?

株式会社ダンロップモーターサイクルコーポレーション
宮田晃輔さん

「初代ロードスポーツではタイヤのセンターとサイドでコンパウンドを変えていたのですが、このロードスポーツ2は表層と深層の上下でコンパウンドが別れており、深層にはトレッド表面のゴムよりも高発熱なゴムを採用している為、タイヤを内側から温めることができます。このため摩耗末期になっても性能の低下を少なくすることに成功しました。尚且つ単純なライフ性能もコンパウンド技術の進化によって初代より向上しています。

センターとサイドでコンパウンドが分かれていると、その境目でグリップ力が変化し、それを嫌うライダーさんがいます。ロードスポーツ2は表面はワンコンパウンドで統一されていますので、私は"究極のナチュラルタイヤ"だと考えています。癖のないタイヤなので、ツーリングだけでなく、サーキット入門者にも楽しんでいただけると思います。

また、タイヤの溝の形状からロードスマートⅢよりも雨に弱いと思われがちなのですが、実際は小雨であればロードスポーツ2の方が有利に働くことがあります。それはコンパウンドと構造の違いによるものです。

タイヤを選ぶ際にグリップ性能、ウェット性能、ライフなど色々な要素を考えると思いますが、ロードスポーツ2はまさにハイグリップとツーリングの中間に位置するタイヤであり、タイヤ選択に迷ったら一度は試して頂きたい商品になります。私がイベントなどでお客様と会話する際、現在の使用状況をお聞きするとロードスポーツ2に当てはまる人が多い印象を受けます」

株式会社ダンロップモーターサイクルコーポレーション
廣岡鷹人さん

「ロードスマートⅢはロングライフを実現しただけでなく、ギャップの吸収性能が高く、ハンドリングが素直で疲れにくい特性を持っているため、ロングツーリングに向いています。ライフの向上は主にコンパウンド技術の進化によるもので、従来比でフロント120%、リア144%向上しています。(実証テストの内容はDUNLOPのHPにてご覧ください)。

また、乗り心地の良さとリニアなハンドリングがもたらす操作性は、快適でストレスのないツーリングが可能です。もちろんグリップ性能・低温時のグリップ・ウェット性能など、ツーリングに必要とされる当たり前の性能も満たしています。一度に移動する距離が長い方や、年間走行距離が10,000km以上など、ハードに乗られる方には特におすすめな商品です」

  

このように、自分のライディングスタイルによって選ぶべきタイヤは変わってくる。ツーリングメインだけどスポーツライディングを意識して乗っていて、サーキット走行会などにも興味のあるライダーならロードスポーツ2を、走りよりも旅を目的にバイクを使っていて1000kmを超えるようなロングツーリングを頻繁に行い、ライディングに軽快さよりも快適さを重視するのであればロードスマートⅢを選ぶのが正解なのではないだろうか。あとはぜひ自分のマシンに装着し、自らの手足で判断してみてもらいたい。

INFORMATION

住所/東京都江東区豊洲3-3-3豊洲センタービル
電話/03-5546-0114
営業時間/10:00~18:00

1889年、イギリスにて設立されたダンロップ社。今や、誰もが知る“ダンロップ”というこのブランドは、創立者の息子が「自転車をもっと楽に走れるようになるにはどうしたらいいのか?」という素朴な質問を父に投げ掛けたことから、その歴史をスタートしています。四輪は勿論、現在では国内外でのモータースポーツシーンでも活躍し、SUPER GT(元 全日本GT選手権)を中心にタイヤを提供。以前は全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権(JSPC)、全日本F3000選手権等にもタイヤ供給を行っていました。二輪車用としてはSPORTS MAX・GP・ARROWMAX・KABUKI・BURORO・ENDURO・POLSO!をラインナップ。また純正として同社のタイヤを採用するメーカーも多数存在し、いつの時代も、その時々の環境に対応し、性能にも一切妥協をしないその作り込みは一流ブランドならではのものです。