ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台

掲載日:2020年05月14日 プロが造るカスタム    

取材協力/カスタムガレージフリーダム
取材・写真・文/ガスグラフィックス

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台の画像
スズキ ジェンマ(カスタムガレージフリーダム)

新車発売直後に着手したハードカスタムにより
素材としてのジェンマの可能性を導き出した

コロナの影響で不要不急の外出自粛要請が発令されたことで、この企画の取材ができない状態にある。そこでいろいろと思案した結果、この企画では掲載されていない、2011年以前の懐かしの車両を紹介することとなった。記念すべき回顧録の第1号車は、こちらのスズキ・ジェンマにした。古くからのビッグスクーター好きにとってはお分かりだろうが、この企画の取材執筆を担当している私自身が「トランスクーター」「スクータートライブ」編集長時代に愛用していた個人車両である。過去車両は、製作ショップがすでに廃業していたりオーナーが変わっているなど、掲載にあたっていろいろと留意する必要がある。そのため掲載車両の選定に悩まされるのだが、この車両に関しては、ここで掲載する写真の当時は間違いなく自分自身の愛車であったことから、このコロナ対策企画として最初に選定したことを予めご了承いただきたい。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

ジェンマが発売されたのは2008年7月。ヤマハ・マジェスティシリーズ、ホンダ・フォルツァシリーズ、スズキ・スカイウェイブシリーズが築いてきた既存のビッグスクーターを大きく覆す近未来的デザイン。タンデム乗車を大前提としたフルフラットシートの採用など、発表当時から好みがはっきりと分かれるエポックメイキングな車両だったことは間違いない。この車両を発売直後に新車で購入。そのままカスタムガレージフリーダムへ入庫し、当時の「トランスクーター」No.69(2009年1月1日発売号)の表紙へと採用した。CJ43スカイウェイブのエンジン使用によるリア4輪化は、この12年前の時点ですでにハードカスタムの主流へとなっていた。そこで、久しぶりに登場したビッグスクーターの新車=ジェンマの素材としての可能性を追求するために、新車状態から一気にここまで作り上げたのである。

基本コンセプトや完成後のイメージは、カスタムガレージフリーダムの山中さんに一任。自分からは「ハードカスタムでも日常使いできる安全と利便性は残す。そして、見た目がハデにならないように」というオーダーで製作が進んだ。走行50kmほどのエンジンや前後足回りは全て放棄しつつ、ジェンマの素材の良さを活かす。その結果、ロー&ロングがすでに主流となっていたが、そこに反旗を翻すように「低いけどバランス重視の長さ」でまとめあげた結果、このスタイルが完成した。

手放すまでの4年間で、日常での足はもちろん、最長では愛知県でのミーティングに自走参加するなど、かなりの距離を走り回った。これも全ては、高度なフレーム加工技術によるしっかりと安全に走る走行性能と、ノーマルのトランク&ラゲッジボックス類はそのまま活用し、シートもノーマル形状を尊重するなど、利便性も追求した賜物だった。その後、様々なジェンマのカスタムが登場したが、最初にこの方向性を示すことができたのは、12年が経過した今でも誇りに思う。

詳細写真

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

CJ43スカイウェイブエンジンに積み換えて、リアを4輪化。ジェンマのリアカウルのデザインは、このスタイルを最初から狙っていたかのような仕上がりのため、未加工でエアロなども装着していない。さらに、この後部下端に向かって流れる流麗なデザインにリアタイヤのラインが続くように、ホイールベースが設定されている。これが、バランス重視の造り込みなのだ。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

マフラーはホットラップ製GP-SHOTを採用。このリアサイドからほんのわずかにマフラーエンドが見えるスタイルも、バランス感とハデにならないように注意して採用。なおこのマフラーは2本目で、製作当初はダイシンレーシング製の通称バナナ管を採用していた。これも、リアカウルの丸みに合わせていたのだが、排気音質や強度の問題などがあり仕様変更となった。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

フロントホイールもCJ43スカイウェイブ用の5本スポークを採用。左側には、当時の人気パーツであるフリーダム製スピナーを装着。ビッグディスクローターも装着しているため、フロントも迫力あるスタイルに。なお、リム部分は前後共にポリッシュしており、全体をブラックで統一した渋い外観の中で、ほんのわずかに輝くこの部分が重要なポイントだった。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

ハンドル周りにメーターが装着されたノーマルから、バーハンドル化に着手。メーター類はトランクボックスのふたに移設。ニッシン製ラジアルマスターを装着し、マスターシリンダーも小型化しているため、非常にシンプルなハンドル周りを実現。メーターも、車両のルックスを損なわないように、かつ必要な視認性は得られるように、右グリップ下部に小型円形ミラーを装着。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

前後サスペンションは、apr製DC-AIRを採用しエアサス化。一般的にはコンプレッサーはラゲッジボックスなどに収めることが多いが、実用性重視でラゲッジボックスはそのまま残すことになっていたため、このシート下部へと常設された。決して充分なスペースがあるわけではないので、ここにもフリーダムのセンスと技術力が表れている。なお、キャブはFCRを採用。

ジェンマカスタムの道標を築いた伝説の1台のカスタム画像

異型2眼ヘッドライトが採用されたノーマルは上部に盛り上がるデザインが特徴だったが、それではシャープさが演出できないため、ヘッドライトガラスの丸みをカットし、フリーダムによるフェイスを装着。それ以外の外装は一切加工しておらず、上下に伸びるウィンカーもスモーク化しただけで純正のままにしている。

カスタムポイント
  • ●フロントフェイス…KUSTOM GARAGE FREEDOM ●シート…ジェンマ純正加工 ●マフラー…HOTLAP GP-SHOT ●ハンドル…バーハンドル化 ●レバー…NISSIN ●ミラー…KUSTOM GARAGE FREEDOMワンオフ ●追加メーター…ACTIVEデジタルモニターラゲッジボックス移設 ●サスペンション…apr DC-AIR ●フロントタイヤ…PIRELLI GTS23120/70-13 ●リアタイヤ…ADVAN A048 ●ホイール…フロント:CJ43スカイウェイブ、リア:SSR スピードスターマークIII ●フロントマスターシリンダー…NISSIN ●フロントキャリパー…PERFORMANCE MACHINE ●リアマスターシリンダー…NISSIN ●吸気系…FCRキャブレター ●その他…エンジンCJ43スカイウェイブ、各種ブロンズメッキ加工、KUSTOM GARAGE FREEDOMスピナー

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